国立感染症研究所

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国立感染症研究所
掲載日:2021年3月9日

背景・目的

感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株の感染者が世界各地から報告され、いくつかの国ではこれらの変異株が感染者に占める割合が上昇傾向にある。国内においても、特に英国で最初に検出されたVOC-202012/01、南アフリカで最初に検出された501Y.V2、ブラジルからの帰国者において日本で最初に検出された501Y.V3の流行が懸念されており、これらを含む新規変異株の流行状況のモニタリングと特性の評価が求められる。本稿は、国内及び検疫で確認された新規変異株の状況を把握することを目的としている。

国立感染症研究所
2021年3月3日14:00時点

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要約

ウイルスのヒトへの感染性・伝播のしやすさや、すでに感染した者・ワクチン接種者が獲得した免疫の効果に影響を与える可能性のある遺伝子変異を有する複数の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株として、特にVOC-202012/01, 501Y.V2, 501Y.V3の流行が懸念されている。これら3つの変異株を本文書では"VOC"と総称する。いずれも感染性・伝播のしやすさに影響があるとされるN501Y変異を有するが、特にVOC-202012/01については、2次感染率の増加や、死亡リスクの増加の可能性が疫学データから示唆されている。501Y.V2と501Y.V3については、さらに抗原性に影響を与える可能性があるE484K変異も有する。特に501Y.V2については、過去の感染によって得られた免疫や承認されているワクチンによって得られた免疫を回避する可能性が指摘されており、暫定結果ではあるが数社のワクチンでは有効性の低下を認めている。さらには、VOC-202012/01にE484K変異が加わった株も報告されている。これらのVOCの感染者が世界各地から報告され、いくつかの国ではVOCがかなりの割合を占めつつある。

国内においても、VOCの感染者やクラスターの報告が増加しつつあり、VOC感染者の大半は渡航歴が無い。大都市圏を中心に緊急事態宣言が発出され新規感染者が減少傾向の中、VOCの感染者は増加傾向にあり、諸外国と同様に国内でもVOC-202012/01の占める割合が増加していく可能性がある。これらVOCはウイルスの感染・伝播性が増加している可能性があることから、主流株としてまん延した場合には、従来と同様の対策では、これまで以上の患者数や重症者数の増加につながり、医療・公衆衛生体制を急速に圧迫するおそれがある。国内でのまん延拡大防止のためには、入国者数の制限や検疫により、渡航者によるVOCの国内持ち込みを極力抑制する必要がある。加えて、国内対策を強化し、VOC感染者の早期検知と、特にVOCクラスターの迅速な封じ込め及び社会全体でのクラスター発生機会の抑制策を推奨する。ほか、まん延状況によっては外出自粛等のより強力な対策を行うことも選択肢となる。VOCの感染性が高まるメカニズムは明らかでない点が多いが、小児等を含めた感染・伝播性の実態に即して流行制御戦略を適合させていく必要がある。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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