国立感染症研究所

第15回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年11月24日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第15回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)。

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直近の感染状況等

・新規感染者数は、11月以降増加傾向が強まり、2週間で2倍を超える伸びとなり、過去最多の水準となっている。大きな拡大が見られない地域もあるが、特に、北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られ、全国的な感染増加につながっている。地域によってはすでに急速に感染拡大が見られており、このままの状況が続けば、医療提供体制と公衆衛生体制に重大な影響を生じるおそれがある。

  実効再生産数:全国的には1を超える水準が続いている。大阪、京都、兵庫では2を超 えており、北海道、東京、愛知などで概ね1を超える水準が続いている。

・感染拡大の原因となるクラスターについては、多様化や地域への広がりがみられる。また、潜在的なクラスターの存在が想定され、感染者の検知が難しい、見えにくいクラスターが感染拡大の一因となっていることが考えられる。

・こうした感染拡大の要因は、基本的な感染予防対策がしっかり行われていないことや、そうした中での人の移動の増加、気温の低下による影響に加えて、人口密度が考えられる。

・入院者数、重症者数は増加が続いている。予定された手術や救急の受入等の制限、病床を確保するための転院、診療科の全く異なる医師が新型コロナウイルスの診療をせざるを得なくなるような事例も見られている。病床や人員の増加も簡単には見込めない中で、各地で新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難になり始めている。このままの状況が続けば、通常の医療では助けられる命が助けられなくなる。 

【感染拡大地域の動向】

①北海道 札幌市近郊を含め、道内全体にも感染が拡大。福祉施設や医療機関で大規模 なクラスターが発生。また、患者の増加や院内感染の発生により、札幌市を中心に病床がひっ迫しており、旭川市でも院内感染が発生し、入院調整が困難をきたす例が発生するなど、厳しい状況となりつつある。

②首都圏 東京都内全域に感染が拡大。感染経路不明割合も半数以上となっている。首都 圏全体でも、埼玉、神奈川、千葉でも同様に感染が拡大しており、医療機関、福祉施設、接待を伴う飲食店等の様々な施設でクラスターが発生し、医療体制が厳しい状況。感染経路不明割合は4~5割程度と上昇傾向にある。また、茨城でも、接待を伴う飲食店等でクラスターが発生し、感染者数が増加。

③関西圏 大阪では大阪市を中心に感染が大きく拡大。医療機関や高齢者施設等でのクラ スターが発生。感染経路不明割合は約6割となり、重症者数が増加し、医療体制が厳しい状況。兵庫では、高齢者施設や大学等でクラスターが発生。医療体制が厳しい状況。京都でも感染が拡大。

④中部圏 愛知県内全域に感染が拡大。感染経路不明割合は約4割。名古屋市で、歓楽 街を中心に感染者が増加し、保健センターの負荷が大きくなっており、医療機関での対応も厳しさが増大。また、静岡でも、接待を伴う飲食店等でクラスターが発生し、感染が拡大。

今後の対応について

感染の「増加要因」と「減少要因」の拮抗が崩れており、新型コロナウイルス感染症対策を含めた公衆衛生体制や医療提供体制を維持するためにも、可及的速やかに減少方向に向かわせる必要がある。

11月20日の「分科会から政府への提言」において、これまでより強い対策として、①営業時間の短縮、②地域の移動に係る自粛要請、③GoToキャンペーン事業の運用見直しの検討、④これまでの取組の徹底、⑤経済・雇用への配慮、⑥人々の行動変容の浸透が提言された。11月21日の対策本部において、GoToトラベル事業の見直しやGoToイート事業の見直しの要請、営業短縮要請に伴う支援、重症者の発生を抑えるための医療施設や高齢者施設等における検査の推進等の方針が示されたが、政府や自治体において、速やかに実行することが求められる。

感染が大きく拡大している地域では、公衆衛生体制や医療提供体制が既に厳しい状況になりつつある。国は積極的に地域の状況を把握し、自治体との緊密な連携体制の下、地域の感染および医療提供体制の状況を迅速に判断し、状況の改善のために必要な対策を迅速に講じるべきである。特にこうした地域では、医療資源を重症化するリスクのある者等に重点化していくために、高齢者も含め、医師が入院の必要がないと判断した無症状病原体保有者や軽症者について、宿泊療養(適切な場合には自宅療養)とすることが必要である。また、自治体のニーズに応じて、迅速・機動的な保健師等専門人材の派遣や病床確保に向けた働きかけなど調整支援等を引き続き行う。

一方、現時点では大きな感染が見られない地域でも、急速な感染拡大に備えて医療提供体制の準備・確保等を直ちに進めて行く必要がある。

また、特に若年層や働き盛りの世代などに対し様々なチャネルを活用することで、飲食の場 面も含むマスクの徹底など実際の行動変容につなげることが必要。また、感染の可能性を自覚しながらも、何らかの理由で検査を受けず、その結果2次感染に至っているのではないかとの指摘もあり、症状の疑われる場合には、かかりつけ医などに相談し、必要な検査に繋がるよう改めて周知していくことが必要。

既に医療提供に困難が生じている地域では、接触機会の削減等感染者を減らすための強い対策を行うことが求められる状況である。今後の感染拡大を防ぐために、国も自治体も市民も事業者も一丸となって、感染を拡大しないための対策を進めていく必要がある。

 感染状況分析・評価グラフ等 

 

 

 

 

 

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