国立感染症研究所

第18回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年12月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第18回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)。

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直近の感染状況等

感染状況について

・全国の新規感染者数は、一度高止まりした後に、直近で増加に転じており、過去最多の水準が続いている。首都圏、関西圏、中部圏では、感染者数の明らかな減少は見られない。また、これまで大きな感染が見られなかった地域で新たに感染拡大や再拡大の動きが見られ、その他の地域も含め全国的に感染が拡大することが懸念される。

  実効再生産数:全国的には1をわずかに上回る水準となっている (11月29日時点)。東京等首都圏、愛知、京都、兵庫などで1週間平均で1を超える水準となっている(11月30日時点)。

・今般の感染拡大では新規感染者数の規模が大きく、高齢者の絶対数も多くなっている。これに伴い、入院者数、重症者数の増加が続いており、医療提供体制及び公衆衛生体制への負荷が増大するとともに、死亡者数が増加傾向となっている。60才以上の新規感染者割合の上昇も見られ、今後も重症者の増加はしばらく続くおそれがあり、死亡者数のさらなる増加も懸念される。対応を続けている保健所や医療機関の職員はすでに相当に疲弊しており、予定された手術や救急の受入等の制限や、病床を確保するための転院、認知症や透析の必要がある方など入院調整に困難をきたす事例など通常医療への影響も見られており、各地で迅速な発生時対応や新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が懸念される。

【感染拡大地域の動向】

①北海道 新規感染者数は減少傾向が見られるが、札幌市と旭川市を中心に感染者の発生が継続。多くは病院・施設内、学校関連の感染。札幌市は感染者の減少により保健所機能は逼迫を脱しつつある。旭川市では通常の医療に影響がでており、厳しい状況が継続。 

②首都圏 東京都内全域で多くの感染者の発生が継続しており、医療機関は非常に厳しい状況が継続。重症者の受入が困難になりつつある。また、病床確保のため、通常の医療を行う病床を転用する必要性が生じてきている。首都圏全体では、埼玉、神奈川、千葉でも感染拡大により医療提供体制が厳しい状況。また、東京、千葉、神奈川は新規感染者数がいったん減少したが、再度増加に転じている。埼玉は、新規感染者数の明らかな増加傾向が継続。

③関西圏 大阪では新規感染者数が高止まりから微減の状況だが、依然高い水準。大阪市外での新規発生が徐々に増加。重症者数の増加も継続し、医療提供体制の厳しさが増大。院内感染と市中での感染が継続。感染経路不明割合は約6割。兵庫でも感染が継続。医療提供体制が厳しい状況。京都などでも増加傾向が見られる。奈良でも感染が継続。

④中部圏 名古屋市とその周辺で感染が拡大。名古屋市では新規感染者数が高止まりし、減少傾向が見られない。福祉施設、職場などでの集団発生も生じている。医療の提供体制が厳しい状況。岐阜県でも感染が拡大。 

⑤沖縄県 新規感染者数は減少傾向であるが、感染が継続。日常的な会食や職場などへと感染の場が広がりつつある。医療提供体制が厳しくなりつつある。   

※この他、宮城、群馬、広島、高知、福岡、熊本、大分などこれまで大きな感染が見られなかった地域でも、新たな感染拡大や再拡大の動きが見られる。

今後の対応について

これまでの感染拡大は大都市圏中心であったが、地方でも感染の拡大が見られるようになっている。東京は過去1週間で全国の感染者の約20%、大阪は15%近くを占め、この2つで全国の感染者の1/3を占めている。さらに北海道・埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫で全国の約75%を占めている。人口規模の大きいところでまず感染が維持・拡大し、それに続き、地方でも感染の拡大が見られはじめている。大都市における感染を抑制しなければ、地方での感染を抑えることも困難になる。大都市における感染拡大・継続を直ちに抑制し、地方での感染拡大も阻止する必要がある。

直近の感染拡大では、特に地方において忘年会・パーティーなどの会食や接待を伴う飲食店に関連したクラスターが増加している。海外でも飲食をする場面が感染拡大の場としてすでに特定されている。また、12/3のアドバイザリーボードの資料2-3にもあるとおり、飲食店が感染リスクの高い場として報告されている論文もある(Chang S, et al. Nature 2020)。 札幌では歓楽街の営業時短を早期に行うことにより感染者が減少する可能性が示されている。一方で、東京などの大都市では飲食店に不特定多数が来店するため、リンクを追うことが難しく、感染源として特定されにくい特徴がある。従って、こうした場所が感染の継続に関与している可能性がある。

また、飲食などの社会活動が活発な20−50才台の世代の感染は、その他の世代と比べると多い。この世代では感染しても無症状あるいは軽症のことが多いため、本人が意識しないまま感染拡大につながり、それが、家庭内、医療機関や高齢者施設等での感染に繋がっており、重症者が増加している要因にもなっていると考えられる。

必要な対策

感染が拡大している地域においては、既に様々な対応が取られているが、感染状況が改善しない場合には、酒類を提供する飲食店などの時短要請範囲等も含めて取組の強化を検討する必要がある。

これまで大きな感染が見られなかった地域でも感染の発生が見られており、特に比較的医療提供体制が弱い地域ではその体制が急速に悪化し、急速な感染拡大が起こりうるため、宿泊療養施設を含め医療提供体制の準備・確保等を直ちに進めることが必要である。

年末年始に感染が増加することで、医療提供体制全体の危機を招く可能性もある。感染状況を踏まえた適切な対策の速やかな実施や対策の準備を進めて行くことが求められる。また、市民の皆様にも新年会や忘年会、帰省などで感染拡大を起こさず、静かな年末年始を過ごしていただくことが必要であり、適切なメッセージを発信していくことが求められる。

これまでの分科会から政府への提言も踏まえ、12月14日の政府対策本部で年明けまでを見据えた対策の強化策が示されたところであり、今後、これらの取組による効果を注視し、感染状況の評価・分析を進めて行く必要がある。その上で、効果が不十分であれば必要な対応を検討することが求められる。

 感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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