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掲載日:2021年2月9日

第22回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年2月1日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第22回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、1月11日には、直近一週間では10万人あたり約36人に達したが、1月中旬以降減少傾向となっており、直近の1週間では10万人あたり約19人となっている。(発症日ベースでは、1月上旬以降減少傾向)

実効再生産数:
全国的には1を上回る水準が続いている (12月27日時点)。東京等首都圏、大阪、福岡などで1週間平均で1を超える水準となっている(12月27日時点)。

入院者数は減少がみられるが、重症者数、死亡者数は引き続き過去最多の水準。新規感染者数の減少が入院者数、重症者数の減少につながるには一定の期間が見込まれ、対応を続けている保健所や医療機関の職員はすでに相当疲弊し、業務への影響が懸念される。多数の感染者数の発生が続く中、新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が続いており、救急対応への影響が見られる事例などが生じているほか、病床の逼迫により入院・療養等調整中となる事例も依然として多数見られている。また、高齢者施設でのクラスター発生事例も増加。

地域の動向

①首都圏
東京都では、新規感染者数は減少が続き、宣言期間中のピークの1/2を下回り、直近の一週間では10万人あたり約43人となっている。医療提供体制は非常に厳しい状況が継続し、救急対応にも影響が出ている。自治体での入院等の調整が厳しい状況も継続。神奈川、埼玉、千葉でも新規感染者数は減少傾向であり、人口10万人あたりそれぞれ約30人、約25人、約33人となっている。いずれも医療提供体制は厳しい状況。
栃木では、新規感染者数の減少が続き、直近の一週間では10万人あたり約11人まで減少。病床使用率は低下傾向であるが、医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要。
②関西圏
大阪では、新規感染者数の減少が続いており、直近の一週間では10万人あたりステージⅣの指標となっている25人に近づく約26人となっている。一方、医療提供体制や自治体での入院調整は厳しい状況が継続。また、高齢者施設等でのクラスターが継続的に発生。兵庫、京都でも新規感染者数は減少傾向であり、人口10万人あたりそれぞれ約20人、約27人となっているが、医療提供体制は厳しい状況。
③中京圏
愛知では、新規感染者数の減少が続いており、直近の一週間では、10万人あたり約16人となっている。岐阜でも新規感染者数の減少が継続し、直近の一週間では10万人あたり約14人まで減少。いずれも、医療提供体制は厳しい状況である。新規感染者数の減少に伴う医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要。
④九州
福岡では、新規感染者数の減少が続いており、直近の一週間では、10万人あたり約22人となっている。医療提供体制は厳しい状況である。新規感染者数の減少に伴う医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要。
⑤上記以外の地域
茨城では、新規感染者数の減少が続いているが、直近一週間で10万人あたり15人を超えている。また、沖縄では、減少の動きが見られるものの、宮古島での感染拡大もあり、10万人あたり35人を超える水準となっており、医療提供体制は、非常に厳しい状況。

変異株

英国、南アフリカ等で増加がみられる新規変異株は、国内では、海外渡航歴のある症例及びその接触者に加え、国内での2次感染によると考えられる、海外渡航歴のない者から変異株が発見される事例も生じている。従来株と比較して感染性が高い可能性があり、国内で持続的に感染した場合には、現状より急速に拡大するリスクがある。英国株については、変異による重篤度への影響も注視が必要。

感染状況の分析

年末年始の新規感染者急増のあと減少傾向となり、飲食店での感染は減少しているが、医療機関・福祉施設を中心とした感染・クラスターが全国的に発生している。発症日別の感染者数の年明けからの全国的な急増については、20−50才台が多かったが、その後減少した。しかし、80代、90代では減少がみられておらず、重症者や死亡者が増加する可能性があり、動向に注意が必要。また、年末年始の感染者数や陽性率の動きは、忘年会等での感染等の影響等や帰省による世代間の伝播、帰省や仕事始めの前に検査受診が増えたことも考えられるが、引き続き分析が必要。

年末年始にかけて、地理的にも、都市部から周辺地域へという形で感染が拡大したことも踏まえると、大都市における感染を抑制する対策を継続することが、地方での感染を抑えることにも有効である。

  

※直近1週間の新規感染者数は、東京都だけで全国の1/4弱を占め、1都3県で1/2強を占めている。また、緊急事態宣言下の11都府県で新規感染者数の8割弱を占めている。

必要な対策

1月7日には東京をはじめとする首都圏(1都3県)に、1月13日には関西圏、中京圏、福岡、栃木の2府5県に緊急事態宣言が発出された。飲食店等に着目した今般の取組への協力もあり、これらの地域では、新規感染者数は減少傾向となっている。特に、栃木県では、人口10万人あたり15人を下回っており、医療提供体制や公衆衛生体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要があるが、病床使用率も低下傾向となっている。重症者数、死亡者数を増加させないためにも、引き続き新規感染者数を減少させる取組が必要。また、感染拡大の核となる場や影響の変化にあわせた取組も検討すべき。

緊急事態措置については、減少傾向を確かなものとするため、対策の徹底が必要。また、今後措置の対象でなくなっても、直ちに急速な再増加につなげないことが重要であり、引き続き感染者数を減少させるための取組が必要。一方、入院者数、重症者数が引き続き発生する状況も想定される中で必要な医療提供体制の確保が必要。また、宿泊療養の効率的な活用や医師会等へのフォローアップの委託や効率的なモニタリングなど自宅療養の環境整備を進めることが必要。併せて、検査体制の更なる強化に取り組むべき。

福祉施設および医療機関における感染拡大を阻止する取り組みが必要である。施設等における感染予防、拡大防止、検査による感染の早期発見や発生時に備えた対応、発生時の対応の強化に取り組むとともに、現場で実際に対応につながる支援を図るべき。手引きや動画などによる自主点検や様々な政府の支援策を活用すること、専門家の派遣体制を構築することが求められる。

変異株国内流入の監視のため、リスク評価に基づく検疫体制の強化が必要である。また、国内での変異株検査体制も強化して、感染者が見つかった場合には積極的疫学調査の実施が求められる。併せて、引き続きゲノム分析の実施が必要。個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、3密の回避、マスクの着用、手洗いなどが推奨される。

感染状況分析・評価グラフ等

 

 

 

 

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