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掲載日:2021年4月9日

第29回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年4月7日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第29回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、3月上旬以降増加が続いており、直近の1週間では10万人あたり約14人となっている。関西圏での急増に伴い、3月下旬から増加率も高まっている。新規感染者数の増加に伴い、3月下旬以降重症者数も増加に転じており、重症者増加のスピードに注意が必要。

実効再生産数:
全国的には、2月下旬以降1を超えており、直近(3/21時点)で1.16となっている。3/22時点で宮城、1都3県、愛知・岐阜、大阪・兵庫・京都では1を上回る水準となっており、特に、大阪・兵庫・京都では、1.74となっている。

影響が懸念されるN501Yの変異のある変異株(VOC)の感染者の増加傾向が続き、クラスターの発生も継続。特に、大阪、兵庫で多くの感染が確認されており、機械的な試算ではあるものの、スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合が高い水準で推移しており、周辺自治体でも変異株(VOC)による感染者数が増加している。

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は3月中旬以降増加が続き、約20となっている。神奈川、埼玉は4月に入り増加の動きが見られ、千葉は、横ばい傾向。医療提供体制の負荷の軽減が見られてきたが、東京では、3月中旬以降入院者数が増加に転じ、病床使用率も上昇し、入院・療養等調整中も増加傾向にある。
②関西圏・中京圏・九州
関西では変異株の報告が増加。また、人流の増加に伴い、大阪、兵庫では3月中旬以降感染が急速に拡大、京都、奈良、和歌山でも3月下旬以降大きく増加。大阪では、大阪市内以外でも感染が拡大しており、新規感染者数も約47となっている。特に、大阪、兵庫では、新規感染者数の増加に伴い、病床使用率、重症病床使用率とも急速に上昇しており、医療提供体制が大変厳しい状況となっている。愛知でも3月下旬以降増加が継続している。福岡は横ばい傾向。
③上記以外の地域
宮城、山形では感染が急速に拡大していたが、3月末以降減少に転じ、新規感染者数は、それぞれ約36、約15となっている。いずれも50代未満が中心であるが、宮城では入院者数の増加が継続。沖縄でも3月下旬以降感染が急速に拡大。新規感染者数が約46となっている。感染者は20-50代が多いものの、入院者数も増加。その 他の地域の中でも、クラスターの発生等により感染者数が急速に増加する地域が生じている。四国でも愛媛に続き、徳島、香川でも増加傾向が見られる。

感染状況の分析

関西圏での感染拡大が強く懸念される状況が継続。大阪・兵庫だけでなく、周辺自治体でも感染者数が増加している。周辺でも変異株による感染者数の急速な増加に注意が必要。大阪では人流の減少傾向が見られているが、新規感染者数の減少に繋がるには一定の期間を要すると考えられ、今後も感染拡大が継続し、入院患者数も増加することも危惧される。医療提供体制の状況も注視しつつ、さらなる警戒が求められる。

首都圏では、1都3県全体では微増傾向だが、 東京では緊急事態宣言解除後夜間滞留人口が急増した。直近では減少に転じているものの、20代、30代の感染が拡大。今般の大阪、兵庫、宮城等の感染拡大の動きを見ると、緊急事態宣言措置等による時短要請等が解除されてから人流が拡大し、解除後3週間程度で感染拡大がみられており、東京をはじめ首都圏でも、今後、感染拡大の継続や急拡大が懸念される。スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合も上昇傾向にある。

宮城、山形では、県独自の対策の後、人流の低下が見られ、感染者数も減少に転じている。沖縄では、県独自の対策が始まり、感染者数の伸びには鈍化が見られるものの、引き続き増加傾向は継続、若年層を中心とした感染拡大が見られる。いずれも、引き続き今後の推移に留意が必要。

クラスターの発生場所は多様化しており、医療機関、福祉施設、学校、職場、飲食店、会食、スポーツ関連などがある。注意すべきクラスターとして、昼カラオケ、飲食店なども継続している。

一部地域では、変異株(VOC)の割合の高まりが懸念され、急速な感染拡大や既存株と比べ感染性の高さが懸念される。

必要な対策

感染の急拡大を受け、まん延防止等重点措置区域とされた、宮城、大阪、兵庫では、同措置の 適用に当たって講ずべきとされた、飲食店に対する20時までの時短要請等、飲食店への見回り・働きかけの徹底、重点検査、医療提供体制の確保、飲食店へのカラオケ設備の利用自粛要請といった取組を着実に行うことが必要。特に、大阪、兵庫では、多数の感染者数が発生している中で変異株(VOC)の報告も増加。既に、医療提供体制が厳しい状況であるが、今後も増加が予想される重症者の病床確保が最優先で求められる。大阪市内以外や近隣の京都、奈良、和歌山でも感染が急速に拡大しており、人の移動に伴う変異株の他地域への流出を出来るだけ防ぐためにも、不要不急の外出、移動を避けることも含め、速やかに適切な対策を行うことが求められる。さらに、感染拡大の要因の分析とそれを踏まえた対応が必要。

その他の感染が増加している地域でも、感染状況を踏まえ必要な感染抑制のための取組を速やかに実施していくことが必要。飲食店に対する適切な時短要請や飲食店への見回り・働きかけの実施、外出自粛要請、検査を遅滞なく実施できる体制の拡充、濃厚接触者および感染源の迅速な調査などの対策が求められる。その上で、更なる感染拡大に対応するための医療提供体制や公衆衛生体制の確保が必要であり、国からも必要な支援を行うことが必要。早急に対応すべきである。

特に、首都圏では、東京で増加が継続しており、夜間滞留人口の動向、変異株検出割合など も今後の動きが強く懸念される。緊急事態宣言解除後の大阪、兵庫と同様、感染の急速な拡大が生ずる可能性もあり、感染状況に応じた十分な対策を遅滞なく行うとともに、感染の再拡大を前提とした検査・相談体制、宿泊療養、自宅療養を含めた医療提供体制を速やかに整えることが必要。

これまで大きな感染拡大が無かった、大都市圏以外の地域でも、感染者数の急速な増加が見られている。このため、現時点では大きな感染拡大が生じていない地域でも、実際に感染拡大が生じた場合を想定して、相談・検査体制、病床・宿泊療養施設の確保、自宅療養含めた調整体制、全庁的な応援態勢の確保、都道府県と保健所設置市の連携体制等必要な準備が出来ているか、改めて確認し、新たな感染拡大へ備えておくことが必要。

年度替わりの人の移動などによる新たな感染拡大の動きがすでに見られている。さらなる拡大を防ぐために、3密など人が集まる機会を避け、新年度の様々な機会などに伴う宴会は避けていただくことが必要。また、昼カラオケや接客を伴う物販など高齢者が集まる場面、日中も含めた長時間の会食をはじめ、クラスターが発生しているような事例も含め、そのリスクの適切な周知と感染予防のための注意喚起が必要。また、有症状者への受診の呼びかけと迅速な検査対応が必要。

N501Yに変異のある変異株(VOC)については、感染者数が増加してくる中で、地域ごとの 感染状況やその感染性、病原性等の疫学情報についての評価・分析を踏まえた対応を速やかに実施していくことが必要。特に、変異株に関する個室の取扱いや退院基準の見直しを含む医療提供体制や公衆衛生体制での取組の在り方について早急に検討が必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

 

 

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