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掲載日:2021年4月21日

第31回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年4月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第31回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、3月上旬以降増加が続いており、直近の1週間では10万人あたり23人となっている。関西圏、首都圏、中京圏のほか多くの自治体で感染者の増加が見られており、増加率も高い水準が続いている。新規感染者数の増加に伴い、3月下旬以降重症者数も急速に増加している。

実効再生産数:
全国的には、2月下旬以降1を超えており、直近(4/3時点)で1.11となっている。4/4時点で宮城は1を下回っているが、1都3県、愛知、大阪・兵庫、沖縄では1を上回る水準となっている。

影響が懸念されるN501Yの変異のある変異株(VOC)の感染者の増加傾向が継続。スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合(機械的な試算)は、大阪、兵庫で約8割、東京でも約3割に上昇しており、急速に従来株からの置き換わりが進みつつある。また、現段階では、15歳未満で明らかな感染拡大の傾向は見られない。

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は3月中旬以降増加が続き、約30となっている。20-30代が大きく増加しており、先週今週比は1以上が1ヶ月以上続いている。変異株(VOC)割合も上昇。神奈川、埼玉は4月に入り増加が続き、千葉でも4月中旬以降増加に転じている。
②関西圏・中京圏・九州

関西では変異株への置き換わりが進んでいる。また、全世代で感染者が増加しているが、特に20-30代が増加している。大阪、兵庫では3月中旬以降感染が急速に拡大し、京都、奈良、和歌山でも3月下旬以降大きく増加、その後滋賀でも急速に増加。大阪では、増加率の低下は見られるが、先週今週比が1.31であり、新規感染者数も約88で、減少には至っていない。特に大阪、兵庫、奈良では、新規感染者数の増加に伴い、医療提供体制や公衆衛生体制が大変厳しい状況となっている。

愛知では、20-30代を中心として、60才代以下のほぼ全世代で新規感染者数の増加が継続し、約18となっており、増加率も高い水準が継続。岐阜、三重でも増加。

福岡では、4月中旬以降急速に増加し、約16となっており、佐賀、長崎でも増加が見られる。

③上記以外の地域

沖縄では3月下旬以降感染が急速に拡大。4月中旬以降横ばいとなっているが、約54と引き続き高水準。感染者は20-50代が多いものの、入院者数も増加。 宮城、山形では、3月末以降減少に転じ、宮城では全世代で減少している。

その他の地域でも、クラスターの発生等により感染者数が急速に増加する地域や継続的に増加が続いている地域がある。北海道、青森、福島、茨城、群馬、石川、福井、長野、岐阜、岡山、徳島、愛媛では増加から高止まりで新規感染者数が10を超えており、特に、徳島、愛媛では新規感染者数が31、18と高い水準となっている。

感染状況の分析

関西圏では変異株への置き換わりが進み、感染拡大が継続している。大阪・兵庫だけでなく、周辺自治体でも感染者数が増加が継続し、変異株による感染者数の急速な増加に注意が必要(大阪では、40代、50代の重症者の割合も上昇)。大阪では、感染経路不明の割合が6割を超えているが、家庭内、職場、部活やサークル活動などにおける感染が見られている。大阪では、まん延防止等重点措置の開始から2週間が経過し、繁華街の夜間滞留人口の減少傾向が見られ、増加率も低下しているものの、新規感染者数の増加が続いており、今後も、感染者数、入院患者数、重症者数の増加が予想される。救急搬送の困難事例も増えており、医療提供体制は既に非常に厳しい状況にあり、更なる対策の徹底と支援が求められる。

首都圏では、東京で緊急事態宣言解除後夜間滞留人口が急増した。その後減少に転じたものの、20-50代の感染拡大により、全体でも感染者数の増加が継続し、増加率も上昇。地域的には都心を中心に周辺にも広がりが見られる。飲食店での感染が継続し、施設、部活やサークル活動、職場などでの感染が見られている。スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合が上昇し 、約3割が変異株となった。繁華街の夜間滞留人口の減少は20-22時のみで限定的。まん延防止等重点措置の効果はまだ明らかではなく、引き続き、感染拡大の継続や急拡大が懸念される。また、宿泊療養、自宅療養、入院調整中の人数が増加し始めており、今後の医療提供体制への負荷の増大が懸念される。本日から、まん延防止等重点措置区域とされた首都圏3県では、はっきりとした人流の低下傾向がみられておらず、今後2週間程度の感染者数の増加が予測される。

愛知では、3月下旬以降20-30代を中心として感染者数の増加が続いており、 スクリーニング検査による変異株(VOC)割合も5割を越えている。名古屋市では10-60代で増加し、施設、部活やサークル活動、職場、外国人コミュニティなどでの感染が見られている。近隣の三重や岐阜でも感染者の増加が見られており、本日からのまん延防止等重点措置の効果が生じるには一定の期間を要すると考えられ、引き続き、感染拡大の継続や急拡大が懸念される。

福岡では、4月中旬以降20-30代を中心として感染者数が急速に増加、夜間滞留人口も増加しており、 近隣の佐賀や長崎でも感染者の増加が見られており、 感染拡大の継続や急拡大が懸念される。

宮城では20時以降の夜間人流の低下に伴い、新規感染者数が減少してきたが、20時までの人流は増加傾向にあり、今後の動向には注意が必要。

感染が拡大している自治体において、20-30代の増加が中心となっている地域が多い。すでに全世代で増加している地域もあり、今後、高齢者層への感染の波及が進むと、重症者数がさらに増加する可能性が高い。

必要な対策

まん延防止等重点措置区域とされた地域(宮城、東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、京都、兵庫、沖縄)では、同措置の適用に当たって講ずべきとされた取組を着実に行うこと。その上で、ゴールデンウィークの期間に感染を拡大させず、この機会を捉えて感染を抑える必要がある。特に感染が拡大している地域では、夜間の飲食の場に限らず、職場や部活・サークル活動などにおける対策、さらには、人流を低下させる具体的な対策に取り組むことが求められる。

特に、大阪、兵庫では、すでに変異株(VOC)への置き換わりが進み、全世代で多数の感染者が発生している。医療提供体制が非常に厳しい状況であるが、今後も増加が予想される重症者の病床や従事者の確保が最優先で求められる。国からの支援も機動的に行うことが必要。飲食の場での取組を徹底していくとともに、人の接触をさらに減らすために、対策を強化することが求められる。

東京では、20-50代の感染者増加が中心ではあるが、まん延防止等重点措置の効果はまだ明らかではなく、今後、関西圏のような感染の急速な拡大も発生の可能性があり、それに伴う医療の逼迫・通常の医療への大きな影響が生じることが危惧される。また、首都圏は人の移動を通じて他の地域への影響も大きいことから、人の接触と移動を減らすための対策の強化を検討すべきである。

その他の感染が増加している地域でも、感染状況を注視し、必要な感染抑制のための取組を速やかに実施していくことが必要。その上で、更なる感染拡大に対応するための医療提供体制や公衆衛生体制を確保し、さらに国からも必要な支援を行うことが求められる。

20-30代を中心とした感染拡大の傾向が全国的に見られている。飲食店に限らず、職場、部活やサークル活動など様々な場所での感染が報告されているが、この世代における感染拡大を抑制し、さらに高齢者層への感染の波及にも警戒が必要。昼カラオケ、飲食店での感染も継続。また、外国人コミュニティへの対応も求められる。有症状者への受診の呼びかけと迅速な検査対応が必要。また、改めてマスクの着用等基本的な感染予防の重要さを発信することが必要。

感染者の増加に伴い、医療施設や福祉施設の職員の感染防止が重要。そのために、感染予防策の徹底や発生時の迅速な対応、職員の定期的な検査とともに、軽い症状でも迅速に検査できるような体制整備が必要。

N501Yに変異のある変異株(VOC)については、感染力が従来株よりも高いことが指摘されている。感染者数が増加してくる中で、地域ごとの感染状況やその感染性、病原性等の疫学情報についての評価・分析を踏まえた対応を速やかに実施していくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

 

 

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