掲載日:2021年4月28日
第32回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年4月27日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第32回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
直近の感染状況等
全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、先週今週比は低下の動きが見られるものの、増加が続いており、直近の1週間では10万人あたり27人となっている。関西圏、首都圏、中京圏のほか多くの自治体で感染者の増加が見られている。新規感染者数の増加に伴い、重症者数も急速に増加しており、死亡者も増加に転じている。今後、高齢者層への感染の波及が進むと、重症者数がさらに増加する可能性が高い。
- 実効再生産数:
- 全国的には、2月下旬以降1を超えており、直近(4/10時点)で1.10となっている。4/11時点で宮城、沖縄は1を下回っているが、1都3県、愛知、大阪・兵庫では1を上回る水準となっている。
影響が懸念される変異株(VOC)の割合が、関西(大阪、京都、兵庫)では、8割程度の高い水準が継続しており、従来株から置き換わったと推定される。東京でも4割程度、愛知で6割程度など他の地域でも割合が上昇傾向にあり、今後、全国的に置き換わっていくことが予想される。現段階では、15歳未満で明らかな感染拡大の傾向は見られておらず、今般の拡大に際しても、小児の症例数が顕著に多いとは認められない。
大阪では、40代以上の重症化率が高くなっているとの指摘もあるが、変異株割合の上昇や軽症者が診断されなくなっているのではないかという可能性があり、引き続き注視が必要である。
感染状況の分析【地域の動向等】
※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値
- ①関西圏
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- 特に、大阪、兵庫、奈良では、医療提供体制や公衆衛生体制の非常に厳しい状況が継続。救急搬送の困難事例も増えており、また、一般医療を制限せざるを得ない状況であり、必要な医療を受けられる体制を守るためには、新規感染者数を減少させることが必須。
- 大阪、兵庫、京都、奈良では20-30代を中心に全年齢層で新規感染者数が高い水準。大阪では、まん延防止等重点措置の開始から3週間が経過し、4月25日より再度緊急事態措置が適用された。繁華街の日中および夜間の滞留人口は減少し、前回の緊急事態宣言時に近い状況。先週今週比の低下は継続。新規感染者数は高止まりが見られるが、約88と非常に高い水準。今後も入院患者数、重症者数は更なる増加が予想される(40代、50代の重症者の割合も上昇)。周辺各府県でも概ね新規感染者数の増加傾向が続き、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀では、それぞれ約64、38、49、26、23となっている(滋賀は先週今週比1以上が2週間以上継続)。
- 大阪では、感染経路不明割合が6割を超えているが、高齢者施設等のほか家庭内、職場、部活やサークル活動などでの感染が見られている。
- ②首都圏(1都3県)
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- 東京では、まん延防止等重点措置の開始から2週間が経過し、4月25日より再度緊急事態措置が適用された。夜間滞留人口は減少に転じているものの下げ止まり傾向で、前回の緊急事態宣言時には及ばない状況。20-50代の感染拡大により、全体でも感染者数の増加が継続し、約37となっている。先週今週比も1以上が1ヶ月以上継続。地域的には都心を中心に周辺にも広がりが継続しており、感染が減少に転じるか注視していくことが必要。
- 東京では、飲食店での感染が継続し、施設、部活やサークル活動、職場などでの感染が見られている。宿泊療養、自宅療養、入院調整中の人数が増加し始めており、今後の医療提供体制への負荷の増大が懸念される。
- 埼玉、千葉、神奈川でも、先週今週比の値は低下しているものの、新規感染者数の増加が継続。まん延防止措置の効果が現れるまで、引き続き感染者数の増加が続くことが予測される。
- ③中京圏
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- 愛知では、20-30代を中心として、60才代以下のほぼ全世代で新規感染者数の増加が継続し、約24となっている。名古屋市では、30-50代を中心にほぼ全年齢層で増加し、高齢者施設、部活やサークル活動、職場、外国人コミュニティなどでの感染が見られている。
- 三重、岐阜でも感染者の増加が継続し、それぞれ約21、14となっており、三重は先週今週比1以上が2週間以上継続。
- 愛知では、変異株(VOC)割合も約6割となっており、変異株による散発例やクラスターが多発している。夜間滞留人口は減少に転じているが、引き続き、感染拡大の継続が懸念される。
- ④その他まん延防止等重点措置地域(宮城、沖縄)
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- 宮城では、新規感染者数の減少傾向が継続し、約13となっている。20時までの人流は増加傾向にあり、今後の動向には注意が必要。
- 沖縄では、新規感染者数は、4月半ば以降減少に転じているものの、約44と引き続き高水準。20-30代は減少傾向であるが、70代以上で増加しており、入院者数は増加が継続。
- ⑤上記以外の地域
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- 福岡では、夜間滞留人口が減少に転じたものの、新規感染者数が4月中旬以降20-30代を中心として急速に増加しており、約34。先週今週比も2を超えている。佐賀、長崎、熊本、大分でも4月中旬から下旬以降、急速な増加が見られ、それぞれ約22、14、16、26(福岡、佐賀、熊本、大分は先週今週比1以上が2週間以上継続)。九州全体での感染拡大の継続や急拡大が懸念される。
- その他の地域でも、クラスターの発生等により感染者数が急速に増加する地域や継続的に増加が続いている地域がある。北海道、青森、福島、茨城、群馬、新潟、富山、石川、福井、岡山、山口、徳島、香川、愛媛では増加から高止まりで新規感染者数が10を超えており、特に、北海道、茨城、石川、福井、岡山、徳島、愛媛では新規感染者数が18、15、17、15、21、34、18と高い水準となっている(北海道、茨城、石川、岡山、徳島は先週今週比1以上が2週間以上継続) 。
必要な対策
緊急事態宣言が発令されたが、これに伴う取組により、ゴールデンウィークの期間に感染を拡大させず、この機会を捉えて感染を抑える必要がある。このため、緊急事態措置区域とされた地域(東京、大阪、京都、兵庫)、及びまん延防止等重点措置区域とされた地域(宮城、埼玉、千葉、神奈川、愛知、愛媛、沖縄)では、同措置の適用に当たって講ずべきとされた取組を着実に行うとともに、効果を踏まえて、今後の対策を検討していくことが求められる。
その他の感染が増加している地域でも、感染状況を注視し、必要な感染抑制のための取組を、各自治体において速やかに実施していくことが必要。その上で、更なる感染拡大に対応するための医療提供体制や公衆衛生体制を確保し、さらに国からも必要な支援を行うことが求められる。
20-30代を中心とした行動が活発な現役世代における感染拡大の傾向が全国的に見られている。また、クラスターの多様化がみられ、飲食店に限らず、職場、部活やサークル活動など様々な場所での感染が報告されている。このような中で感染を抑えていくためには、クラスターの発生しやすい場での対策を徹底するとともに、感染拡大地域、特に緊急事態措置区域やまん延防止等重点措置区域では、ゴールデンウィークが近づく中で着実に人流や都道府県を越える移動を抑制して幅広く接触を削減する対策が求められる。
職場での感染も目立ってきており、非正規雇用者なども含め、症状を感じた場合にも安心して受診し検査が受けることのできるような体制の整備やテレワークの活用等による出勤の抑制など対策の強化が求められる。
また、感染者の増加に伴い、医療施設や福祉施設のクラスターも多発している。更に、施設の職員の感染防止が重要。感染予防策の徹底や発生時の迅速な対応、職員の定期的な検査とともに、軽い症状でも迅速に検査できるような体制整備が必要。外国人コミュニティにおけるクラスターも発生しており、対応が求められる。
有症状者への受診の呼びかけと迅速な検査対応が必要。そのための体制をゴールデンウィーク中も含めて整えておくことが必要。また、改めてマスクの着用等基本的な感染予防の重要さを発信することが必要。
従来株から変異株(VOC)への置き換わりが進む中で、地域ごとの感染状況やその感染性、病原性等の疫学情報についての評価・分析を踏まえ、対応を随時、速やかに実施していくことが必要。また、新たな変異株に対しては、ウイルスゲノムサーベイランスによる実態把握を行うとともに、評価・分析を踏まえた適切な対応を行うことが必要。