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掲載日:2021年6月24日

第40回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第40回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、減少傾向が続いており、直近の1週間では10万人あたり約8となっている。感染拡大が見られていた地域では概ね減少傾向となっている。新規感染者数の減少に伴い、重症者数、死亡者数も減少傾向が続いている。また、感染者に占める高齢者割合は低下傾向。しかし、人流の増加傾向が見られ減少速度が鈍化する地域もあり、そうした地域では、今後リバウンドが懸念される。特に、東京を中心とする首都圏では下げ止まりから横ばいとなってきており、リバウンドを起こさないための対策の徹底が必要。

実効再生産数:
全国的には、直近(6/6時点)で0.80と1を下回る水準が継続。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

沖縄
新規感染者数は約40と依然として高い水準であるが、減少が継続している。20-30代が中心。病床使用率は高水準となっているが、新規感染者数の減少に伴い、自宅療養や入院等調整中は減少に転じ、入院率は上昇している。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、新規感染者数が減少に転じた後、夜間滞留人口・昼間滞留人口とも増加に転じており、今後も滞留人口の増加傾向が継続するか注視が必要。
首都圏(1都3県)
東京、千葉では、新規感染者数は横ばいから増加に転じる動きが見られ、それぞれ約20、12。東京では特に20代が多く、都心部で感染者数が高い状況。埼玉、神奈川では減少傾向で、それぞれ約7、14。東京では、夜間滞留人口の増加が続いていたが、先週に入り微減、今後の動きを注視する必要。千葉、神奈川の夜間滞留人口は横ばいから微減。埼玉では増加の動き。対策への協力が得られにくくなっていることが懸念され、特に東京で滞留人口の増加傾向が続くと、リバウンドに向かうことが強く懸念され、警戒が必要。
関西圏
大阪、兵庫、京都では、新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ約7、3、4。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数も減少するなど改善が見られるが、高齢者施設等でのクラスターは継続して発生。大阪では、夜間滞留人口・昼間滞留人口の増加が継続、3回目の宣言開始時の水準に戻っている。兵庫では夜間滞留人口は2回目の宣言中最低値より低い水準を維持。京都では直近の1週間で再び増加。今後も新規感染者の減少が見込まれるが、滞留人口の動向とともに注視が必要。
愛知
新規感染者数の減少が続き、約8。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。夜間滞留人口は低い水準に抑えられており、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
北海道
新規感染者数は減少が続き、約8。感染の中心である札幌市でも減少が続き、約15。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、減少が続いていた夜間滞留人口が増加に転じた後、直近の1週間ではほぼ横ばい。新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。札幌では病床使用率が高い状況。
福岡
新規感染者数の減少が続き、約5。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。夜間滞留人口は、低い水準を維持。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
上記以外
山梨では新規感染者数が約19。クラスターの発生による増加がみられ、留意が必要。

変異株に関する分析

B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、クラスターが複数報告されている。スクリーニング検査の割合(機械的な試算)は、クラスターの影響により数十%程度となっている地域もあるが、全国的には3%程度となっている。しかし、今後置き換わりが進むとの指摘もあり、注視していく必要がある。また、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)よりも感染性が高いことが示唆されている。ワクチンについては変異株に対しても二回接種後には有効性を示す研究結果も報告されている。引き続き、分析を進めていく必要がある。

今後の見通しと必要な対策

6月21日から多くの地域で緊急事態措置やまん延防止等重点措置(重点措置)の解除や緩和が行われた。これは、市民や事業者の協力により、新規感染者数の減少や医療提供体制への負荷の低減という効果が着実に現れた成果である。今後、急激なリバウンドを避けるためには、今後も人々の協力が不可欠である。

今後も全国的に新規感染者数の減少傾向が続く可能性があるが、これまで解除後速やかに人流の増加やリバウンドが起こった経験や、アルファ株及びデルタ株によりこれまでより感染拡大が速く進む可能性があることも踏まえると、今後のリバウンドが強く懸念される。特に、全国への影響も大きい東京において、重点措置による対策の徹底による人流および接触機会を抑制できないとリバウンドが起こることが強く懸念される。

一方で、ワクチンの接種が高齢者中心に進んでおり、高齢者の重症化が抑えられることが期待されるものの、デルタ株への置き換わりが進む可能性もあり、リバウンド後に感染者数の急速な増加が続けば、結果的に重症者数も増加し、医療のひっ迫につながる可能性もある。

このため、先般取りまとめられた「令和3年6月21日以降における取組」に基づき、職域接種なども含めワクチン接種を着実に進めるとともに、感染の拡大を抑制するための必要な取組を今後も継続すべきである。また、感染の状況を踏まえ、対策の強化を含めた機動的な対処が重要。各自治体でも、感染拡大の予兆があれば、必要な対策をタイムリーに実施していくことが必要。

置き換わりも懸念されるデルタ株については、全陽性者の約4割を目指したL452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、変異株に対する積極的疫学調査や検査の徹底等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、引き続き迅速に対応することが必要。

また、ワクチン接種が進められる中、感染状況への影響および、入院者数や入院率、重症者数の推移、それに伴う医療提供体制の負荷の状況などを適切に評価しながら、今後の対策を考えることが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan