国立感染症研究所

掲載日:2021年7月1日

第41回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月30日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第41回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、減少傾向が続いてきたが、横ばいから微増となり、直近の1週間では10万人あたり約8となっている。東京を中心とする首都圏では、増加に転じており、感染の再拡大が強く懸念される。一方で、これまでの新規感染者数の減少に伴い、重症者数、死亡者数も減少傾向が続いている。また、感染者に占める高齢者割合は引き続き低下傾向。

実効再生産数:
全国的には、直近(6/13時点)で0.87と1を下回る水準が継続しているが上昇傾向。首都圏では1.00となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は増加に転じ、約25、先週今週比も上昇傾向で1.22。特に20代中心に10-30代が多く、学校・教育施設のクラスターも散見されている。65歳以上は少なく、5%程度。重症者数は減少傾向。埼玉では、増加に転じる動きが見られ、約9、先週今週比は1.24。千葉、神奈川は横ばいから微増で、それぞれ約13、15、先週比も直近で1を越えている。首都圏全体で20代が多い。東京では、宣言解除後の1週間で夜間滞留人口が18%増加。深夜帯も急増。埼玉、千葉、神奈川では、酒類の提供が可能となった夕方の滞留人口が顕著に増加。夜間滞留人口も増加。特に、東京で今後も感染が拡大することが強く懸念される。周辺や全国への拡大を波及させないためにも、対策の徹底が必要。
沖縄
新規感染者数は約33と依然として高い水準であるが、減少が継続している。20-30代が中心。病床使用率は高水準となっているが、新規感染者数の減少に伴い、自宅療養や入院等調整中は減少に転じ、入院率は上昇傾向。夜間滞留人口の増加が続いており、新規感染者数は高い水準にも関わらず減少速度が鈍化。今後の動向に注視が必要。
関西圏
大阪では、新規感染者数は下げ止まりから横ばいで、約8。京都、兵庫では減少傾向が続き、それぞれ約4、3。入院者数、重症者数も減少傾向で改善が見られる。大阪では、宣言権解除後の1週間で夜間滞留人口・昼間滞留人口とも急増。深夜帯も急増。兵庫、京都でも夜間滞留人口が増加。特に大阪で滞留人口の増加傾向が続くと、リバウンドに向かうことが強く懸念され、警戒が必要。
愛知
新規感染者数の減少が続き、約5。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、酒類の提供が可能となった夕方の滞留人口が顕著に増加。夜間滞留人口も増加しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
北海道
新規感染者数は減少が続き、約4。感染の中心である札幌市でも減少が続き、約9。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、宣言解除後の1週間で夜間滞留人口が急増しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
福岡
新規感染者数の減少傾向が続き、約4。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、酒類の提供が可能となった夕方の滞留人口が顕著に増加。夜間滞留人口も増加しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
上記以外
福井では、新規感染者数が約15。直近では減少に転じているが、飲食店関係者を中心とした増加がみられたところであり、留意が必要。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、クラスターが複数報告され、市中での感染も観察されている。スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算)は、全国的には5%程度と、足下では未だ低い水準ではあるものの上昇が見られる。B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)よりも感染性が高いことが示唆され、今後置き換わりが進むとの指摘もあり、注視していく必要がある。
  • ワクチンについては、変異株に対しても二回接種後には有効性を示す研究結果も報告されている。引き続き、分析を進めていく必要がある。

今後の見通しと必要な対策

東京で新規感染者数が増加に転じており、東京及び首都圏における更なる感染拡大や各地への影響が強く懸念される。これまで解除後速やかに人流の増加やリバウンドが起こった経験や、デルタ株によりこれまでより感染拡大が速く進む可能性があることも踏まえると、特に、東京において対策の徹底が必要。夜遅くまで酒類の提供を行う飲食店やマスク無しの会食も散見され、飲食の場面への対策を強化していくことが重要。また、その他の地域でも、先週今週比の上昇している地域があり、同様に対策の徹底が必要。

緊急事態措置やまん延防止等重点措置の対象となっている地域や解除された地域の多くで、人流の急増が見られている。このため、新規感染者数の減少が鈍化あるいは下げ止まりや横ばいから増加に転じた地域もある。高齢者のワクチン接種は進んでおり、重症者数と死亡者数は減少傾向が続いているが、感染者数が急増すれば重症病床より先に入院病床がひっ迫するとの予測も示されており、感染拡大の予兆があれば機動的な介入により急拡大を抑制することが必要である。

先般取りまとめられた「令和3年6月21日以降における取組」に基づき、職域接種なども含めワクチン接種を着実に進めるとともに、感染の拡大を抑制するための必要な取組を今後も継続・徹底すべきである。

ワクチンの接種が高齢者中心に進んでいる。発症予防、重症化予防と共に、感染予防効果を示唆する報告もあり、感染状況への影響、入院者数、入院等調整状況、入院率、重症者数の推移、それに伴う医療提供体制等の負荷の状況への影響などを適切に評価することが必要。また、今後も接種の促進に努めるとともに、ハイリスクな感染の場や感染経路に着目した戦略的なワクチン接種を進めることも流行制御に重要と考えられる。特に、若年層を中心に、懸念や不安の払拭が必要。

置き換わりも懸念されるデルタ株については、L452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、変異株に対する積極的疫学調査や検査の徹底等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、引き続き迅速に対応することが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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