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掲載日:2021年7月8日

第42回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年7月7日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第42回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、増加傾向に転じており直近の1週間では10万人あたり約9となっている。東京を中心とする首都圏では、増加が続いており、感染の再拡大が強く懸念される。一方で、これまでの新規感染者数の減少に伴い、重症者数、死亡者数も減少傾向が続いているものの、東京ではすでに入院者数、重症者数ともに増加に転じる動きが見られる。また、感染者に占める高齢者割合は引き続き低下傾向。

実効再生産数:
全国的には、直近(6/20時点)で1.02と1を上回す水準となっており。首都圏では1.09となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は増加が続き、約30、今週先週比は1.22で、1以上が2週間継続。特に20代中心に10-30代が多く、学校・教育施設のクラスターも散見されている。65歳以上は少なく、6%程度(ただし、実数では増加しており、留意が必要。)。50代以下を中心に、入院者数、重症者数は増加に転じている。PCR検査陽性率も上昇傾向。埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数の増加の動きが見られ、それぞれ約11、16、16。夜間滞留人口は、東京では連日の雨の影響等により微減。埼玉、千葉、神奈川でもほぼ横ばいとなっているが、東京では、宣言解除後の1週目で急増しており、東京を中心に今後も感染が拡大することが強く懸念される。首都圏の新規感染者数が全国計の約3分の2を占めており、周辺や全国への拡大を波及させないためにも、対策の徹底が必要。
沖縄
新規感染者数は減少が続いているが、約27と依然として高い水準で、減少速度が鈍化。20-30代が中心。新規感染者数の減少に伴い、病床使用率や自宅療養、入院等調整中は減少傾向となっているが、特に重症病床では厳しい状況が継続。新規感染者数の減少速度が鈍化する中、夜間滞留人口の増加が続いており、今後の動向に注視が必要。
関西圏
大阪、京都、兵庫では、新規感染者数は横ばいから微増で、約9、5、4。いずれも入院者数、重症者数は減少傾向で、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準。大阪、兵庫では、宣言権解除後の1週間で急増した夜間滞留人口・昼間滞留人口は、連日の雨の影響等で減少。京都では夜間滞留人口の増加が継続。特に大阪で滞留人口の増加傾向が続くと、リバウンドに向かうことが強く懸念され、警戒が必要。
愛知
新規感染者数の減少傾向が続き、約4。入院者数、重症者数も減少傾向で、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、夜間滞留人口の増加が続いており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
北海道
新規感染者数は下げ止まりで、約4。感染の中心である札幌市では、約8。入院者数、重症者数も減少傾向で、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準。宣言解除後の1週間で急増した夜間滞留人口は、ほぼ横ばい。新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。。
福岡
新規感染者数は下げ止まりで、約4。入院者数、重症者数も減少傾向で、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準。昼間滞留人口は顕著に増加しているが、夜間滞留人口は低い水準を維持。新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、クラスターが複数報告され、市中での感染も観察されている。スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算)は、全国的には7%程度と、足下では未だ低い水準ではあるものの上昇が見られる。B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)よりも感染性が高いことが示唆されているが、今後置き換わりが進むことが想定され、注視していく必要がある。
  • ワクチンについては、変異株に対しても二回接種後には有効性を示す研究結果も報告されている。引き続き、分析を進めていく必要がある。

今後の見通しと必要な対策

東京で若い年齢層を中心とする新規感染者数の増加が続いており、今週先週比の1以上が継続し、検査陽性率の上昇など今後の感染拡大の継続が予想される。今後、4連休や夏休み、お盆などで県境を越えるような移動が活発になり、普段会わない人と会う機会が増えるなど、これまでの日常とは異なる行動につながる可能性があり、更なる感染拡大や各地への影響が強く懸念される。東京ではすでに入院者数、重症者数は増加傾向で、40代・50代の重症者数は前回の感染拡大期と同水準となっており、感染を抑制するための対策の徹底が必要。大人数や長時間での飲食や飲酒を伴う会食に複数回参加することで感染リスクが高まることも示唆されているが、夜遅くまで酒類の提供を行う飲食店やマスク無しの会食も散見されており、見回りや働きかけを積極的に行うなど、飲食の場面への対策を徹底・強化していくことが重要。また、沖縄では新規感染者数の減少速度が鈍化、医療提供体制の指標は改善されてきているものの、特に重症病床で厳しい状況が継続。対策の徹底が必要。

その他の地域でも、新規感染者数が下げ止まりや横ばいから増加に転じた地域がある。高齢者のワクチン接種は進んでおり、重症者数と死亡者数は減少傾向が続いている。このことが、医療提供体制の状況への評価に及ぼす影響について検討が必要だが、感染者数が急増すれば重症病床より先に入院病床がひっ迫するとの予測も示されており、このため、まん延防止等重点措置が解除された場合でも、地域の感染状況を踏まえ、対策の緩和は段階的に行うとともに、感染拡大の予兆があれば機動的な介入により急拡大を抑制することが必要である。

こうした中で、今後、4連休や夏休みなどを迎えるが、どのような対応を求めていくか、速やかに発信していくことが必要。

ワクチンの接種が高齢者中心に進む中、高齢者の新規感染者数の割合が昨年秋以降で最も低い水準となるなど、ワクチンの効果が示唆されてきており、引き続き接種を着実に進めることが必要。また、ハイリスクな感染の場や感染経路に着目した戦略的なワクチン接種を進めることも流行制御に重要と考えられる。その際、特に若年層を中心に、懸念や不安の払拭が必要。

ワクチンについては、発症予防、重症化予防とともに、感染予防効果を示唆する報告もある。接種進展に伴う効果について適切に分析・評価するとともに、ワクチン接種が十分に進んだ後の適切な感染防止策等の在り方について検討していくことが必要。

置き換わりも懸念されるデルタ株については、L452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、変異株に対する積極的疫学調査や検査の徹底等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、各国の感染状況等も踏まえ、引き続き迅速に対応することが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan