国立感染症研究所

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2020年12月25日20:00時点

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22:00時点の追記:12月25日21時、厚労省より、検疫により確認された新型コロナウイルスの患者等について、英国において報告された変異した新型コロナウイルス感染症(変異株)が検出されたとの報告があった。次回報告でこの事象を含めたリスク評価を更新する。

 

感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株VOC-202012/01と501Y.V2について報告する。

概況(VOC-202012/01)

  • 英国では、過去数週間にわたって、ロンドンを含むイングランド南東部で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例の急速な増加に直面しており、疫学的およびウイルス学的調査を強化してきた(1)。そして、イングランド南東部で増加しているCOVID-19症例の多くが、新しい単一の系統に属していることが確認された(1,2)。
  • Nextstrain clade 20B、GISAID clade GR、B.1.1.7系統に属するこの新規変異株は、Variant Under Investigation (VUI)-202012/01と命名されていたが、12月18日リスクアセスメントの結果、Variant of Concern (VOC)- 202012/01に変更となった(1, 3)。
  • VOC-202012/01には、23箇所の変異があり、スパイクタンパクの変異(deletion 69-70、deletion 144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H)とその他の部位の変異で定義される(1,3)。
  • 英国でのウイルスゲノム解析・疫学・モデリング解析では、この新規変異株(VOC-202012/01)はいままでの流行株よりも感染性が高い(再生産数(R)を0.4以上増加させ、伝播のしやすさ(transmissibility)を最大70%増加すると推定)ことが示唆され、PCR法による核酸検査やウイルスゲノム解析から推定されるウイルス量は、増加していることが示唆されている(1,4)。
  • また、VOC-202012/01の変異の一つ、S遺伝子deletion 69-70により、S遺伝子を検出するPCRによっては、結果が偽陰性となるspike gene target failure (SGTF)を認めている(3)。英国の3カ所の検査施設において、SGTF を認める検体が急増するとともに、10月12日の週にはSGTFを認める変異株のうちB.1.1.7に属するものが5%であったが、11月30日にはこの頻度が96%と急増していた(3)。次に記載の南アフリカの新規変異株(501Y.V2)は、S遺伝子deletion 69-70を認めていないため、VOC-202012/01と同様の方法で検知できるのか現時点では不明である(5)。
  • スパイクタンパクの多くの変異数、英国でのウイルスゲノム解析が行われる割合(5-10%)、その他の新規変異株の特徴からは、この株は免疫抑制者等において一人の患者での長期的な感染で、免疫回避による変異の蓄積が加速度的に起こった結果である仮説が考えられる(1)。一方で、ヒトから動物、動物からヒトに感染し変異した可能性やウイルスゲノム解析が(あまり)行われていない国において流行する中で、探知されないまま、徐々に変異が蓄積した可能性は否定的である(1)。
  • VOC-202012/01は、デンマーク(9例)、オランダ(1例)、ベルギー(4例、メディア情報) 、オーストラリア(4例)、アイスランド、イタリアで確認されている(1,2, 6)。なお、各国の病原体サーベイランス体制やゲノム解析能力の差異により、検知能力が異なることに留意すること。ECDCは、「EUのほとんどの国では、ウイルスゲノム解析が行われている例が英国よりも少ないため(英国では全症例の約5~10%で実施)、この新規変異株がすでにEU内で流行している可能性は否定できない」としている(1)。
  • シンガポール(保健省)(7)、香港(メディア情報)、ドイツ(メディア情報)でもVOC-202012/01の検出が報告されているが、検疫中の英国からの帰国者からの検出であり、国内流行との関連は認めていない。
  • 現時点では、VOC-202012/01に関連した重症化を示唆するデータは認めないが、症例の大部分が重症化の可能性が低い60歳未満の人々(地域で流行している年齢層を反映)であり、評価に注意が必要である(1)。
  • 現時点では、VOC-202012/01のワクチンの有効性への影響は不明である(1-3)。

概況(501Y.V2)

  • 12月18日、南アフリカ保健省はCOVID-19患者の急増と新規変異株( 501Y.V2と命名)の割合が80~90%に増加していることを報告(8,9)。
  • 501Y.V2は、レセプター結合部位として重要な3箇所(K417N, E484K, N501Y)の変異を含む、スパイクタンパクの8箇所の変異で定義される(5,7,8)。英国で検出されたVUI-202012/01と同様のN501Yを認めるが、系統としては進化的関連を認めない(Nextstrain clade 20C、GISAID clade GH、B.1.351系統に属する)(5,8,9)。 
  • 感染性が増加している可能性が示唆されているが、精査が必要である(8,9)。より重篤な症状を引き起こす可能性やワクチンの効果への影響を示唆する証拠はない(8,9)。
  • 12月23日、英国は、南アフリカからの渡航者との接触歴がある501Y.V2の2例を報告(10)。

各国の対策

  • 英国は、12月20日から今後数週間、南東イングランドで「Tier 4」レベル(外出制限等を含む最も強い措置)となることを発表した(1)。
  • 英国以外の各国は英国からの一時的な入国制限を検討または実施している(1)。
  • 日本は、英国に対しては12月24日0時より水際対策を強化し、英国に滞在歴のある外国人は新規入国を拒否し、日本からの英国への短期出張者の帰国・再入国時についても14日間待機緩和措置を認めないこととなった。日本人帰国者についても出国前72時間以内の検査証明、位置情報の保存等について誓約を求めている(11)。

日本の状況

  • VUI-202012/01および501Y.V2の両者に共通し、感染性の変化に最も影響を与えうると考えられるN501Y変異を認める株は、日本において見つかっていない。なお、ウイルスの遺伝子解析が行われている症例は全体の一割程度に限られていることに留意すること。
    参考)国内のゲノム確定数 14,077検体、空港検疫のゲノム確定数 384 検体(共に2020/12/22現在)。 全てにおいてN501Y変異株は未検出。VUI-202012/01の系統も検出されていない。 
  

日本における迅速リスク評価

  • 国内で変異株が検出されていないことは、国内に変異株が存在しないことを保証するものではない。
  • 英国、南アフリカからの輸入リスクがある。
    • 英国については、12月24日0時より水際対策が強化され、英国に滞在歴のある外国人は新規入国を拒否し、日本からの英国への短期出張者の帰国・再入国時についても14日間待機緩和措置を認めないこととなった。日本人帰国者についても出国前72時間以内の検査証明、位置情報の保存等について誓約を求めており、輸入リスクはとても低い。
    • 南アフリカについては、外国人は原則入国禁止であり、日本人等の入国者は、空港での検査と14日間の自宅待機が行われており、輸入リスクは低い。
  • 英国・南アフリカ以外での流行状況は不明であるが、いくつかの国ではすでに当該国内例から検出されていることから輸入リスクはあるが、定量的評価は困難。シンガポール、香港の検出例については、検疫で確認された輸入症例であり、両国からの輸入リスクはとても低い。
  • 3〜4月の感染拡大以後、海外からの持ち込み株が国内で持続的に拡大した事例は確認されていないが、従来株と比較して感染性が高い可能性に鑑みて、国内に持ち込まれた場合に現状より急速に拡大するリスクに留意。
  • 国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに記載のPCR検査法は、これまでと同様に使用可能である。  

日本の対応についての国立感染症研究所からの推奨

  • 変異株の監視体制の強化
    • 特に、最近2週間の海外渡航歴ありの者に対するPCR検査等の実施、検体提出、ゲノム分析の実施。
      <監視体制の優先順位の考え方>

      変異株が検出されていないことは、当該地域内に変異株が存在しないことを保証するものではないが、検体提出、ゲノム分析を行う対象となる者の2週間以内の海外渡航先については、下記の優先順位を考慮する。

      1. 感染拡大とVOC-202012/01または501Y.V2の増加に関連性が認められる国・地域 (英国、南アフリカ)
      2. VOC-202012/01または501Y.V2が国内で検出されているが、感染拡大との関連性が明らかではない国 ・地域(デンマーク、オランダ、ベルギー、オーストラリア、アイスランド、イタリア)
      3. VOC-202012/01または501Y.V2が国内で報告されていない国・地域  (シンガポール、香港、ドイツを含む1、2以外の国・地域)
    • 上記1の国・地域について、全ての入国者のPCR検査等が陽性時にはゲノム分析を行うとともに、入国者の健康観察を実施。必要に応じ、指定施設での停留(健康観察)や航空便の運行停止も検討。
    • 上記1の国・地域からの入国者の陽性例については、症状等の有無に関わらず入院等により他者との接触機会を避ける。
    • 上記2の国・地域については、全ての入国者のPCR検査等と陽性時にはゲノム分析を行うことともに、発生数の著しい拡大が認められる場合には、上記1と同様の対応を検討。
    • 上記3の国・地域からの入国者や、渡航歴のない国内例についても、陽性者に上記1の地域に2週間以内の渡航歴がある者との接触歴を認める場合には同様に検体提出、ゲノム分析を実施。
    • 国内については、特に11月から12月の症例について、地域等の偏りなく検体提出とゲノム分析を実施。

参考資料

  1. European Centre for Disease Prevention and Control. Rapid increase of a SARS-CoV-2 variant with multiple spike protein mutations observed in the United Kingdom. December 20, 2020. https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/SARS-CoV-2-variant-multiple-spike-protein-mutations-United-Kingdom.pdf.
  2. World Health Organization. SARS-CoV-2 Variant - United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland. Disease outbreak news. December 21, 2020. https://www.who.int/csr/don/21-december-2020-sars-cov2-variant-united-kingdom/en/.
  3. Public Health England. Investigation of novel SARS-COV-2 variant: Variant of Concern 202012/01. December 21, 2020.
    https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/947048/Technical_Briefing_VOC_SH_NJL2_SH2.pdf.
  4. The New and Emerging Respiratory Virus Threats Advisory Group (NERVTAG). NERVTAG meeting on SARS-CoV-2 variant under investigation VUI-202012/01. December 18, 2020.
    https://www.gov.uk/government/groups/new-and-emerging-respiratory-virus-threats-advisory-group.
  5. Genomic epidemiology of hCoV-19. https://www.gisaid.org/epiflu-applications/phylodynamics/.
  6. Australian Health Protection Principal Committee. A statement from the Australian Health Protection Principal Committee (AHPPC) on a new variant of the virus that causes COVID-19. December 22, 2020. https://www.health.gov.au/news/australian-health-protection-principal-committee-ahppc-statement-on-new-variant-of-the-virus-that-causes-covid-19.
  7. Ministry of Health, Singapore. No new cases of locally transmitted COVID-19 infection. December 23, 2020. https://www.moh.gov.sg/news-highlights/details/no-new-cases-of-locally-transmitted-covid-19-infection-23-dec-update.
  8. COVID-19 Corona Virus South African Resource Portal. New COVID-19 variant identified in SA. December 18, 2020. https://sacoronavirus.co.za/2020/12/18/new-covid-19-variant-identified-in-sa/.
  9. Tegally H, et al. Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. MedRxiv. 2020. doi:10.1101/2020.12.21.20248640.
  10. Public Health England. Confirmed cases of COVID-19 variant from South Africa identified in UK. December 23, 2020.
    https://www.gov.uk/government/news/confirmed-cases-of-covid-19-variant-from-south-africa-identified-in-uk.
  11. 外務省. 外務省海外安全ホームページ:新型コロナウイルス感染症に関する英国に対する新たな水際対策措置. 2020年12月23日. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C086.html.

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更新履歴

第2報 2020/12/25 20:00時点 注) 第1報からタイトル変更

第1報 2020/12/22 16:00時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」 

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