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IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症およびインフルエンザの状況(2021年1月29日現在)

 

新型コロナウイルス感染症:

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年1月29日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で101,452,470例(2,191,027例)、194カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16444.html)。

 国内では、厚生労働省により公表されている、各自治体がプレスリリースしている個別の症例数(再陽性例を含む)を積み上げた情報によると、2021年1月29日0時現在、新型コロナウイルス感染症の検査陽性者数は379,516例、死亡者数は5,452例と報告されている。累積のPCR検査実施人数は、暫定値として6,706,393例であった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16444.html)。全国の報告日別新規陽性者数は、2020年9月後半(第39週)より増加傾向に転じ、第53週(12月28日〜1月3日)は23,423例であった。2021年第1週(1月4〜10日)から第2週(1月11〜17日)にかけては、検査数と陽性数が減少したが、検査陽性率(検査数に対する陽性者数の割合)は微増した〔第1 週:9.5%(42,882/451,302)、第2 週:9.8%(41,290/420,313)〕。第2週から第3週(1月18〜24日)にかけては、検査数が増加したにも関わらず陽性数は減少した〔第3 週:6.8%(34,897/513,832)〕。一方、第52 週〔6.7%(21,859/327,431)〕と比較すると、第3週は検査数が大幅に増加したなかで同程度の陽性率であった(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html)。

 COVID-19による全国の入院治療等を要する者の数の推移については(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)、2020年10月20日(5,031例)以降は、継続して増加していたが、2021年1月18日(71,129例)をピークに減少に転じた(2021年1月31日現在)。同様に、日本COVID-19対策ECMOnetが集計するECMO/人工呼吸器装着数の推移(https://crisis.ecmonet.jp/)においても、感染者数の新たな増加に伴い、時間差をおいて10月下旬から増加し、11月29日以降は4月と8月のそれぞれのピークを上回り、その後も増加を続けたが、2021年1月20日(623例)をピークに増加は止まった(2021年1月31日現在)。継続した増加傾向は複数の指標でみられなくなったものの、全国的に、医療機関や介護施設等を含む集団感染(クラスター)の発生が相次いで認められており、依然として多くの重症患者の入院が続いており、医療体制の逼迫が懸念される地域が存在している。重症患者数については、一部の都道府県においては、都道府県独自の基準にのっとって発表された数値を用いて算出されていることに注意する。

 また、感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスには、医療機関、保健所等で採取された検体から、各都道府県市の地方衛生研究所、保健所、ならびに検疫所で検出された病原体の情報が、任意ではあるが報告されている。2021年2月1日現在、地方衛生研究所および保健所から報告された、新型コロナウイルス感染症/新型コロナウイルス感染症疑い症例から検出された病原体は、SARS-CoV-2が10,205件、陰性が79,864件であった。これ以外にも検疫所で検出されたSARS-CoV-2が293件報告されている。

 2020年5月29日以降、新型コロナウイルス感染症発生届に関する国への報告事務は、厚生労働省が運営する新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われることとなり、移行可能な自治体から順次、移行を実施し、現時点で全国の自治体で利用されている。厚生労働省においては、今後の統計情報の集計等については、HER-SYSに入力された情報に基づいて行うことを基本とするとしている。本稿では、HER-SYSに基づく情報は含めておらず、今後分析を行っていく予定である。

 

季節性インフルエンザ:

 全国約5,000のインフルエンザ定点より報告された、2021年第3週(2021年1月27日現在)の定点当たりのインフルエンザ報告数は0.01(患者報告数64)となり、前週の定点当たり報告数0.01(患者報告数65)と同程度で推移している。都道府県別の第3週の定点当たり報告数(報告数)では京都府0.11(報告数14)、三重県0.10(報告数7)、岡山県0.07(報告数6)、福島県0.04(報告数3)、岐阜県0.03(報告数3)、滋賀県0.03(報告数2)、北海道0.02(報告数4)、愛知県0.02(報告数4)、兵庫県0.02(報告数3)、広島県0.02(報告数2)、栃木県0.01(報告数1)、群馬県0.01(報告数1)、東京都0.01(報告数5)、新潟県0.01(報告数1)、長野県0.01(報告数1)、大阪府0.01(報告数2)、福岡県0.01(報告数2)、埼玉県0.00(報告数1)、千葉県0.00(報告数1)、神奈川県0.00(報告数1)となっている。定点医療機関からの報告を基にした、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は約0.1万人(95%信頼区間:0〜0.2万人)となり、前週の推計値(約0.1万人)と同程度と推定された。また、全国約500の病原体定点からの報告による感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスにおける、インフルエンザウイルス分離・検出速報によると(https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)、2020/21シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告において、2020年第43週、第44週の長崎県からの報告として、採取検体からAH1pdm09がそれぞれ1例ずつ検出された(2021年1月28日現在)。より重症な患者を反映する、全国約500カ所の基幹定点医療機関からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)においては、2020年第36週1例、第40週1例、第41週1例、第42週4例、第43週1例、第44週4例、第45週4例、第46週9例、第47週2例、第48週5例、第49週3例、第50週5例、第51週2例、第52週6例、第53週9例、2021年第1週7例、第2週8例、第3週3例(2021年1月27日現在)が報告されており依然として少数である。

 「感染症法に基づくサーベイランス」以外の情報においても、インフルエンザは低いレベルで推移しており、大きな増加傾向は見られていない。インフルエンザ様疾患発生報告数(全国の保育所・幼稚園、小学校、中学校、高等学校におけるインフルエンザ様症状の患者による学校欠席者数;https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-flulike.html)においては、2020年第36週以降、第37週に学年閉鎖1、第43週に学級閉鎖1、第44週に学級閉鎖1が報告されたが、第45週以降は、休校・学年閉鎖・学級閉鎖の報告はない。一方、「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」〔国立病院機構141病院で、診察医師がインフルエンザ(疑いを含む)と仮診断した患者にインフルエンザ迅速抗原検査を実施した検査件数と陽性となった数の報告;https://nho.hosp.go.jp/cnt1-1_0000201804_00005.html〕のデータにおいては、2020年12月1〜15日では2,660件の検査のうち、インフルエンザ陽性は2件(インフルエンザA型2例)、12月16〜31日では3,095件の検査のうち、インフルエンザ陽性は4件(インフルエンザA型4例)が報告された。

 

 新型コロナウイルス感染症においては、2021年第1週以降、全国的には新規の検査陽性者数が減少に転じたが、陽性率は依然として高く、現在も多くの重症者が入院している。インフルエンザについては、例年はこの時期がピーク時だが、現在、複数の指標で依然として低いレベルで推移している。一方、インフルエンザ定点医療機関と基幹定点医療機関からの報告は少数ながら継続してみられており、今後の状況に関する注視と警戒が必要である。インフルエンザに対してはワクチン接種の実施が推奨される。二つの感染症に共通する個人の予防策として、マスクの適切な使用、手洗い・手指衛生の徹底、適切な換気等の実施に努めていただきたい。

 

   国立感染症研究所 感染症疫学センター

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