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新型コロナウイルスVOC-202012/01感染者の陰性確認完了までに要した日数とCt値の推移に関する考察

(速報掲載日 2021/4/2)
 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の退院基準については、令和2(2020)年5月29日付事務連絡1)が通達されるまでは、症状消失後2回連続の核酸増幅法による陰性の確認が必要であったが、上記の事務連絡以後は発症日からの日数経過による退院および療養解除が認められている2)。一方で、英国や南アフリカ、ブラジル等で流行している、Spikeタンパク質のN501Y変異を持つ、「懸念される変異株(variants of concern: VOC)」については、令和2年12月25日付事務連絡において通常とは異なる退院基準が設定され、2回連続の核酸増幅法による陰性確認が必要となった3)。この陰性確認の要件を満たすためには、現在の通常のCOVID-19患者の療養解除基準である発症日から10日という日数を超えるケースが多く、入院病床の圧迫の一因となっている。本稿では神戸市においてPCR検査により2回の陰性が確認された90名のVOC-202012/01(英国型変異株)感染患者について、発症日から陰性確認完了に要した日数とCt値の推移を解析したものを報告する。なお、すべての検査は唾液検体からRNAを抽出し、病原体検出マニュアルに収載されているN2領域をターゲットとしたリアルタイムPCR法で実施した。機器はABI StepOne Plusを使用し、Ct値はThresholdを0.2に設定して算出した。

 対象とした90名のうち有症者は74名で、無症状感染者が16名であった。それぞれの発症日から陰性確認完了までに要した日数を図1に示す。無症状感染者は検体採取日を発症日として計算した。陰性確認完了に要した日数の平均は有症者で17.4日、無症状感染者で14.3日であったが有意差は確認できなかった。無症状感染者の多くは15日以内に陰性確認が完了したが、36日または27日を要した感染者も存在し、それぞれ8回と11回のPCR検査を実施した。有症者では50%を超える患者が陰性確認完了までに15日以上の日数を要した。

 Ct値については、陰性確認検査において1度も陽性とならなかった感染者が45名いたため、残りの45名(95検体)について解析した。経過日数とCt値の分布を図2に示す。Ct値の平均は35.0であり、発症日から10日未満の検体においても8割以上がCt>30を示していた。COVID-19のPCR検査におけるCt値と感染リスクの相関については複数の報告があり、Ct値が30を超える患者では感染リスクが低いとされている4)。陰性確認検査においては、Ct値が35付近になってからも複数回陽性となる感染者もおり、症状が改善し感染リスクも低いと考えられる患者が長期間病床を占有してしまうという大きな問題を抱えている。現在の国内におけるVOCの感染者数増加を受けて、退院基準の再検討が必要であると考えられる。

 

参考文献
  1. 健感発0529第1号, 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年5月29日)
  2. 健感発0625第5号, 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月25 日)
  3. 事務連絡, 「英国及び南アフリカ共和国に滞在歴がある入国者の方々の健康フォローアップ及びSARS-CoV-2 陽性と判定された方の情報及び検体送付の徹底について(一部改正)」(令和2年12月25日)
  4. 日本感染症学会, COVID-19検査法および結果の考え方(2020年10月12日) 
    https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_kensakekka_201012.pdf

 
神戸市環境保健研究所感染症部
 野本竜平 中西典子 森 愛 岩本朋忠 
神戸市環境保健研究所COVID-19検査チーム
神戸市健康局保健所予防衛生課
 小寺有美香 尾崎明美

 

 

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