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中国武漢市からのチャーター便帰国者について:新型コロナウイルスの検査結果と転帰(第二報:第2便について)(2020年2月22日現在)

(速報掲載日 2020/4/7) (IASR Vol. 41 p78-79: 2020年5月号)

本稿では、「中国武漢市からのチャーター便〔第1便(患者1~5)〕帰国者について:新型コロナウイルスの検査結果と転帰(第一報:第1便について)」の続報として、第2便の帰国者について情報還元する。

2020年1月30日に武漢市からチャーター便(第2便)を利用して210人が帰国した(第2便帰国者)。このうち13人は何らかの症状が認められ、医療機関へ搬送された。この13人においては入院の上、1月30日に新型コロナウイルスのPCR検査が実施され、すべて陰性と判明した。全員症状軽快後に退院し、経過観察のための宿泊施設に入った。

医療機関へ搬送された13人を除く197人は1月30日に国立国際医療研究センター(NCGM)で問診と検査を受けた。197人のうち13人は症状を認めたことから入院となった。また、1人は翌日に肺炎を認めたため入院を継続し、2月4日に再度PCR検査を実施したところ陽性と判明した(患者6)。残りの12人はPCR検査を実施したところすべて陰性と判明し、症状軽快後、宿泊施設に入った。無症状の184人のうち2人がPCR検査陽性と判明し、入院となった(患者7,8)。残り182人のうち174人は宿泊施設に入った。また、8人は問診と検査を受け、PCR検査で陰性が確認された後、自宅に戻った。210人の第2便帰国者のうち帰国時点の陽性者は2人(1.0%)であった。

第2便帰国者の1人は帰国時には症状が無く、PCR検査は陰性であったが、その後、自宅での健康観察期間中に発症し、PCR検査で陽性となった(患者9)。この他に、患者9と同居し、患者9の発症後、自宅で健康観察を実施していた1人が帰国後22日目に発症、入院し、PCR検査で陽性が確認された(患者10)。

宿泊施設に滞在していた第2便帰国者199人(帰国当時症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った13人、NCGMで問診の際に症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った12人、無症状で宿泊施設に入った174人)は帰国後2週間の2月12日に2回目のPCR検査のための検体採取が行われた。PCR検査の結果、199人全員が陰性であった。

帰国後2週間の健康観察期間において、帰国後2日以内に陽性が確認された患者2人(患者7、8)と、帰国時に症状があり、入院期間中に陽性が確認された1人(患者6)、観察期間中に発症した1人(患者9)が判明した。患者10については、帰国後2週間の健康観察期間には発症をしなかったが、同居者(患者9)が発症した後の帰国後22日目に発症していたことから、患者9から帰国後の家庭内での感染伝播の可能性が示唆された。これら以外には2回のPCR検査で陽性者がいなかったことから、患者4人が2週間の観察期間中に確認され、1人が2週間以降に確認されたこととなった。帰国後の問診および陰性確認後に自宅に戻った6人においては、2回目の検査実施が現時点では保留されている。

陽性が確認された4人(以降の解析では患者10を除いている)の経過は、以下の通りである。1人は帰国時に発熱、咳嗽の症状を認めたが、PCR検査結果は陰性だった。翌日に呼吸苦症状が出現したため精査したところ、肺炎を認めたため入院を継続した。その後も症状が持続し、入院中の2月4日(帰国後6日目)に実施したPCR検査結果で陽性となった(患者6)。帰国時に無症状であった陽性例2人は入院し、1人は発症せず無症状で経過し(患者8)、他の1人は1月31日に発熱を認めたが、翌日に改善した(患者7)。帰国時は症状がなく、PCR検査結果も陰性であり、自宅で健康観察期間中に発症した陽性例2人のうち1人は、2月8日(帰国後10日目)に発熱、肺炎を認め、2月10日に採取された検体のPCR検査で陽性が確認された。これら入院した4例については、厚生労働省が示した退院基準(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf)に従って、入院後のPCR検査が実施されているところである。

陽性が確認された4人の年齢は30代が1人、40代が1人と50代が2人であった(男性3人、女性1人)。帰国者210人中193人は男性であった(年齢分布は表)。

まとめると、帰国後2週間以内に陽性が確認された4人のうち、1人は無症状病原体保有者で、1人は軽症者(発熱を発症したが、翌日に軽快)、2人は肺炎を認めた。経過中に症状を認めた3例のうち2例は帰国時のPCR検査結果は陰性であった。また、1人は帰国後2週間以内に発症した患者と発症時に同居をしており、その後2週間以降に発症(発熱や鼻汁等)し、PCR検査で陽性が確認され、家庭内での感染伝播の可能性が示唆された。第2便帰国者210人のうち、帰国後2週間時点で2回以上のPCR検査を実施した帰国者は203人であり、うち陽性者は4人(1.9%)であった。第1便帰国者206人のうち同様に帰国後2週間以内に2回のPCR検査を実施した202人の結果と併せると、405人のうちPCR検査結果が陽性だったのは9人(2.2%)であった。

 

参考文献
  1. 厚生労働省健康局結核感染症課 健 感 発 0 2 0 6 第 1 号 令 和 2 年 2 月 6 日 
    https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf
  
国立感染症研究所

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