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中国武漢市からのチャーター便帰国者について:新型コロナウイルスの検査結果と転帰(第三報:第3便について)および第1~3便帰国者のまとめ(2020年2月27日現在)

(速報掲載日 2020/4/7) (IASR Vol. 41 p79-80: 2020年5月号)

本稿では、中国武漢市からのチャーター便〔第1便および第2便(患者1~10)〕帰国者についての続報として、第3便の帰国者および第1~3便のまとめについて情報還元する。

2020年1月31日に武漢市からチャーター便(第3便)を利用して150人が帰国した(第3便帰国者)、このうち10人が何らかの症状を認め、医療機関へ搬送された。この10人においては、入院の上、1月31日に新型コロナウイルスのPCR検査用の検体が採取され、すべて陰性と判明した。

医療機関へ搬送された10人を除く140人は1月31日に国立国際医療研究センター(NCGM)で問診と検査を受けた。140人のうち15人は症状を認めたことから入院となった。1人は肺炎を認め、PCR検査結果で陽性であった(患者11)。残りの14人はPCR検査結果で陰性が判明し、他疾患で入院継続となった1人を除き、症状軽快後に宿泊施設に入った。無症状の125人のうち1人はPCR検査結果が陽性と判明し、入院となった(患者12)。残り124人のうち122人は宿泊施設に入った。また、2人は問診と検査を受け陰性が確認された後に自宅に戻った。150人の帰国者のうち帰国時点の陽性者は2人(1.3%)であった。

宿泊施設に滞在していた第3便帰国者145人(帰国当時症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った10人、NCGMで問診の際に症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った13人、無症状で宿泊施設に入った122人)のうち1人は施設滞在中に鼻汁、咳嗽、咽頭痛を呈したが、PCR検査結果で陰性と判明し、退院後、再び施設に戻った。残りの144人について症状出現は認めず、施設に戻った1人を含め、2月13日に帰国後2週間に2回目のPCR検査のための検体採取が行われた。PCR検査の結果、144人が陰性であったが、1人が陽性となった(患者13)。

帰国後2週間の健康観察期間において、帰国後2日以内に陽性が確認された患者2人(患者11、12)と、帰国後2週間のPCR検査で陽性になった患者1人が判明した(患者13)。これら以外には2回のPCR検査で陽性者がいなかったことから、計3人の患者が2週間の観察期間中に確認されたこととなった。帰国後の問診および陰性確認後に自宅に戻った2人においては、2回目の検査実施が現時点では保留されている。

帰国後2週間以内にPCR検査陽性が確認された3人の経過は、以下の通りである。1人は帰国時に発熱、咳嗽の症状、肺炎を認め入院し、PCR検査結果が陽性と判明した(患者11)。1人は帰国時に無症状であったがPCR検査結果が陽性のため入院し、その後も発症せず無症状で経過した(患者12)。帰国時は症状がなく、PCR検査結果も陰性であった1人はその後も症状なく経過したが、帰国後2週間のPCR検査で陽性が判明し、入院となった(患者13)。以上、入院した全3人については、厚生労働省が示した退院基準(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf)に従って、入院後のPCR検査が実施されているところである。

陽性が確認された3人の年齢は30代が1人、40代が1人と60代が1人であった(男性2人、女性1人)。帰国者150人中143人は男性であった(年齢分布は表1)。

第3便の帰国者についてまとめると、帰国後2週間までに陽性が確認された3人のうち、2人は無症状病原体保有者で、1人は肺炎を認めた。帰国後2週間までに、2回以上のPCR検査を実施した帰国者は147人であり、うち陽性者は3人(2.0%)であった。

これまで出された還元情報と併せて、第1~3便までの帰国者についてまとめると、チャーター便により566人が帰国し、それぞれ帰国後2週間以内に2回以上のPCR検査が実施されたのは552人(98%)(帰国後2週間以上経たのちに発症した患者10を含まない:第2報参照)であった。このうち陽性が確認されたのは12人(2.2%)であり、うち4人は無症状病原体保有者であり、6人に肺炎を認めた。2人は発熱や咳嗽等の軽度な症状を発症していた(年齢分布は表2)。

第1~3便までのチャーター便帰国者566人については、20代~50代が525人と全体の93%を占めていた。PCR検査陽性患者は、発症患者と同居し、帰国後2週間以降に発症した10歳未満のPCR陽性患者(詳細は第2報参照)を除いて、30代以上であった。無症状病原体保有者はPCR陽性患者の33%を占めており、肺炎を呈した患者は50%だった。なお、現時点でチャーター便帰国者の中に死亡者は認めていない。

症状の有無を問わず帰国時に全員に検査が実施され、また2週間経過をフォローした(受診行動や医師の判断等の影響を受けない)これらの結果は、新型コロナウイルス感染の臨床像を理解する上にも重要な情報である。

 

参考文献
  1. 厚生労働省健康局結核感染症課 健 感 発 0 2 0 6 第 1 号 令 和 2 年 2 月 6 日 
    https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf
 
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