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中国武漢市からのチャーター便帰国者について:新型コロナウイルスの検査結果と転帰(第四報:第4、5便について)および第1~5便帰国者のまとめ(2020年3月25日現在)

(速報掲載日 2020/4/10) (IASR Vol. 41 p80-82: 2020年5月号)

本稿では、中国武漢市からのチャーター便〔第1~3便(患者1~13)〕帰国者についての続報として、第4、5便の帰国者および第1~5便のまとめについて情報還元する。

第4便

2020年2月7日に、武漢市からチャーター便(第4便)を利用して198人が帰国した(第4便帰国者)。このうち4人が、検疫時に咳、発熱等の症状を認め、医療機関へ搬送された。この4人においては、入院の上、2月7日に新型コロナウイルスのPCR検査用の検体が採取され、すべて陰性と判明した。

医療機関へ搬送された4人を除く194人は2月7日に国立国際医療研究センター(NCGM)で問診と検査を受けた。194人のうち8人は症状を認めたことから入院となった。1人は肺炎を認め、PCR検査結果で陽性が判明した(患者14)。無症状の186人においては、PCR検査結果がすべて陰性と判明し、宿泊施設に入った。検疫時、あるいはNCGMの問診で症状を認めたが陰性であった計11人においては、他疾患で2人は入院継続となったが、その他9人は症状軽快後に経過観察のため宿泊施設に入った。198人の帰国者のうち帰国時点の陽性者は1人(0.5%)であった。

宿泊施設に滞在していた第4便帰国者195人(帰国当時、あるいはNCGMの問診の際に症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った9人、無症状で宿泊施設に入った186人)について症状出現は認めず、2月21日に帰国後2週間に2回目のPCR検査のための検体採取が行われた。PCR検査の結果、195人の全員が陰性であった。他疾患で入院中の2人においてもPCR検査が行われ、陰性であった。

第4便の帰国者についてまとめると、帰国後2週間までに、2回以上のPCR検査を実施した帰国者は198人全員であり、うち陽性者は1人(0.5%)であった。当患者は、20代の男性であった〔帰国者198人中93人は男性であった(年齢分布は表1)〕。当患者は、検疫実施時には症状を認めなかったが、NCGMの問診時に発熱を認め、PCR検査を行ったところ、陽性と判明し入院となった。また、肺炎も判明した。入院した当患者については、厚生労働省が示した退院基準(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf)に従って、入院後のPCR検査が実施されているところである(3月25日現在)。

第5便

2020年2月17日に、武漢市からチャーター便(第5便)を利用して65人が帰国した(第5便帰国者)。このうち2人が、検疫時に咳や咽頭痛等の症状を認め、医療機関へ搬送された。この2人においては、入院の上、2月17日に新型コロナウイルスのPCR検査用の検体が採取され、1人が陽性であった(患者15)。

医療機関へ搬送された2人を除く63人は2月17日に国立国際医療研究センター(NCGM)で問診と検査を受けた。63人のうち5人は症状を認めたことから入院となった。この5人においては、入院の上、2月17日に新型コロナウイルスのPCR検査用の検体が採取され、すべて陰性と判明した。無症状の58人においても、PCR検査結果がすべて陰性と判明し、宿泊施設に入った。検疫時、あるいはNCGMの問診で症状を認めたが陰性であった計6人においては、他疾患で1人は入院継続となったが、その他5人は症状軽快後に経過観察のため宿泊施設に入った。65人の帰国者のうち帰国時点の陽性者は1人(1.5%)であった。

宿泊施設に滞在していた第5便帰国者63人(帰国当時、あるいはNCGMの問診の際に症状を認め症状軽快後に宿泊施設に入った5人、無症状で宿泊施設に入った58人)について症状出現は認めず、3月2日に帰国後2週間に2回目のPCR検査のための検体採取が行われた。PCR検査の結果、63人の全員が陰性であった。他疾患で入院中の1人においてもPCR検査が行われ、陰性であった。

第5便の帰国者についてまとめると、帰国後2週間までに、2回以上のPCR検査を実施した帰国者は65人全員であり、うち陽性者は1人(1.5%)であった。当患者は、50代の男性であった〔帰国者65人中、年齢性別が把握できているのは62人であり、そのうち35人は男性であった(年齢分布は表2)〕。当患者は、検疫時に症状を認め、PCR検査を行ったところ、陽性と判明し入院となった。数日後、発熱と軽い呼吸器症状を認めた。入院した当患者については、厚生労働省が示した退院基準(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf)に従って、入院後のPCR検査が実施されているところである(3月25日現在)。

これまで出された還元情報と併せて、第1~5便までの帰国者についてまとめると、チャーター便により829人が帰国し、それぞれ帰国後2週間以内に2回以上のPCR検査が実施されたのは815人(98%)(帰国後2週間以上経たのちに発症した患者10を含まない:第2報参照)であった。このうち帰国後2週間以内に陽性が確認されたのは14人(1.7%)であり、うち4人は無症状病原体保有者であり、7人に肺炎を認めた。3人は発熱や咳嗽等の軽度な症状を発症していた(年齢分布は表3)。

第1~5便までのチャーター便帰国者については、50代~60代の陽性割合が比較的高く、小児においては低かった(表3)。無症状病原体保有者はPCR陽性患者の29%を占めており、肺炎を呈した患者は50%だった。なお、現時点でチャーター便帰国者の中に死亡者は認めていない。

症状の有無を問わず帰国時に全員に検査が実施され、また2週間経過をフォローした(受診行動や医師の判断等の影響を受けない)これらの結果は、新型コロナウイルス感染の臨床像を理解する上にも重要な情報である。

 

参考文献
  1. 厚生労働省健康局結核感染症課 健 感 発 0 2 0 6 第 1 号 令 和 2 年 2 月 6 日 
    https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000592995.pdf 
 
国立感染症研究所

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