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新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの報告による、2020年8月23日時点での我が国における新型コロナウイルス感染症の状況についてお知らせいたします。

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直近の感染状況等(2020年8月23日現在)

〇 新規感染者数の動向

  • 全国の発症時点で見た感染状況は、7月末がピークになっているように見え、主要都市の実効再生産数は、足元で1を下回っている。
  • 都道府県による自粛要請への協力などもあってか、新規感染者数は全国的にやや減少に転じたが、急速に増加した地域もあり、感染者数の動向は地域差がある。

・人口10万人当たりの1週間の累積感染者数(8/16~8/22) 

 全国 5.42人(6,834人)、東京都 11.97人(1,667人)、愛知県 6.37人(481人)、大阪府 11.65人(1,026人)、福岡県 9.74人(497人)、沖縄県 21.20人(308人)

・感染経路が特定できない症例の割合(8/8~8/14) 全国 52%、東京都 63%

〇 入院患者数の動向

  • 入院者数は依然として高い水準が続いている。受入確保病床に対する割合(括弧内)も同様であり、特に一部地域では増加が続き、高水準となっている。

・入院者数(8/19):全国 5,973人(26.2%)、東京都 1,665人(50.5%)、愛知県 352人↑(44.5%)、大阪府 561人↑(44.6%)、福岡県 309人↑(63.1%)、沖縄県 375人↑(84.7%)

  • 重症者数は7月上旬以降増加傾向にあるが、4月頃のピーク(381人(4/28))には達していない。重症者受入確保病床数に対する割合(括弧内)は、2週間前(8/5:117人(4.2%))と比べると倍増した。特に東京以外の地域に増加傾向が見られる。

・重症者数(8/19):全国 260人↑(9.0%)、東京都 41人↑(10.3%)、愛知県 15人↑(21.4%)、大阪府 65人↑(34.6%)、福岡県 22人↑(36.7%)、沖縄県 14人↑(29.8%)

〇 検査体制

  • 検査件数に変動はあるが、週ごとの検査件数に対する陽性者の割合は、4週続けて6%前後で推移。緊急事態宣言時(4/6~4/12の8.8%)と比較すると引き続き低位である。

・検査数(8/10~8/16):全国 124,352件、東京都 28,074件、愛知県 5,535件、大阪府12,718件、福岡県 10,525件、沖縄県 4,768件

・陽性者の割合(8/10~8/16):全国 5.9%(前週比+0.1%ポイント)、東京都 6.6%(+1.1%ポイント)、愛知県 10.9%(-2.1%ポイント)、大阪府8.5%(-0.5%ポイント)、福岡県 5.9%(-1.4%ポイント)、沖縄県 10.3%(+0.6%ポイント)

直近の感染状況の評価等

感染状況について

  • 都道府県による自粛要請への協力などもあり、全国の発症日別のエピカーブや実効再生産数から判断すると、今回の感染拡大についての全国の発症日のピークは7月27~29日頃と考えられる。
  • 一部の地域では、新規感染者数は緩やかに減少を始めていると考えられ、東京、大阪、愛知、沖縄の実効再生産数を見ても、8月上旬には1を下回っていることが確認されている。しかし、引き続き1に近い値が続いており、再拡大に向けた警戒が必要な状況であるとともに、今後も減少傾向が続くかどうかががはっきりしない地域もある。
  • 3~5月の流行と異なり、中高年層の割合が低い状況が続いていたが、8月に入り、感染者数に占める中高年層の割合は上昇傾向にある。
  • また、3〜5月の感染拡大でも重症者・死亡者数は新規感染者数のピークから遅れて増加したが、重症者の状況については、大阪、沖縄、愛知、福岡県などで増加傾向にある。
  • 一方、3~5月の流行では、感染拡大のピークを過ぎてから病院や高齢者施設での感染が多発したが、6月下旬以降の流行では、感染予防や感染拡大防止に向けたマネジメント技術が向上したためか、院内・施設内での流行は少ない傾向にあり、首都圏などでは「大規模な」院内・施設内感染の発生は減少していることがうかがわれる。
  • また、感染経路等については、不明の割合が高水準で推移しているとともに、お盆期間中の人の移動もあり、さらに感染拡大が再発するリスクは常にある。
  • このため、引き続き、「3密」や大声を上げる環境の回避、室内でのマスクの着用、フィジカル・ディスタンスの徹底、換気の徹底など、基本的な感染予防対策の実施や、院内・高齢者施設における施設内感染対策、クラスターが起きた場合の早期対応など、これからも必要な対策を継続すべきである。
  • また、こうした基本的な感染対策が行われていれば、近隣のスーパーでの買い物や通勤時の公共交通機関などで感染が拡大する状況ではないと考えられる。

医療提供体制の確保の必要性について

  • 新規感染者や重症者の継続した発生や増加により、保健所や医療機関の対応には既に悪影響が生じており、一部地域では医療提供体制ひっ迫の懸念が見られる。公衆衛生体制、検査体制、医療提供体制の更なる充実に取り組むとともに、新規感染者数を減少させるための対応や地域の実情に応じた支援が引き続き求められる状況となっている。
  • 引き続き、感染状況の監視・評価を継続するとともに、地域の実情に応じ、病床の拡充や宿泊療養施設の確保など、十分な医療提供体制を確保していく必要がある。
  • また、宿泊施設の受入可能人数の状況等を踏まえ、宿泊療養による対応が難しい場合等においては、軽症・無症状者で重症化リスクの低い患者が自宅療養を適切に受けられる体制(体調悪化への対応、食事対応等を含む)を検討・整備するなどにより、医療提供体制を適切に確保する必要がある。

今回の感染拡大において重症者数の増加が穏やかであることについて

  • 3、4月と比べ感染者数の増加に対して、重症者数の増加が緩やかである点については、若年層が多いことだけでなく、
    ①早期に診断がされ、発症から入院までの期間が短縮していることや
    ②治療法の標準化が一定の効果を上げている可能性も考えられるが、
    いずれも現時点では、十分なエビデンスを得るには至っていない。 引き続き、重症者数の推移を監視していく必要がある。
  • 同一年齢階級で見た場合の3、4月との重症化率の違いは、
    ①サーベイランス感度が高まり、より多くの感染者が確認できるようになったこと(P12,13参照)
    ②そうした中で、感染者に占める併存疾患の保有状況が異なっていること(P7等参照)
    が要因として推定されている。 このうち、②の併存疾患の保有状況が異なっている要因としては、医療機関や高齢者施設における「大規模クラスター」の発生が減少している可能性などが考えられるが、引き続き解析を行っていくことが必要である。

 第6回アドバイザリーボード(2020年8月24日、厚生労働省)資料4より抜粋(PDF)

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