国立感染症研究所

第11回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年10月22日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第11回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)。

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直近の感染状況等

〇新規感染者数の動向

  • 新規感染者数は、全国的に見ると、 8月第1週をピークとして減少が続いた後、ほぼ横ばいから微増傾向となっており、感染の「増加要因」と「減少要因」が拮抗していると見られる。
  • 多くの都道府県で大幅な増加がみられない一方で、急激な減少もみられない状況は続いているが、感染が高止まりしている地域や、増加がみられる地域、地方都市における繁華街や接待を伴う飲食店を起因とするクラスターの発生などが生じている。
  • 実効再生産数は、東京、大阪、北海道、沖縄などで1をはさんで前後しており、直近1週間の平均は1を超える地域が多い。全国的には、1に近い水準が続いている。
    ・人口10万人当たりの1週間の累積感染者数(10/7~10/13、10/14~20)
    全国( 2.84人(3,585人↑)、2.95人(3,716人↑))、東京都 (8.85人(1,232人↑)、8.83人(1,229人↓))、愛知県 (1.56人(118人↓)、1.75人(132人↑))、大阪府 (3.97人(350人↓)、4.21人(371人↑))、福岡県 (1.00人(51人↑)、0.84人(43人↓))、沖縄県(9.50人(138人↓)、14.38人(209人↑))
    ・感染経路が特定できない症例の割合(10/10~10/16) 全国 49.0%(前週差4.6%ポイント↓)、東京都 55.9%(4.6%ポイント↓)

〇入院患者数の動向(※)

  • 入院者数は、8月下旬以降減少傾向となっていたが、直近では増加に転じている。受入確保病床に対する割合(括弧内)は横ばいとなっているが、一部地域ではやや高水準となっている。
    ・入院者数(10/14):
    全国 3,064人↑(11.5%)、東京都 1,146人↑(28.7%)、愛知県 87人↓(11.0%)、 大阪府 217人↓(15.9%)、福岡県 40人↓(7.3%)、沖縄県 160人↑(36.5%)
  • 重症者数は、8月下旬以降減少傾向となっていたが、直近では増加がみられ、下げ止まりの状況となっている。
    ・重症者数(10/14):
    全国 317人↑(9.2%))、東京都 135人↑(27.0%)、愛知県 10人↓(14.3%)、大阪府45人↑(12.7%)、福岡県 7人↑(7.8%)、沖縄県 25人↓(43.9%)

〇検査体制

  • 検査件数に変動はあるが、直近の検査件数に対する陽性者の割合は2.8%であり、緊急事態宣言時(4/6~4/12の8.8%)と比較すると引き続き低位である。
    ・検査数(10/5~10/11、10/12~10/18):
    全国 (129,212件↓、131,554 件↑)、東京都 (36,339件↓、35,215件↓)、愛知県 (3,479件↓、3,998件↑)、大阪府(9,131件↓、9,972件↑)、沖縄県 (2,875件↑、3,627件↑)
    ・陽性者の割合( 10/5~10/11、10/12~10/18 ) :
    全国 (2.8%(前週差0.2%ポイント↑)、2.8%(0.0%ポイント→)、東京都 (3.4%(0.2%ポイント↑) 、3.6%(0.2%ポイント↑))、愛知県 (2.9%(0.5%ポイント↓)、3.7%(0.8%ポイント↑))、大阪府(3.8%(0.3%ポイント↑)、3.6%(0.2ポイント↓))、沖縄県 (5.3%(2.6%ポイント↓)、5.0%(0.3%ポイント↓))

※「入院患者数の動向」は、厚生労働省「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査」による。この調査では、記載日の0時時点で調査・公表している。

重症者数については、8月14日公表分以前とは対象者の基準が異なる。↑は前週と比べ増加、↓は減少、→は同水準を意味する。

直近の感染状況の評価等

<感染状況について>

  • 新規感染者数は、全国的に見ると、8月第1週をピークとして減少が続いた後、ほぼ横ばいから微増傾向となっており、感染の「増加要因」と「減少要因」が拮抗していると見られる。また、首都圏では感染が減少の動きとならないことが、全国において継続的な減少がみられない状況の要因と考えられる。
    増加要因:なるべく「普通の生活」に戻りたいという気持ちが社会で醸成され、人々の活動が活発化していること。そうした中、クラスター発生の場面も多様化していること など
    減少要因:感染リスクの高い場面が明らかになりつつあり、人々が感染リスクの高い場所・行動を控えていること。一方、クラスターが発生した場合でも、これまでの経験を活かし、関係者が迅速かつ効果的な対応をとってきたこと など
  • また、地域ごとの動きにも留意することが必要である。 多くの都道府県で大幅な増加がみられない一方で、急激な減少もみられない状況は続いているが、感染が高止まりしている地域や増加がみられる地域、地方都市における繁華街や接待を伴う飲食店を起因とするクラスターの発生などがあり、拮抗しているバランスがいつ崩れてもおかしくなく、今後の感染の動向に留意が必要である。

<今後の対応について>

  • これまで国内で感染拡大のきっかけとなってきた接待を伴う飲食店などのリスクの高い場における積極的な対応を継続していくとともに、クラスターが生じている会食や職場等での感染予防対策の再確認・徹底が必要がある。
  • 特に、地方都市の歓楽街や共同生活など特定の生活習慣を有するコミュニティなどでクラスターが生じるなど、その態様が多様化しつつある。大学での対面授業再開に伴う学生の行動の活発化などを含めて、これまでと異なる場が感染拡大の端緒となる可能性もあり、対象者の特性に応じた情報提供や地域の関係者を幅広く積極的に検査するなど大規模クラスターやクラスター連鎖が発生しないよう早期かつ適切な対応が求められる。その際には、院内・高齢者施設における感染対策と面会のバランスをとりつつ、重症者・死亡者を抑えていくことも必要である。
  • 併せて、社会活動の活性化が見込まれる中で、引き続き、「3密」や大声を上げる環境の回避、室内や人と接触する環境でのマスクの着用(フェイスシールド、マウスシールドはマスクに比べ効果が弱いことに留意が必要)、フィジカル・ディスタンスの徹底、換気の徹底など、基本的な感染予防対策の徹底が重要であるが、クラスターの分析を踏まえ、感染リスクが高まる飲食の場面などをはじめ、具体的な行動のリスクやリスクを低減する工夫を、国民に分かりやすく説明することが必要である。
  • こうした取組により、感染が拮抗した状況を引き下げる努力が必要であり、その際どうした水準を目指すべきかや、定量的な分析は必要であるが、人の移動に伴い感染が生じることが想定される中で、年末年始も含めた対応についても検討を進めることが必要である。

 感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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