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下痢原性大腸菌に関するアンケート調査結果報告
(Vol. 33 p. 4-5: 2012年1月号)
本アンケート調査は、2010(平成22)年5月25日、鹿児島市で開催された衛生微生物技術協議会第31回研究会・細菌情報交換会に合わせて実施し、その席上で報告した。概要を以下に示す。

下痢原性大腸菌には、臨床的意義も高く明確に定義された腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管侵入性大腸菌(EIEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)と、臨床的意義や定義も曖昧な病原性に関連する因子(主に細胞付着性因子)を保有する病原血清型大腸菌(EPEC)、腸管凝集付着性大腸菌(EAEC/EAggEC)、分散付着性大腸菌(DAEC)などに分けられる。

NESID(感染症サーベイランスシステム)の病原体検出情報システムでは、ETEC、EIEC、EHECは、保有病原因子などの報告が求められていることに対して、細胞付着性に関する大腸菌はEPECまたは「他の下痢原性大腸菌」としてO血清型のみの報告にとどまり、判断の根拠とした細胞付着能や病原性関連因子などの報告は必須ではない。

これらのことから、特にEPECをはじめとする付着性大腸菌に関して、何をどこまで検査すれば良いのか、他の施設ではどのように実施しているのか、その判定基準は?、等々、各地方衛生研究所(地研)間でも大腸菌に関する検査方法や判定基準に違いを感じることから、現状を知る目的で全国の地研を対象にアンケート調査を実施した(回答施設数66/対象施設数77、回答率85.7%)。

結果は表1表2表3および表4のとおり。自由意見では検査方法や判定基準に関することが最も多かった(26施設)。

まとめ
 ・下痢原性大腸菌の中でも、EPECまたはその他の大腸菌のカテゴリーでは、地研間で検査方法や判断基準および検査の実施に差があった。
 ・大腸菌が原因菌であると判断する根拠の優先順位は、一定の傾向は示したものの、判定基準には地研間の相違を認めた。
 ・EPECまたはその他の大腸菌に関して、標準的な検査方法や判定基準の整備を求める意見が多かった。

鹿児島県立薩南病院検査部 上野伸広
川薩保健所健康企画課 吉國謙一郎
鹿児島県環境保健センター微生物部
浜田まどか 蓑田祥子 上村晃秀 御供田睦代 藤崎隆司
国立感染症研究所感染症情報センター 伊藤健一郎

 



 
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