国立感染症研究所 実地疫学研究センター
同 感染症疫学センター
同 寄生動物部
2024年12月2日現在
(掲載日:2025年3月12日)
本稿は、2020年6月に掲載された2014年~2019年のアメーバ赤痢の届出状況1を更新するものである。アメーバ赤痢の臨床的特徴や検査診断方法、2018年以前の届出状況については参考文献1,2を参照いただきたい。
アメーバ赤痢は感染症法に基づく5類全数把握疾患であり、診断した医師は7日以内に届け出ることとされている。無症状病原体保有者は届出の対象外である。感染症法に基づく感染症発生動向調査では、2014年から2017年まで年間報告数が1,000例を超えていたが、2018年、2019年は800例台で推移していた1。
今回、2019年第1週から2024年46週まで(2023年、2024年は、2024年11月26日時点暫定値)に診断された症例について、感染症発生動向調査の届出をまとめた。年間報告数は、2019年以降減少傾向で、2023年、2024年(第46週まで)は400例台で推移している。(図1)。
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2019年第1週から2024年第46週までに合計3,483例が報告された。
報告都道府県別にみると、東京都、神奈川県、大阪府、神奈川県、愛知県等、従来同様、大都市を抱える人口の多い都府県からの報告数が多かった。
表に、各年の届出例の情報をまとめた。2019年第1週から2024年46週までで、症例の診断時年齢の中央値は約55歳で、性別は男性が86~92%と多かった。
病型は腸管アメーバ症が90~93%と最も多く、その割合の年次推移はほぼ横ばいであった。 感染経路は、経路不明、性的接触感染単独、経口感染単独の順で多く、それぞれの割合の年次推移は53~61%、22~28%、13~19%とほぼ横ばいであった。
診断方法は、鏡検による病原体の検出が各年とも90~95%と最も多かった。PCR法による病原体遺伝子の検出の割合は2019年から増加傾向にある。ELISAによる抗原検出は1%前後で推移した。イムノクロマト法(IC)による検査については、2021年に抗原検出キットが保険適用となった3。2022年以降7例で使用されていた(表)。
感染地域別では、各年とも国内感染が64~68%、国外感染が6~11%、国内国外不明が23~30%で推移しており、過去(2007年第1週~2016年第43週まで)の報告で、国内感染83%、国外感染14%、国内国外不明3%であった状況2と比較し、国内感染例の割合が低く、国内国外不明の割合が高くなっていた。近年の感染症発生動向調査におけるアメーバ赤痢報告数の減少した原因は明らかではなく、慎重な解釈が必要である1,4。
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参考文献
- 国立感染症研究所 感染症法に基づくアメーバ赤痢の届出状況、2014年~2019年.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/entamoeba-histolytica-m/entamoeba-histolytica-idwrs/9653-amebiasis-200604.html - 国立感染症研究所 アメーバ赤痢、2007年第1週~2016年第43週.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/entamoeba-histolytica-m/entamoeba-histolytica-iasrtpc/6941-442t.html - 厚生労働省 臨床検査の保険適用について(令和3年7月収載予定).
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000795285.pdf - 衛生微生物技術協議会第39回研究会(滋賀)レファレンスセンター等報告.
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/reference/H30_Parasitology.pdf