国立感染症研究所

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下痢のみを主症状とした乳児集団感染性胃腸炎事例からのコクサッキーウイルスB5型とヒトパレコウイルス1型の検出―大阪府

(掲載日 2015/10/14)  (IASR Vol. 36 p. 229: 2015年11月号

大阪府内の保育園において下痢を主症状とする集団感染性胃腸炎が発生し、患者からコクサッキーウイルスB5型(CVB5)とヒトパレコウイルス1型(HPeV-1)を検出したので報告する。

2015年8月11日、0歳児クラス(15名)で2名の下痢発症患児を認めた。その後19日には0歳児クラスでさらに4名が下痢症状を呈し、20日、1歳児クラスでも1名に下痢症状の患者が発生した(累積患者数7名)。そこで、0歳児4検体、1歳児1検体の計5検体の検便を実施した。保健所検査課におけるノロウイルス検査(栄研化学Loopamp® ノロウイルス検出キット)は陰性であったため、大阪府立公衆衛生研究所においてその他ウイルスの検索を実施した。ロタウイルスAおよびC、アデノウイルス40/41、サポウイルス、アストロウイルスは全例陰性であった。夏季であること、患者が0歳児に集中していたこと、症状が下痢のみの患者がほとんどであったことから、エンテロウイルス(EV)およびヒトパレコウイルス(HPeV)に対するRT-リアルタイムPCRを実施した1,2)

その結果、5名中4名からEVおよびHPeVが検出された。HPeVが検出された4名はすべて0歳児クラスの患者で、EVが検出されたのは0歳児クラスの3名と1歳児クラスの1名であった。その後、型別のためEVおよびHPeVのVP1領域に対するRT-nested PCR3,4)を実施した。HPeV VP1はRT-リアルタイムPCR陽性例ですべて増幅が確認された。EV VP1はRT-リアルタイムPCRで陽性であった検体のうち1検体では遺伝子の増幅が認められなかったが、陰性であった0歳児の検体から検出された()。最終的に、0歳児クラスの患者4名全員からEVとHPeVの両方が検出された。増幅産物に対し、ダイレクトシーケンスを実施しBLAST検索を試みたところ、0歳児クラスの4名すべてのHPeVは1型、3名のEVはCVB5と同定された。1歳児クラスの患者1名のEVはエコーウイルス18型と同定された。これらの結果より、0歳児クラスの感染性胃腸炎の原因ウイルスはCVB5およびHPeV-1であったと推測された。なお、9月1日時点で0歳児クラスの累積患者数は15名中8名で、うち1名にはまだ下痢症状があったと報告されている。

乳幼児における感染性胃腸炎の原因ウイルスとしては、ノロウイルスやロタウイルスAが代表的であるが、これらのウイルスが原因の場合、下痢の他にも発熱や嘔吐の症状があることが多い。本事例における症状は主に下痢のみであり、有症期間が1週間以上にわたっていた。重感染が長期化の一要因であったことが推察された。一方で、大阪府内で2015年2月に発生した0歳児で下痢のみを主症状とし、ノロウイルスを始めとする代表的な下痢症ウイルスが検出されなかった事例に対し、同様にEVおよびHPeVの検索を実施したが、すべて陰性であった。代表的な乳児感染性胃腸炎の原因ウイルスが検出されない、夏季の集団感染性胃腸炎の原因検索にはEVやHPeVの検索も加える必要があるかもしれない。

 
参考文献
  1. Osterback R, et al., J Clin Microbiol 51: 3960-3967, 2013
  2. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 46: 2519-2524, 2008
  3. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006
  4. Nix WA, et al., J Clin Virology 48: 202-207, 2010
大阪府立公衆衛生研究所感染症部
 中田恵子 左近直美 弓指孝博 加瀬哲男
大阪府寝屋川保健所
 松尾由美
 

 

最終更新日 2015年11月24日(火曜)17:50

参照数: 25425

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