国立感染症研究所

3

国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室

全国地方衛生研究所

遺伝子系統樹
 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室が解析した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子配列を用いて、HA遺伝子系統樹を作成した。国内外で流行しているウイルスと比較するため、各地方衛生研究所にて分離された株の遺伝子配列だけではなく、海外で分離された株の遺伝子配列も解析に加えている。なお、海外の研究機関で解析された遺伝子配列はインフルエンザウイルス遺伝子データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data:http://platform.gisaid.org/epi3/frontend)から入手している。 
2018/2019シーズン系統樹(データ更新日:2018年11月14日)NEW

A(H1N1)pdm09:流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N, S162N, I216T)内のS74R, I164T, I295V群に属していた(図1)。さらにS183Pを含むいくつかの群、T120A群、L161I, I404M群など複数の集団を形成した。NAタンパク質にH275Y置換を有するオセルタミビル耐性株は散発的に検出されているが、耐性株の流行は確認されていない。

A(H3N2):最近の流行株のほとんどはHA遺伝子系統樹上のサブクレード3C.2a(L3I, N144S, F159Y, K160T, Q311H, D489N、代表株:A/Hong Kong/4801/2014)に属している(図2)。3C.2a内にはサブクレード3C.2a1(N171K, I406V, G484E、代表株:A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016)、3C.2a2(T131K, R142K, R261Q)、3C.2a3(N121K, S144K)、3C.2a4(N31S, D53N, R142G, S144R, N171K, I192T, Q197H)が形成されている。3C.2a1はさらに、3C.2a1a(N121K, G479E, T135K, N122D)、3C.2a1b(N121K, K92R, H311Q)に分岐し、3C.2a1b内には3C.2a1b+135K(E62G, R142G, T135K)および3C.2a1b+135N(T135N)が、3C.2a2内にはA212T群が形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。

B (ビクトリア系統):流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード1A(共通アミノ酸置換N75L、N165K, S172P、代表株:B/Brisbane/60/2008、B/Texas/02/2013)内の、N129D, I117V, V146Iを有する集団に属していた(図3)。その中で複数の群が形成されており、遺伝子的には多様化が進んでいる。クレード1Aの中で、抗原性変異を示すサブクレード1A.1[共通アミノ酸置換I180V, R498Kおよび2アミノ酸欠損(162, 163)、代表株:A/Maryland/15/2016]に属するウイルスの数が増えており、今後の流行が注目される。

B (山形系統):流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード3(共通アミノ酸置換S150I, N165Y, N202S, S229D)内でB/Phuket/3073/2013株を代表とする群(共通アミノ酸置換N116K, K298E, E312K)内のL172Q, M251V群に属した(図4)。また、共通アミノ酸を持たない集団も多く形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。

  
 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version