国立感染症研究所

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国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室

全国地方衛生研究所

遺伝子系統樹
 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室が解析した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子配列を用いて、HA遺伝子系統樹を作成した。国内外で流行しているウイルスと比較するため、各地方衛生研究所にて分離された株の遺伝子配列だけではなく、海外で分離された株の遺伝子配列も解析に加えている。なお、海外の研究機関で解析された遺伝子配列はインフルエンザウイルス遺伝子データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data:http://platform.gisaid.org/epi3/frontend)から入手している。 

2018/2019シーズン系統樹(データ更新日:2019年6月7日)NEW

(図2データ修正:2019年6月24日)

A(H1N1)pdm09:国内株はHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N, S162N, I216T)内の6B.1A(S74R, I164T, I295V)に属していた(図1)。さらにS183Pを含む複数の群[183P-1:N451T, 1.1%、183P-2:L233I, 22.3%、183P-4:N129D+A141E, 4.3%、183P-5:N260D, 49.5%、183P-6:T120A, 2.7%、183P-7:K302T+I404M, 11.7%]、およびT120A群 (5.3%)、L161I+I404M群 (2.7%)など複数の集団を形成した。各群の株に抗原性の違いは検出されていない。NAタンパク質にH275Y置換を有するオセルタミビル耐性株は散発的に検出されているが、耐性株の流行は確認されていない。

 

A(H3N2)国内株は全て、HA遺伝子系統樹上のサブクレード3C.2a(L3I+N144S+F159Y+K160T+Q311H+D489N、代表株:A/Hong Kong/4801/2014)に属していた(図2)。解析株のほとんどは3C.2a内のサブクレード3C.2a1(N171K+I406V+G484E、代表株:A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016, 86.7%)、または3C.2a2(T131K+R142K+R261Q, 12.7%)に属し、1株のみ3C.2a3(N121K+S144K, 0.6%)に属した。3C.2a1はさらに、3C.2a1a(N121K+G479E+T135K+N122D)、3C.2a1b(N121K+K92R+H311Q)に分岐する。しかし解析された3C.2a1株は全て3C.2a1b内の3C.2a1b+135K (3C.2a1b+E62G+R142G+T135K, 8.5%)群、3C.2a1b+135N群 (1.2%)、あるいは3C.2a1b+131K (E62G+T131K+V529I, 77.5%)群に属した。なお、欧米では3C.2aとは抗原性が異なる3C.3aに属するウイルスが急増しているが、国内ではこれまで検出されていない。そのため今後の流行状況の変化に注視する必要がある。

 

B (ビクトリア系統):海外を含めて今シーズンの流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード1A(共通アミノ酸置換N75L, N165K, S172P、代表株:B/Brisbane/60/2008、B/Texas/02/2013)内の、N129D+I117V+V146Iを有する集団に属していた(図3)。クレード1A内には、抗原性変異を示すサブクレード1A.1[共通アミノ酸置換I180V+R498K+2アミノ酸欠損(162, 163番目のアミノ酸)、代表株:A/Maryland/15/2016]および、K136E+3アミノ酸欠損(162〜164番目のアミノ酸)群が検出されている。国内では、クレード1Aに属するアミノ酸欠損を持たない株、クレード1A.1株、およびシーズン後半には3アミノ酸欠損株も検出され、3群のウイルスが混在している。

 

B (山形系統)解析できた流行株はわずかだが、HA遺伝子系統樹上のクレード3(共通アミノ酸置換S150I, N165Y, N202S, S229D)内でB/Phuket/3073/2013株を代表とする群(共通アミノ酸置換N116K, K298E, E312K)内のL172Q+M251V群に属した(図4)。

  
 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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