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インフルエンザ抗体保有状況 -2022年度速報第1報- (2022年11月30日現在) |
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はじめに 感染症流行予測調査事業における「インフルエンザ感受性調査」は、毎年、当該シーズンのワクチン接種前・流行前の抗体保有状況(免疫状況)を把握し、抗体保有率が低い年齢層に対する注意喚起等を目的として実施している。 わが国におけるインフルエンザワクチンは、従来、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、B型(ビクトリア系統あるいは山形系統)の3つのインフルエンザウイルスをワクチン株とした3価ワクチンが用いられてきた。しかし、近年はB型の二系統が同シーズンに流行する傾向が世界的にみられており、わが国においては2015/16シーズンからB型の二系統を含む4価ワクチンの使用が開始された。本感受性調査では今シーズン(2022/23シーズン)のワクチン株に用いられた4つのインフルエンザウイルスについて抗体保有状況の検討を行った。
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1. 調査対象および方法 2022年度の調査は、16都道府県から各198名、合計3,168名を対象として実施されている。インフルエンザウイルスに対する抗体価の測定は、健常者から採取された血液(血清)を用いて、調査を担当した都道府県衛生研究所において赤血球凝集抑制試験(HI法)により行われた。HI法に用いたインフルエンザウイルス(調査株)は以下の4つであり、各ウイルスの卵増殖株を由来としたHA抗原を測定抗原とした。また、採血時期は原則として2022年7~9月(インフルエンザの流行シーズン前かつ当該シーズンのワクチン接種前)とした。
a)A/Victoria(ビクトリア) /1/2020 [A(H1N1)亜型] b)A/Darwin (ダーウィン) /9/2021 [A(H3N2)亜型] c)B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)] d)B/Austria(オーストリア)/1359417/2021 [B型(ビクトリア系統)]
なお、本速報では抗体保有率として、感染リスクを50%に抑える目安と考えられているHI抗体価1:40以上について示した。
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2. 調査結果 2022年11月30日現在、北海道、山形県、神奈川県、新潟県、福井県、長野県、三重県、愛媛県、高知県の9道県から合計2,045名の結果が報告された。5歳ごとの年齢群別対象者数は、0-4歳群:157名、5-9歳群:116名、10-14歳群:115名、15-19歳群:176名、20-24歳群:148名、25-29歳群:185名、30-34歳群:193名、35-39歳群:161名、40-44歳群:132名、45-49歳群:151名、50-54歳群:153名、55-59歳群:164名、60-64歳群:99名、65-69歳群:41名、70歳以上群:54名であった。
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【年齢群別抗体保有状況】 A/Victoria(ビクトリア) /1/2020 [A(H1N1)pdm09亜型]:図1上段 今シーズンのA(H1N1)亜型のワクチン株は昨シーズンから変更されていない。本調査株に対する1:40 以上のHI抗体保有率は、全体として2021/22シーズンと比べ低く、年齢群間の保有率のばらつきはあるものの20-24歳群の32%をピークになだらかな一峰性を示している。
A/Darwin (ダーウィン) /9/2021 [A(H3N2)亜型]:図1下段 今シーズンのA(H3N2)亜型のワクチン株は2021/22シーズンのA/Tasmaniaから変更された。1:40以上のHI抗体保有率は15-19歳群の陽性率50%が最も高かった。0-4歳群の陽性率は10%と昨シーズンの13%よりも更に低下していた。55-59歳群、60-64歳群では陽性率15-21%と0-4歳群を除くと他の年齢群(30%以上)より低かった。
B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)]:図2上段 B型(山形系統)のワクチン株は2015/16シーズンから変更されていない。0-4歳群で陽性率が3%と最も低い割合を示した。2021/22シーズン前と比較して陽性率の最も高い年齢群は30-34歳群と同じであったが、全ての年齢群で2021/22シーズン前の結果より低下していた。
B/Austria(オーストリア) /1359417/2021[B型(ビクトリア系統)]:図2下段 B型(ビクトリア系統)のワクチン株はB/Victoriaから変更された。1:40以上のHI抗体保有率は50-54歳群から60-64歳群までHI抗体保有率20%以上を示した。その他の年齢群はすべて20%未満であった。
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図1 
図2 
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コメント 今シーズンはA(H3N2)亜型とB型ビクトリア系統のワクチン株が変更となった。本調査では、これら4つのワクチン株抗原に対するHI抗体保有状況を調査している。 2022/23シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離状況は、2022年26週に5株分離されて以降、27週に1株、28週に1株、29週に2株と毎週のように数株分離され、34週にも3株分離されている(https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/rapid/inf3/2019_36w/sinin1_221011.gif)。 また、感染症発生動向調査において、2022年第44週の定点当たりのインフルエンザ報告数は0.06(患者報告数270)、前週の43週定点当たり報告数0.03(患者報告数153)より増加傾向にある。ただし、今後の推移については不明であるため、抗体保有率が低かった年齢層においては注意が必要である。特に今シーズンでは、0-4歳群での抗体保有率の低値が懸念される。
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国立感染症研究所 感染症疫学センター/インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター |