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2012/13シーズンの流行入り前に起きたB型インフルエンザ
ウイルス(Victoria系統)による集団発生の2事例―長野県

(IASR Vol. 34 p. 42-43: 2013年2月号)

 

長野県内で2012/13シーズンの流行入り前の11月下旬にインフルエンザ様疾患の集団発生が2事例発生し、患者からB型インフルエンザウイルスが検出されたので、その事例の概要を報告する。

事例1は伊那保健所管内の小学校で発生し、2012(平成24)年11月21日(第47週)から学級閉鎖の措置がとられた。このクラスは11月20日の時点で28名のうち11名が欠席していた。

事例2は諏訪保健所管内の小学校で発生し、11月28日(第48週) から学級閉鎖の措置がとられた。このクラスは11月27日の時点で24名のうち7名が欠席していた。

なお、どちらの小学校も学級閉鎖は当該クラスのみであった。

ウイルス検査のため、事例1については4名(10~11歳)、事例2については5名(8~9歳)のいずれも欠席者から採取された咽頭ぬぐい液が当所に搬入された。被検者は発熱(37.3~39.0℃)や咳が主症状であり、他に上気道炎(咽頭炎)や頭痛、胃腸炎等を訴える者もいた。

搬入された9検体について、リアルタイムRT-PCR法による遺伝子検査を実施したところ、すべての検体からB型インフルエンザウイルスのNS遺伝子を検出した。また、MDCK細胞、CaCo-2細胞およびLLC-MK2細胞を用いた培養により分離できた8検体(事例1:4検体、事例2:4検体)について、0.75%モルモット血球を用いたHI試験を実施したところ、すべてB型のVictoria系統と同定された。

事例1の分離株は、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターで実施した遺伝子解析の結果(事例2の分離株は今後解析予定)、HA1遺伝子領域(1,041bp)において、4株すべて2011/12シーズンワクチン株(B/Brisbane/60/2008)と同一の1Aクレードに分類された()。

以上の結果から、これらの事例はB型(Victoria系統)が原因であったと推定された。両事例の発生した小学校は隣接した保健所管内に位置し、事例1の翌週に事例2が発生しており、また流行入り前の発生であったことから、この2事例は同一ウイルスによって発生した可能性もあり、今後事例2の分離株の遺伝子解析を実施して、両事例の関連性についても検討する予定である。

当該2事例の発生以降、第51週(12月17日~23日)には県内の複数地域から集団発生が報告されているが、患者から検出されたウイルスはすべてAH3亜型であり、B型による流行は認められなかったことから、当該2事例はB型(Victoria系統)による地域限局的な流行であったと考えられた。全国的においても、この2事例発生の同時期に沖縄県や高知県でB型(Victoria系統)の検出が報告されているが1)、B型インフルエンザウイルスがなぜ流行入り前、地域限局的に流行したのかは今のところ不明であり、今後も遺伝子解析や疫学調査を継続し、検討する必要があると思われる。

 

参考文献
1) 国立感染症研究所HP, 「インフルエンザウイルス分離・検出状況」,
 http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html (2013年1月9日確認)

 

長野県環境保全研究所
小林広記 嶋﨑真実 内山友里恵 中沢春幸 上田ひろみ 笠原ひとみ
宮坂たつ子 藤田 暁
長野県伊那保健福祉事務所(保健所) 山口 淳
長野県諏訪保健福祉事務所(保健所) 柳澤あやか

 

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