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小学校の集団発生事例から分離されたB型インフルエンザウイルス(山形系統)―広島県

(IASR Vol. 34 p. 41-42: 2013年2月号)

 

2012年12月4日(第49週)に広島県北部保健所管内の小学校(児童数501名)において、インフルエンザ様疾患の集団発生に伴い学級閉鎖の措置(措置期間:12月4日~12月6日)がとられた。当該校では,第3学年の1クラス21名中11名が発症した。患者の主症状は発熱(38.0~39.3℃)、頭痛および嘔気であったが、その他に咳、鼻汁などの症状も訴えた。また、医療機関におけるインフルエンザ迅速診断検査では、B型が陽性であった。

発症者のうち、医療機関を受診した3名および近隣の保育園児1名から採取した咽頭ぬぐい液検体が当センターに搬入された。この4検体について、NS遺伝子領域のリアルタイムRT-PCRを実施し、すべての検体からB型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された。

MDCK細胞を用いてウイルス分離を行ったところ、初代培養で検体接種2~3日目からCPEが観察された。このウイルス培養上清について、0.5%七面鳥赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を実施したところ、HA価が32~256を示した。国立感染症研究所から配布された2012/13シーズン用インフルエンザウイルスサーベイランスキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した結果、分離されたウイルス株は抗B/Wisconsin/1/2010(山形系統)血清(ホモHI価320)に対して、HI価が160~320を示し、B型インフルエンザウイルス(山形系統)と判定された。なお、その他の抗B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)血清(ホモHI価320)に対してはHI価が10~20を示し、抗A/California/07/2009(AH1pdm09)血清(ホモHI価1,280)および抗A/Victoria/361/2011(AH3N2)血清(ホモHI価2,560)に対してはHI価が10未満であった。

広島県では,当該事例後も第49週および第50週に発生した集団事例2件においても,B型インフルエンザウイルス(山形系統)が分離されている。今シーズン、当センターで分離されたインフルエンザウイルスは、11月の第44週に初発(散発事例)でAH3亜型が分離されたが、その後、当該事例を含めた集団事例においてB型インフルエンザウイルス(山形系統)が相次いで分離された。第51週に発生した集団事例では再びAH3亜型が検出されているが、引き続き、今後のインフルエンザウイルス発生動向に注視していく必要がある。

 

広島県立総合技術研究所保健環境センター
東久保靖 高尾信一 松尾 健
広島県健康福祉局健康対策課
永田康記 松岡俊彦
広島県北部保健所
畦地みどり 田邊満代 清本久子
医療法人すざわ小児科
須澤利文

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