国立感染症研究所

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南半球における2013年インフルエンザシーズンの概要

(IASR Vol. 35 p. 20-21: 2014年1月号)

 

南半球の温帯地域と中南米の熱帯地域の国々における2013年1~9月(冬季にあたる)のインフルエンザシーズンにおける流行の概要を述べる。

流行は温帯・熱帯の南アメリカ・南アフリカで3~5月頃に始まり、8~9月頃に終息した。オーストラリアとニュージーランドではシーズンは数カ月遅れて6~7月に始まり、9月下旬~10月初旬に終息した。A(H1N1)pdm09が一般的な流行株であった。シーズン終わりにかけてはA(H3N2)とBがアルゼンチン、チリ、南アフリカ、ウルグアイでより多く検出された。パラグアイではA(H3N2)がシーズン中を通しての流行株であった。オーストラリアとニュージーランドでは3つのウイルスが同時に流行していた。熱帯アメリカ・南アメリカ中央部ではA(H1N1)pdm09は主な流行株であったが、それに加えて熱帯アメリカではB、中央部ではA(H3N2)の循環もみられた。

全体として2013年のインフルエンザシーズンは2012年と比較して穏やかであり、オーストラリアとニュージーランドで顕著であった。しかし、例外もあり、チリではインフルエンザ様疾患(ILI)と、重症急性呼吸器感染症(SARI)の報告が前年と比較して約2倍であった。これにより、チリではインフルエンザ関連の死亡例が多く報告された。パラグアイではSARIの報告割合が増加した。A(H1N1)pdm09が流行した年でそうであったように、65歳以上の年齢層での重症例が少なかった。65歳以上の年齢層における重症例は、A(H1N1)pdm09の流行が少ない国々(オーストラリアとニュージーランド)でみられた。

ウイルス学的データ、伝染性、疾病と死亡率に関する疫学データは多くの国々で同様のパターンを示した。しかし、いくつかの国々では異なる傾向が示された。チリでのウイルス学的データによると、インフルエンザの陽性率は相対的に低かったにもかかわらず、インフルエンザ関連SARI症例の報告数はほぼ2倍であり、相対的に重症度の高いインフルエンザシーズンであることが示された。反対にニュージーランドでは、インフルエンザの陽性率は近年の平均的な陽性率より高かった。しかし、ILI報告率は基準値にかろうじて達する程度であり、2000年以来の最低水準であった。このように、これらの異なるパターンは、ウイルス学的データと疾病データは相補的なものであり、それぞれの国において、個々の包括的な流行状況を把握する必要性を示している。

ILIとSARIのサーベイランスを実施する国の増加に伴い、各国での経時的な流行パターンと傾向を明らかにするデータが得られるようになってきた。しかし、サーベイランスの方法は各国でかなり異なるため、各国の状況を比較するためにはデータの注意深い解釈が必要である。より一貫性のある報告と、同一の症例定義の使用、共通したサーベイランス手順によって、世界におけるインフルエンザパターンの理解は促進されるであろう。

     (WHO, WER, 88, (48): 509-520, 2013)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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