国立感染症研究所

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中国湖州市(浙江省)のすべてのインフルエンザA(H7N9) 確定例と家禽への曝露との疫学的リンク、2013年3~5月

(IASR Vol. 34 p. 173: 2013年6月号)

 

中国浙江省北部の湖州市でのインフルエンザA(H7N9)ヒト感染確定例と家禽への曝露との関連を分析した。同市では5月10日までに国のガイドラインの定義に基づいて合計12例がインフルエンザA(H7N9) 確定症例と診断され、中国全症例の約9%(12/129)を占めた。感染はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により検査確定された。濃厚接触者は、推定感染期間中に、マスクや手袋を着けずに確定例の2m以内に近づいた者と定義した。濃厚接触者は症例の家族や加療にあたった医療従事者を含み、確定例との曝露から7日間隔離された。湖州市には160種類以上の野鳥に生息地を提供している2つの自然湿地帯があり、市場の閉鎖措置が取られるまでは生きた家禽が取引されていた。確定例と発症前の家禽曝露に関する疫学調査に加え、環境調査として、症例が訪れた9カ所の家禽市場と周辺の7カ所から、家禽の糞、排泄物(殺処物作業台のふき取り検体)および汚水を収集しリアルタイムRT-PCRによるA(H7N9)ウイルスRNA同定を行った。

湖州市での12症例は男性4、女性8で、4月30日までに2例が死亡、4例は完全に回復、2例は回復中、他の4例は危篤状態。年齢の中央値は60歳(範囲:32~81歳)で、大部分(n=9)は50歳以上で、10例に感染前の慢性基礎疾患(高血圧、気管支炎、心疾患など)があった。家禽への曝露歴はすべての症例が有し、12例のうち9例が発症前10日間に少なくとも1回(1~10回)、近くの生きた家禽市場を訪れていた。これら9例のうちの4例が生きた家禽に直接接触していた。家禽市場に行っていない3症例も発症前の10日間に、生きた家禽との直接接触があった。

家禽市場からのサンプリングでは、症例が訪れた9カ所の家禽市場すべてからA(H7N9) のRNAが検出された。これら9カ所から家禽糞便、廃棄物や下水を採取した135検体のうち、38検体がウイルス陽性だった。また、2症例については自宅からA(H7N9)のRNA が検出された。症例が訪れていなかった7カ所の市場から集めた75検体についても、23検体がRNA陽性だった。12症例の濃厚接触者339名の咽頭ぬぐい液はすべてウイルス陰性で、ヒト-ヒト感染は認められなかった。市場の閉鎖後、新たな症例は同定されず、家禽曝露とA(H7N9)ウイルス感染が示唆された。

 

(Euro Surveill. 2013;18(20):pii=20481)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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