国立感染症研究所

IASR-logo

南半球における2019年インフルエンザシーズンの概要

(IASR Vol. 41 p64-65: 2020年4月号)

南半球の温帯地域の国々における2019年のインフルエンザ流行のシーズン開始は, オーストラリア, チリ, 南アフリカで例年の5月より早く, ピークのタイミングはパラグアイとウルグアイを除いて例年の8月より早かった。流行期間は, インフルエンザが10月後半まで循環していたチリでは例年より長かった。南米では, A(H1N1)pdm09が優勢あるいはA(H3N2)と共循環していた。また, 8月下旬にB型が大半を占めたシーズン2回目の流行を認めたチリを除き, B型は10%未満であった。南アフリカでは, 過去36年間で4回目となる1亜型〔2019年シーズンはA(H3N2)〕が90%以上を占めた年となった。オーストラリアでは, A型が77%で前シーズンと同様多くを占め, ニュージーランドでは, A型〔80%がA(H3N2)〕とB型(すべて山形系統)が半々で, A型が88%を占めた前シーズンと違う傾向であった。

重症度については前シーズンとほぼ同様であったが, チリでは重症急性呼吸器感染症の報告数が20%増加した。南アフリカでは, 入院患者におけるインフルエンザ肺炎の割合は過去5年と同等であった。オーストラリアでは, 過去5年で最も検査診断例の報告数, 入院数が多かったが, 重症度は過去2シーズンに比べ低かった。ニュージーランドでは, 重症度は過去5年で2番目に低かった。

2019年シーズンの3価ワクチンの推奨組成は, A/Michigan/45/2015(H1N1)pdm09-like virus, A/Switzerland/8060/2017(H3N2)-like virus, B/Colorado/06/2017-like virus(Victoria系統)であった。オーストラリアでは高齢者に対してB型山形系統を含めた4価ワクチンが使用された。ワクチン効果は, 以下の通りであった。A(H1N1)pdm09は外来患者においてオーストラリア62%(95%信頼区間:39,78), ニュージーランド7%(-60,47), 入院患者においてオーストラリア70%(49,82), ニュージーランド54%(-8,80), チリ70%(60,77)であった。A(H3N2)は外来患者においてオーストラリア37%(24,49), ニュージーランド4%(-29,29), 南アフリカ53%(23,72), 入院患者においてオーストラリア43%(22,59), ニュージーランド57%(21,76), チリ6%(-75,49)であった。B型は外来患者においてオーストラリア63%(46,74), ニュージーランド56%(38,69), 入院患者においてオーストラリア52%(34,65), ニュージーランド66%(23,85), チリ29%(-23,59)であった。

 
 
[出典:WHO, WER, 95(1/2): 1-12, 2020]
(抄訳担当:国立感染症研究所 藤倉裕之 山岸拓也)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version