国立感染症研究所

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2015/16シーズン終わりおよび2016/17シーズン初めに分離されたインフルエンザウイルス—新潟県

(掲載日 2016/11/24)(更新日 2016/12/22)(IASR Vol. 37 p.251: 2016年12月号)

新潟県では、2016年8月および9月にインフルエンザウイルスによる集団感染が発生し、A/H1pdm09亜型のウイルスを分離したので報告する。

事例1は、2016年8月3日〜8月9日(第31〜32週)にかけて、佐渡市内の保育園において発熱を主な症状とする集団感染事例が発生した。発症者数は園児13名中9名、職員4名中1名で、このうち医療機関を受診した患者から採取された咽頭ぬぐい液4検体が当所に搬入された。4検体からはリアルタイムRT-PCRでA/H1pdm09亜型のウイルス遺伝子を検出した。また、これら4検体についてMDCK細胞を用いてウイルス分離培養を行ったところ、すべての検体からA/H1pdm09亜型のウイルスを分離した。

事例2は、2016年9月26日〜10月11日(第39〜41週)にかけて、柏崎市内の小学校においてインフルエンザの集団感染が発生した。発症者は、2年生4名、5年生7名、6年生9名の合計20名で、このうち医療機関を受診した患者から採取された咽頭ぬぐい液3検体が当所に搬入された。3検体からはリアルタイムRT-PCRにてA/H1pdm09亜型のウイルス遺伝子を検出し、これら3検体についてもウイルス分離培養を行った結果、すべての検体からA/H1pdm09亜型のウイルスを分離した。にウイルスを検出した患者情報を示した。

分離したウイルスのHA1遺伝子について遺伝子系統樹解析を行ったところ、解析が可能であった事例1の3株および事例2の2株はいずれもクレード6Bに属していた()。塩基配列は事例ごとに100%一致していた。また、NA遺伝子の薬剤耐性マーカー(H275Y)の検索を行ったところ、両事例の7検体はいずれも275Hで耐性変異は認められなかった。

当所における2015/16シーズンに検出したインフルエンザウイルスの検出状況は、ウイルスが検出された97件中、A/H1pdm09亜型が53件(55%)、B型40件(41%)、A/H3亜型は2件(2%)、C型1件(1%)であった。一方、2016/17シーズンの全国での検出状況は、A/H3亜型が106件と最も多く、A/H1pdm09亜型は19件、B型は4件となっている(2016年11月11日現在)。

新潟県でのインフルエンザ患者報告数は、2015/16シーズンの流行終息後から現在まで、定点当たり報告数が1を超えるまでには至っていないが、第44週に0.54となり、地域によっては1を超えているところもあるため、今後本格的な流行シーズンを迎えるにあたり、どのウイルスが流行するのか動向を注視していく必要がある。

 

参考文献
  1. インフルエンザウイルス分離・検出速報
     http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html
  2. 新潟県感染症情報(週報)
       http://www.pref.niigata.lg.jp/kenko/1232482573101.html


新潟県保健環境科学研究所 
 広川智香 西田晶子 五十嵐智理 新井礼子 田村 務

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