国立感染症研究所

2016/17シーズン終盤から2017/18シーズン初めに分離されたA(H1N1)pdm09ウイルス―三重県

 

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2016/17シーズン終盤から2017/18シーズン初めに分離されたA(H1N1)pdm09ウイルス―三重県

(掲載日 2017/10/13) (IASR Vol. 38 p.227-229: 2017年11月号)

2017年7月上旬に三重県北勢地域A市の保育所でA(H1N1)pdm09ウイルスによる集団感染が発生し、さらに同地域のB市においても同ウイルスによる感染者が確認された。その後、2017年8月下旬~9月上旬(第35~37週)にかけて伊勢志摩地域で呼吸器症状を呈した患者から、A(H1N1)pdm09ウイルスが分離・検出された1-2)。そこで、2016/17シーズン終盤から2017/18シーズン初めの本県におけるA(H1N1)pdm09ウイルスの検出状況と患者から分離・検出された同ウイルスのウイルス学的性状を報告する。

1) 保育所におけるA(H1N1)pdm09ウイルス感染の集団発生事例(2017年7月上旬)

2017年7月6日に医療機関を受診した北勢地域A市の保育所に通う小児1名から、インフルエンザウイルス簡易迅速診断キットの検査によりA 型インフルエンザウイルスが検出された。その後、7月7日に14名、7月10日には40名以上の園児がインフルエンザと診断された。報告を受けた管轄保健所は、これらの患者のうち3名の検体について、当研究所にインフルエンザウイルスの亜型同定を依頼した。医療機関で採取された鼻汁検体についてインフルエンザウイルス遺伝子検査を実施した結果、すべての検体からA(H1N1)pdm09ウイルス遺伝子が検出された。7月12日以降は新たな発症者はなく、終息までの欠席者数は園児52名、職員2名であった。A市では6月上旬~7月上旬に小中学校で少数校ではあるがインフルエンザウイルスによる有症者が確認されていた。このことから、A市内で小規模な患者発生が継続していたものと思わる。

2) A(H1N1)pdm09ウイルスの検出事例 (2017年7月上旬~中旬)

2017年7月10~19日に北勢地域B市の医療機関にて、受診した小児4名からインフルエンザウイルス簡易迅速診断キットを用いた検査でA 型インフルエンザウイルスが検出された。そのうち1名は、上記1)の集団感染が確認されたA市内でA型インフルエンザウイルス陽性患者との接触歴を有する患者であった。これら4名の鼻汁検体についてインフルエンザウイルス遺伝子検査による亜型同定を実施した結果、すべての検体でA(H1N1)pdm09ウイルスが同定された。 

3) A(H1N1)pdm09ウイルスの検出事例 (2017年8月下旬~9月上旬)

2017年8~9月(第35~37週)に、伊勢志摩地域C市の医療機関にて受診した小児5名についてインフルエンザウイルス簡易迅速診断キットを用いた検査を実施し、A 型インフルエンザウイルスが検出された。これら5名の鼻汁検体を用いてインフルエンザウイルス遺伝子検査による亜型同定を実施した結果、すべての検体でA(H1N1)pdm09ウイルスが同定された。同市ではこの期間にA 型インフルエンザウイルスによる保育所での集団発生および家族内感染例が報告されており、本調査結果よりA(H1N1)pdm09ウイルスによる地域流行が推察された。

インフルエンザウイルス分離および遺伝子系統樹解析

2017年7月~9月上旬のインフルエンザ集団発生事例および散発例から採取された12検体を用いてMDCK細胞によるウイルス分離を試みたところ、2代培養までに細胞変性が認められた。

ウイルス培養上清液に対して0.75%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、すべてでHA活性が認められ、HA価は32~128を示した。そこで、国立感染症研究所より2016年に配布された2016/17シーズンの同定試験用抗インフルエンザウイルス血清と、0.75%モルモット赤血球を用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を行った。分離株(12株)はA/California/7/2009(H1N1)pdm09の抗血清に対してHI価320~640(ホモ価640)を示した。なお、A/Hong Kong/4801/2014(H3N2)の抗血清(ホモ価2,560)、B/Phuket/3073/2013(山形系統)の抗血清(同640)、B/Texas/2/2013(Victoria系統)の抗血清(同640)に対するHI価は10未満であった。

今回分離した12株のA(H1N1)pdm09ウイルスについてオセルタミビル耐性マーカーであるNA遺伝子内のH275Y耐性変異の有無を調べたところ、2017年9月(第36週)に伊勢志摩地域の患者より分離された1株(2017-690-MIE)からH275Y耐性変異が検出された。確認検査のため国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターに薬剤感受性試験を依頼したところ、本ウイルス株はオセルタミビルとペラミビルに対して耐性を示していた。一方、ザナミビルとラニナミビルに対しては感受性を保持していた3)

これらの7~9月のA(H1N1)pdm09ウイルス株の一部(11株)についてHA遺伝子系統樹解析を実施したところ、すべてHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N、S162N、I216T)に属し、さらに、アミノ酸置換(S74R、I295V)を有する集団に属していた。また、保育所での集団感染事例から分離されたA(H1N1)pdm09ウイルス株には前述のアミノ酸置換に加えて2つのアミノ酸置換(P137S、A197T)を有する特徴がみられた。一方、8月下旬~9月上旬に分離された同ウイルス株はアミノ酸置換(S164T)を有していた()。

今回シーズン初期に分離されたA(H1N1)pdm09ウイルス株(クレード6B.1)と、これから国内で検出される流行ウイルス株との相同性について関心が持たれる。

今回、7月に発生した北勢地域2市における地域流行では、地域の小児科医師の情報共有によって、早期に流行把握が可能となった事例であった。このことからも各地区の医師会会員および関係者に迅速な情報提供を行うことは、地域流行の早期把握のためにも有用である。

2017/18シーズンは既に伊勢市内の小学校で9月上旬(第37週)に、今シーズン初のインフルエンザウイルスによる学級閉鎖措置4)がとられており、例年より早い流行期入りが懸念される。

今後、感染予防対策のためにも通年における継続的なインフルエンザウイルスの動向監視を行い、流行状況や薬剤耐性株の動向について迅速な情報提供を行うことが必要である。

謝辞:本報告を行うにあたり、貴重なご意見をいただきました国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの藤崎誠一郎先生、高下恵美先生、渡邉真治先生、小田切孝人先生にお礼申し上げます。

 

参考文献
  1. 三重県感染症情報センター 2016/17シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出状況
    http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/influ/bunri/bunrihyou1617.htm
  2. 三重県感染症情報センター 2017/18シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出状況
    http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/influ/bunri/bunrihyou1718.htm
  3. 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/2068-flu/flu-dr/7548-flu-r20170929.html
  4. 集団かぜ発生予防のための情報提供について(第1報)
    http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/shudankaze/kaze17_18/20170911.pdf

 

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