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2017/18シーズンの山形系統のB型インフルエンザ流行状況―横浜市

(掲載日 2018/1/30) (IASR Vol. 39 p24-25: 2018年2月号)

横浜市においては2017/18シーズン最初の9月に山形系統のB型インフルエンザウイルス(以下B型ウイルス)による集団感染が発生し、初発区では2カ月以上地域流行みられた。11月以降、AH1pdm09インフルエンザウイルス(以下AH1pdm09ウイルス)による流行が拡大しているが、他区でも山形系統のB型ウイルスによる集団発生や定点医療機関からの分離・検出が続いている。2017/18シーズンは当初からB型ウイルスが先行するこれまでに経験のない流行像であるため、B型ウイルスの分離・検出状況とウイルス学的性状について報告する。

1) 集団発生事例

2018年1月29日現在、横浜市内の18区で集団発生の初発報告があり、18集団についてウイルス検索を試みたところ、6集団は山形系統のB型ウイルスが原因であり、残りの12集団はAH1pdm09ウイルスが原因であった()。発生した時期は9月(第37週)に1件、10月(第40週と第43週)に2件、12月(第49週と第50週)に2件、1月(第3週)に1件であり、B型ウイルスによる集団発生がシーズン早期からみられた。集団発生施設はすべて小学校であり、山形系統のB型ウイルスが原因の集団発生は低学年および高学年に見られた。一方、AH1pdm09ウイルスが原因の集団発生は低学年が多い傾向であった。

2) 定点医療機関における型別報告数および病原体定点のウイルス分離・検出状況

横浜市では患者報告数とともに迅速診断キットによる型別報告数を集計しており、今シーズンの累計はA型48.1%、B型51.6%、A・B型両陽性0.2%で、第3週においてはA型33.1%、B型66.6%と流行初期のこの時期としてはB型の占める割合が多くなっている1)。病原体定点のウイルス分離・検出状況ではシーズン当初から山形系統のB型ウイルスが継続して分離・検出されており、現在のところ分離・検出ウイルスの43.4%を占めている(図1)。B型ウイルスを分離・検出した患者55例の年齢幅は1歳~61歳で、中央値は9歳であった。

3) 山形系統のB型ウイルスの性状
図2

集団検体および定点検体で分離した40株(AX4細胞使用)のB型ウイルスについて、国立感染症研究所から配布された2017/18シーズンキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.5%ニワトリ赤血球)を実施した。山形系統の抗血清B/プーケット/3073/2013 に対してはすべて同等または2倍差であり、今シーズンのワクチン株と類似した性状であった。また、代表株についてHA遺伝子系統樹解析を行ったところ、今シーズンの分離株はS150I、N165Y、N202S、G229Dのアミノ酸置換を共通とするクレード3に属し、さらにB/プーケット/3073/2013株を代表とするグループ(N116K、K298E、 E312K)のL172Q、M251V群に属した。興味深いことに9月に集団発生がみられた瀬谷区で分離されたウイルス株は、T257I、N421Dのアミノ酸置換を共通としたグループを形成しており、地域的な特徴がみられた。

2017/18シーズンは3種類のインフルエンザウイルスが分離・検出されているが、山形系統のB型ウイルスの流行が早期に始まっている。学童年齢層においてはA型ウイルスとの再感染や重複感染にも注意が必要であり、本格的なインフルエンザ流行時期を迎え、十分なインフルエンザ対策が必要である。

謝辞:本調査にあたり、定点医療機関および各福祉保健センター支所担当者のご協力に感謝します。

 

参考文献
  1. 横浜市衛生研究所/横浜市健康福祉局健康安全課,
    横浜市インフルエンザ流行情報
    http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/rinji/influenza/influenza-rinji-index2017.html

横浜市衛生研究所
 川上千春 小澤広規 清水耕平 百木智子 七種美和子 宇宿秀三 笹尾忠由
 高井麻実 加藤美奈子 青野 実 畔上栄治 上原早苗 野崎直彦 大久保一郎 
横浜市健康福祉局健康安全部
 土肥朋哉 大出啓太郎 岩松美樹 木村博和
横浜市保健所 豊澤隆弘

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