国立感染症研究所

 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

 インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1~4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。

 感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2012年第7週の定点当たり報告数は35.44(報告数174,871)となり、第5週の定点当たり報告数(42.62)をピークとして2週連続して減少がみられた(図1)。都道府県別では大分県(52.26)、埼玉県(50.40)、秋田県(48.24)、千葉県(48.09)、宮崎県(45.00)、福岡県(43.71)、神奈川県(43.22)、鹿児島県(42.66)の順となっている。41都道府県で前週の報告数よりも減少がみられた(図2)

 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると175万人(95%信頼区間:160~190万人)(暫定値)とこちらも2週連続で減少した(図3)。2011年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約985万人(95%信頼区間:952~1,019万人)(暫定値)であり、年齢群別では5~9歳約257万人、10~14歳約160万人、0~4歳約150万人、30代約104万人、40代約75万人、20代約66万人の順であった。また70歳以上は約45万人と昨シーズン(2010/2011年シーズン、2010年第36週~2011年第35週)の推計受診者数(24万人)(以上全て暫定値)を既に大きく上回っている(図4)

図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002~2012年第7週) 図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2012年第5~7週) 図3. インフルエンザの推計受診者数(暫定値)週別推移(2011年第36週~2012年第7週)
図4. インフルエンザの年齢群別累積推計受診者数(暫定値)(2011年第36週~2012年第7週)


 2011年第36週~2012年第7週までに国内では3,024検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が6件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)2,624件(86.8%)、B型394件(13.0%)とAH3亜型が大半を占めている状態に変わりはないものの、B型の割合が徐々に増加してきている。

 2012年第7週は多くの地域で報告数の減少がみられたものの、まだ28都道県では定点当たり報告数が30.00を超えており、インフルエンザの本格的な流行は全国的に継続している。引き続きインフルエンザの発生動向に対しては注意が必要である。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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