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イインフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1~4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている:http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/healthcaresettings.htm )。 インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生が重要である。インフルエンザでは、たとえ感染者であっても、全く症状のない不顕性感染例や、感冒様症状のみでインフルエンザウイルスに感染していることを本人も周囲も気が付かない軽症例も少なくないため、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においては可能である場合は職員も含めて全員が咳エチケット、手指衛生を実行するべきである(厚生労働省インフルエンザQ&A:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)。 感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は2012年第43週以降14週連続して増加して2013年第4週にピーク(定点当たり報告数36.44)を迎え、その後は減少が続いて第10週の定点当たり報告数は10.37(報告数51,190)となった(図1)。都道府県別では愛知県(27.27)、福井県(21.38)、鹿児島県(21.09)、徳島県(20.97)、広島県(20.66)、岐阜県(19.97)、高知県(19.77)の順となっている。45都道府県で前週より減少がみられた(図2)。 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約55万人(95%信頼区間:50万人~60万人)であり、2012年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約1,180万人(95%信頼区間:1,150万人~1,210万人)と1,000万人を上回った。各年齢群の累積の推計受診者数は5~9歳約182万人、30代約151万人、10~14歳約138万人、0~4歳約137万人、40代約131万人、20代約116万人の順であった。70歳以上は約79万人であり、昨シーズンの同時期の累積の推計受診者数(約60万人)(以上全て暫定値)を上回っている(図3)。
インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症は、2004年4月より急性脳炎の発生動向調査の一環として報告されるようになった。今シーズンはこれまでに22都道府県から55例(男性28例、女性27例、55例中8例は死亡報告あり)の報告があった。診断週別にみると、2012年第51週以降継続的に報告があり、2013年第3週と第6週に11例と最多の報告数となっており、インフルエンザの報告数が多かった第4週と第5週はそれぞれ10例および5例であった(図5)。年齢は0~84歳(中央値12歳、平均値28.6歳)で、これまでのところ小児では5歳が5例と最も多く、成人では60~79歳の年齢群が12例となっている(図6)。ウイルス型別ではA型42例(76.4%、うちAH1pdm09が0例、AH3が4例)、B型7例(12.7%)、型別不明6例(10.9%)となっており、今シーズンの流行を反映してA型が多数を占めている。
2013年第5週以降、インフルエンザの報告数は減少が続いているが、中部地方以西では、定点当たり報告数が全国平均値を大きく上回っているところも認められる。全国の基幹病院定点からの入院報告数はこれまでに8,732人となっており、患者発生の中心とは異なった高年齢層の入院報告数が多くなっている。インフルエンザ脳症はこれまでに55例が報告されており、昨シーズンの同時期までの報告数(71例)よりも減少しているが、20歳以上の成人の報告数は23例と昨シーズンの報告数(9例)を大きく上回っている。今しばらくはインフルエンザの発生動向には注意が必要である。 |