注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
◆インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物から手指を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。
2014/2015年シーズンのインフルエンザは、2014年第52週(2014年12月22~28日:2015年1月6日現在)では定点当たり報告数が26.63となり、前週の定点当たり報告数15.17よりも大きく増加しており、全国的に幅広い年齢層で流行している〔インフルエンザの年別・週別発生状況(本号10ページ参照):http://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html〕。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を、この1週間に受診した患者数を推計すると約138万人(95%信頼区間:134~142万人)となり、前週の推計値(約72万人)よりも増加した。インフルエンザによる入院患者数も定点から見られる流行状況と比例し、基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は710例であり、前週(378例)より増加した。
全47都道府県で前週の報告数よりも増加が見られ、国内のインフルエンザの定点当たり報告数をみると、第50週まで主に東日本を中心に流行していたのが西日本へ広がり、第52週の定点当たり報告数では、埼玉県(48.13)、神奈川県(35.86)、福岡県(35.79)、岩手県(34.17)、長崎県(34.14)の順となり、地域的な拡大が認められた。また、報告数における年齢層の広がりが見られた。推計患者数より求めた年齢群では依然として5~9歳と10~14歳が中心であったが、その割合は約6割から4割と減少した。基幹定点からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)は依然として60代以上が約半数を占めるが、推計患者数の推移と比例し、成人層での増加が見られた。
また、直近の5週間(2014年第48~52週)では依然としてAH3亜型の検出割合が最も多く(約98%)、次いでB型、AH1pdm09の順となっている(インフルエンザ流行レベルマップ第52週:https://nesid3g.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/2014_2015/2014_52/jmap.html)。
例年のインフルエンザ流行のピークは1月末から2月上旬が多いが、2014/2015年シーズンはそれよりも早くなる可能性がある。また、今季はAH3亜型の検出割合が継続して高いが、流行地域の拡大や流行しているインフルエンザウイルス亜型の割合が変化する事も有り、発生動向には注意が必要である。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクをしたり、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆う等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生といった対策を徹底することが重要である。高齢者における感染への警戒の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、関係者が個人で出来る予防策を徹底すると同時に、訪問者等においては、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の工夫が重要である。なお、65歳以上の高齢者、又は60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は予防接種法上の定期接種の対象となっている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html)。
インフルエンザとRSウイルス感染症の感染症発生動向調査に関する背景・詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:
●感染症発生動向調査週報(IDWR) http://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr.html ●インフルエンザ流行レベルマップ http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html ●IASR インフルエンザ2013/14シーズン http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/592-idsc/iasr-topic/5144-tpc417-j.html ●インフルエンザQ&A http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html ●インフルエンザ啓発ツール http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html ●Influenza Situation Update http://www.wpro.who.int/emerging_diseases/Influenza/en/
国立感染症研究所 感染症疫学センター
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