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国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室

全国地方衛生研究所

遺伝子系統樹
 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室が解析した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子配列を用いて、HA遺伝子系統樹を作成した。国内外で流行しているウイルスと比較するため、各地方衛生研究所にて分離された株の遺伝子配列だけではなく、海外で分離された株の遺伝子配列も解析に加えている。なお、海外の研究機関で解析された遺伝子配列はインフルエンザウイルス遺伝子データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data:http://platform.gisaid.org/epi3/frontend)から入手している。 
2017/2018シーズン系統樹(データ更新日:2018年8月22日)NEW

A(H1N1)pdm09解析した株は全てHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N, S162N, I216T)内のS74R, I295V群に属していた(図1)。またほとんどのウイルスはS74R, I295V群内に分岐したS164T群に属し、さらにP137S, I267T, I372L群、L161I, I404M群、S183P群、T120A群など複数の集団を形成した。NAタンパク質にH275Y置換を有するオセルタミビル耐性株は散発的に検出されているが、耐性株の流行は確認されていない。

A(H3N2):最近の流行株はHA遺伝子系統樹上のサブクレード3C.2a(L3I, N144S, F159Y, K160T, Q311H, D489N、代表株:A/Hong Kong/4801/2014)に属している(図2)。3C.2a内にはサブクレード3C.2a1(N171K, I406V, G484E、代表株:A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016)、3C.2a2(T131K, R142K, R261Q)、3C.2a3(N121K, S144K)、3C.2a4(N31S, D53N, R142G, S144R, N171K, I192T, Q197H)が形成されている。2018年1月以降、3C.2a2株が増加傾向(76.7%)にある。3C.2a1はさらに、3C.2a1a(N121K, G479E, T135K, N122D)、3C.2a1b(N121K, K92R, H311Q)に分岐し、3C.2a1b内には3C.2a1b+135K(E62G, R142G, T135K; 18.6%)および3C.2a1b+135N(T135N; 4.7%)が、3C.2a2内にはA212T群が形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。

B (ビクトリア系統)解析した株は全て、HA遺伝子系統樹上のクレード1A(共通アミノ酸置換N75L、N165K, S172P、代表株:B/Brisbane/60/2008、B/Texas/02/2013)内の、N129D, I117V, V146Iを有する集団に属していた(図3)。その中で複数の群が形成されており、遺伝子的には多様化が進んでいる。その中で、ワクチン株(B/Brisbane/60/2008あるいはB/Texas/02/2013)に対して抗原性変異株のサブクレード1A.1[共通アミノ酸置換I180V, R498Kおよび2アミノ酸欠損(162, 163)、代表株:A/Maryland/15/2016]に属するウイルスが2月以降増加傾向にあり、今後の流行が注目される。現在までに日本では、1A.1株は8株検出されている。

B (山形系統):解析株は全て、HA遺伝子系統樹上のクレード3(共通アミノ酸置換S150I, N165Y, N202S, S229D)内でB/Phuket/3073/2013株を代表とする群(共通アミノ酸置換N116K, K298E, E312K)内のL172Q, M251V群に属した(図4)。また、共通アミノ酸を持たない集団も多く形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。

  
 

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