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 細胞化学部 第二室(生体膜解析室)

細胞化学部の第二室では、哺乳動物細胞株における遺伝学的手法を用いた宿主因子の探索に関する研究、及び感染症に関与する生体膜糖鎖・脂質の代謝や細胞内輸送に関する研究を行っています。

 

スタッフ

   室長     山地 俊之

   博士研究員  本間 悠太(学振)

   実習生    朝平 凌矢(日本大学理工学部B4)

   実習生    柴田 麿(日本大学理工学部B4)

 

 

研究テーマ

1. ゲノムワイドライブラリーを用いた宿主因子探索

 ウイルスや細菌毒素は宿主細胞に作用することで病原性を示します。当室ではこれら病原体感染に影響を及ぼす宿主因子を探索する手段として、哺乳動物細胞における遺伝学的手法を積極的に取り入れています。以前よりRNA interference(RNAi)法や遺伝子トラップ法、cDNAライブラリーによる発現クローニング法を用いたスクリーニングが行われてきましたが、これらに加え近年のゲノム編集法の進歩に伴い、様々な哺乳動物細胞株において網羅的な遺伝子ノックアウト細胞群が作製できる時代となりました。我々はゲノム編集法の1つCRISPR/Cas9システムのゲノムワイドライブラリーを導入し、哺乳動物細胞を用いたスクリーニング系のプラットフォームを構築することで、様々な病原体感染における宿主因子探索を行っています(所内外で共同研究実施中!)。

 

2. 志賀毒素による細胞死に対し影響を及ぼす宿主因子の探索

 宿主因子探索の1つとして、志賀毒素を標的とした研究を行っています。志賀毒素は腸管出血性大腸菌が産生する外毒素であり、別名ベロ毒素とも呼ばれています。非常に毒性が強く、出血性の下痢をはじめ溶血性尿毒症症候群や脳炎と行った重篤な症状を引き起こすこともあります。この毒素は細胞表面のスフィンゴ糖脂質の一種Gb3に結合後、エンドソーム-ゴルジ体-小胞体-細胞質内へと逆輸送され、リボソームを不活化することで細胞死をもたらします。この毒素を用いて上記の遺伝学的スクリーニングを行うことで、(a) 志賀毒素-Gb3複合体の逆輸送に関する新規因子、(b) 受容体Gb3の生合成に影響する新規因子 (スフィンゴ糖脂質生合成酵素の活性や細胞内分布に影響する因子、及びスフィンゴ糖脂質輸送に関する因子)の探索を行っています。

 

 

3. 糖鎖・脂質の代謝研究と感染症研究への応用

 哺乳動物細胞の生体膜には様々な糖鎖や脂質が存在しており、上記の志賀毒素をはじめとして様々な病原体や細菌毒素の受容体として、またウイルス複製に必要な成分として関与しています。これら糖鎖や脂質の生合成酵素はほぼ同定されていますが、多種類存在する酵素が理路整然と糖鎖や脂質を作り上げるためには、単に酵素の発現量だけでなく基質と生合成酵素両方の輸送や細胞内分布が正しく制御されていることが重要です。そこで遺伝学的手法を用いたスクリーニングにより、糖鎖や脂質の代謝に影響を及ぼす新規因子の同定を目指しています。またスフィンゴ糖脂質をはじめとする、様々な糖鎖・脂質関連遺伝子、及び自然免疫関連遺伝子の遺伝子破壊細胞を作製し、細胞レベルにおける病原体感染への影響について検討しています。

    

 

     大学院生募集中! 

     研究室にご興味がある方は山地 (tyamaji at nih.go.jp) までメールください。

                                                           (atは@にしてください)

 

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