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すべての死因を含む超過死亡数の推定に関するQ&A(2020年12月23日時点版)

 

新型コロナウイルスにより亡くなられた方が既に報告されている県で、超過死亡(特に予測死亡数の95%片側予測区間(上限)を超える観測死亡数)が認められていない県があるのはなぜですか。
本分析は、超過死亡はすべての死因を含み、新型コロナウイルスを直接の原因とする死亡の総和ではないことに注意が必要です。主に以下の内訳等の死亡の総和と解釈できます。
  1. 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断され、実際に新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡。
  2. 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断されたが、実際には新型コロナウイルス感染症を原因としない死亡(例えば、実際の死因はインフルエンザだが、新型コロナウイルス感染症が死因と診断された死亡。ただ新型コロナウイルス感染症の診断がPCR検査に基づく現状では、ほぼ該当例はないと考えられる)。
  3. 新型コロナウイルス感染症が直接の死因と診断されなかったが(他の病因を直接の死因と診断された)、実際には新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡。
  4. 新型コロナウイルス感染症が直接の死因ではないが、感染症流行による間接的な影響を受け、他の疾患を原因とした死亡(例えば、病院不受診や生活習慣の変化に伴う持病の悪化による死亡)。
  5. 新型コロナウイルス感染症が直接の死因でなく、また新型コロナウイルス感染症流行による間接的な影響を受けたものでもない死亡(2017-2019年の超過死亡数はこれらの死亡を反映したものである)。
4点目については、例えば、交通事故死、自殺、インフルエンザ等他の感染症による死亡などが過去の同時期より減少した場合、プラスマイナスで超過死亡数がゼロとなることがあり得ます(つまり実際に新型コロナウイルスによる死亡が観測されていても、マイナス分によって超過分が相殺されてしまう)。実際にそのようなことが起こっていたかを知るためには、死因を含めた解析で詳しく調べる必要があります。

一方で、自殺や交通事故死に関しては、警察庁等のデータを利用した解析によると、新型コロナウイルス感染症流行期においてすべての死因を含む超過死亡数を相殺するほどの大きな減少認められておりません(野村ら. 2020野村ら. 2020 )。
週別の超過死亡数を積算する際に、観測値が閾値を超えていない場合はゼロとしてカウントしているのはなぜですか。
パンデミックの影響が現れる起点と終点の週を明確には分けることができないので、マイナスを考慮する場合、集計期間を少し変えるだけで、超過分がプラスマイナスでゼロ、あるいはマイナスとなり、ある期間の超過分が見えなくなることがあります。例えば、ある週に超過が見られ、次の週に超過が見られなかった場合(つまり観測値ー閾値がマイナス値)に、マイナスを考慮し積算すると、その2週間では超過が見られなかった、というケース(プラスマイナスでプラスに達しない)が生じます。「ある週に超過があった」という情報を常に保持する目的で、プラス分のみを積算した値を期間中の超過死亡数としています。
超過死亡数「XX-YY」人の解釈を教えてください。
XX=予測死亡数の95%片側予測区間(上限)と観測死亡数の差分、YY=予測死亡数の点推定値と観測死亡数の差分になります。実際の超過死亡数はこの範囲内に含まれるだろうと解釈できます。ただ後者(YY値)については、毎週の死亡者数の偶然の変動(ばらつき)も含まれてしまっていることには注意が必要です。予測死亡数の点推定値は、言うなれば過去の観測値に対して平均値をとったようなものですので、観測値との差分は容易に出ます。(実際、点推定値と観測死亡数の差分がゼロを超える週は、期間中のみならず過去の多くの時点に存在します)。
ある月の超過死亡数が、過去報告のその月の超過死亡数と少し値がずれるのはなぜですか。
毎回新しい月の速報データを加えたことで、速報補正係数が更新され、またモデル係数も再推定されるため、ある週、ある月における超過死亡数は、過去報告分の結果と必ずしも厳密に一致はしません。
なぜFarringtonアルゴリズムとEuroMOMOアルゴリズムの2つのモデルを使うのですか。
新型コロナウイルス感染症による超過死亡数の推定について、ゴールドスタンダードと呼べる方法は未だありません。例えばこれまで、米国疾病予防管理センター(CDC)では様々な疾病のアウトブレイク検出法として広く用いられているFarringtonアルゴリズムが、欧州死亡率モニター(EuroMOMO)では季節性インフルエンザに関連する超過死亡の検出と測定を目的としたEuroMOMOアルゴリズムが、それぞれ新型コロナウイルス感染症による超過死亡数の推定に用いられてきました。妥当性の点で両アルゴリズムに優劣は存在せず、従って本分析では両者を選択しました。
なぜ死亡票の速報データは補正をするのですか。
速報データは死亡の届出遅れ等に伴い、実際の死亡数とは異なる可能性があります(後日に公表される確定数あるいは概数より速報データの死亡数が少ない)。例えば、1月に亡くなった方の死亡票データが、2月や3月の速報データに含まれる場合があります。本分析では、遅延を3ヶ月分まで考慮し、都道府県別に遅延割合を算出した上で、速報データの最新3ヶ月分に対しては補正を行っています。
なぜ毎日ではなく、週ごとで分析をするのですか。
推定に用いる死亡者数が小さい場合には推定の不確実性が非常に大きくなりがちです。日本の毎日の死亡者数は都道府県別にみると、必ずしも大きくはなく、本分析では、安定的な推定結果を得るために、週ごとの死亡者数で超過死亡数を推定しました。CDCやEuroMOMOでも、同様に週ごとに超過死亡数の推定が行われています。
なぜ全国の超過死亡数を直接推定せず、都道府県ごとの超過死亡数を合計しているのですか。
例えば表1の全国の超過死亡数の推定は、都道府県ごとの超過死亡数の積算として計算されており、FarringtonアルゴリズムやEuroMOMOアルゴリズムを用いて直接推定されたものではありません。全国の超過死亡数を直接推定する場合、まず都道府県ごとの観測死亡数を週ごとに合計することになりますが、その場合いくつかの都道府県における速報データの不完全さによるマイナスの値(つまり報告の遅れが原因で、ある時点の観測死亡者数が95%片側予測区間(上限)を超えない場合)が、他の都道府県で観測された超過死亡を相殺してしまうことになります。CDCも同様の理由で、米国全体の超過死亡数は直接推定せず、州ごとの超過死亡数の積算を全国の超過死亡数としています。
なぜFarringtonアルゴリズムとEuroMOMOアルゴリズムの2つのモデルで結果が違うのですか。どちらが正しいのですか。
それぞれのモデル式をご覧いただけるとわかる通り、過去の観測死亡数から予測死亡数を推定する方法、またその不確かさの尺度評価の方法がそれぞれ異なるため、結果が完全に一致することは基本的にありません。両アルゴリズムとも確立された方法論であり、結果の妥当性に優劣はありません。現在の日本においては、両者の結果の間に真の超過死亡数があるだろうと考えています。
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