2013年、コクサッキーウイルスA6型による手足口病流行の兆し―熊本県

(IASR Vol. 34 p. 233: 2013年8月号)

 

熊本県において、2013年4~6月に、手足口病患者検体からコクサッキーウイルスA6型(CA6)が多数検出されたので、発生状況とエンテロウイルス検出状況を報告する。

患者発生状況:手足口病の患者数は2013年第17週(4/22~28)頃から増加傾向となり、第24週(6/10~16)には定点当たりの報告数が5.14で警報基準値(5.00以上)を超えた。第25週(6/17~23)にはさらに増加し8.06となった。

材料および方法:2013年4~6月に手足口病、ヘルパンギーナもしくは発疹症と診断され当所に搬入された患者の咽頭ぬぐい液等67検体(手足口病:22検体、ヘルパンギーナ:26検体、発疹症:19検体)を検査材料とした。エンテロウイルスの遺伝子検査は、VP4/VP2領域を標的としたsemi-nested PCR法1)により行った。エンテロウイルス陽性と判定された場合、VP1領域を標的としたnested PCR法2)およびダイレクトシークエンスで塩基配列を決定し、BLASTによる相同性検索で型別同定を行った。また、得られたCA6の塩基配列(274bp)を用いて、近隣結合法による系統樹解析を行った。

ウイルス分離は、4細胞(RD-A、VeroE6、HEp-2、MRC-5)を使用し、1代を2週間として2代目まで継代および観察を行った。分離できた株は、中和試験を行った。

結果および考察:検査した67検体のうち、38検体がエンテロウイルス陽性と判定され、そのうち33検体が型別された。型の内訳は、CA6が22検体(手足口病:17検体、ヘルパンギーナ:2検体、発疹症:3検体)、コクサッキーウイルスA8型(CA8)が8検体(ヘルパンギーナ:7検体、発疹症:1検体)、エコーウイルス18型(Echo18)が3検体(発疹症:3検体)であった()。CA6が検出された患者の年齢分布を見ると、0歳が4名、1歳が13名、2歳が1名、3歳が4名であった。CA6が検出された患者の中には、強い発疹や、水痘様との症状の記載があるものも見られ、最近報告されている水痘疑いからCA6が検出された例(IASR 34: 204, 2013参照)と類似していると考えられた。

ウイルス分離は、現在培養中のものもあるが、CA6と同定できた22検体のうち18検体からRD-A細胞によって分離できた。当所では、2011年のCA6流行時にはRD-18S細胞を使用しており、CA6は分離できていない。このことから、RD-A細胞はCA6の分離に非常に有用であると考えられる。

今回得られたCA6株と、これまで国内外で報告されている株の系統樹()を作成したところ、今回検出された株は、すべて2008年以降に国内外で検出されているCA6株と同じクラスターに分類された。また、今回検出された株の相同性は95%以上と高く、1株を除いた株でサブクラスター(2013-Kumamoto)を形成した。熊本県で検出された2011年のCA6株は、同年に他県で検出された株と同じサブクラスターに分類されていることから、2013-Kumamotoも同様に地理的な要因ではなく、時期的なものであると推定される。

2011年は全国的に手足口病の大流行が起こり、患者から多数のCA6が検出された。2013年もすでにCA6が流行の兆しを見せており、今後の動向に注意が必要である。

 

参考文献
1) Ishiko H, et al., J Infect Dis 185: 744-754, 2002
2) Nix WA, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006

 

熊本県保健環境科学研究所 清田直子 原田誠也
しまだ小児科 島田 康
上野小児科医院 上野剛彦

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