2013年に手足口病患者から検出されたコクサッキーウイルスA6について―仙台市
(IASR Vol. 35 p. 49-50: 2014年2月号)
2013年、仙台市における手足口病の定点当たりの患者報告数は第25週から増加し始め、第34週でピークに達した後減少した。ピーク時の報告数は定点当たり6.46人で、2012年(6.12人)とほぼ同じ小規模の流行となった。
ウイルス分離・同定は、病原体定点で採取された咽頭ぬぐい液をRD-A細胞に接種後37℃1週間培養し3代目まで継代した。細胞培養にてCPEが認められた検体については、培養上清を精製後、国立感染症研究所から分与された抗血清で中和試験を試みた。中和試験により血清型を決定できなかった分離株については、塩基配列の解析(VP1およびVP4領域)により決定した。また、検体(咽頭ぬぐい液)から市販のキットを用いてRNAを抽出し、CODEHOP PCR法1)によりVP1領域の遺伝子を増幅した。増幅産物を精製後、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し、血清型の同定を行った。
手足口病患者の検体(咽頭ぬぐい液)は、非流行期の2012年12月~2013年1月にかけて3検体が搬入され、細胞でのCPEは観察されなかったが、遺伝子検査によりコクサッキーウイルスA6(CVA6)遺伝子が検出された(表1)。その後、流行開始とともに6月中旬から検体が搬入され始め、10月までに16検体が搬入された。このうち11検体で細胞培養にてCPEが認められ、4検体からの分離株は中和試験によりCVA6と同定された。残り7検体からの分離株も遺伝子解析によりCVA6が6株、CVA2が1株と同定された。一方、遺伝子検査では16検体すべてにおいてCODEHOP PCR法による増幅産物が確認され、遺伝子解析の結果、CVA6遺伝子が14検体から、ライノウイルスが3検体から、CVA2が1検体から検出された。このうち2検体からはCVA6遺伝子とライノウイルス遺伝子が同時に検出された(CODEHOP PCR法による増幅産物はエンテロウイルスが376bpであるのに対し、ライノウイルスは330bpで、混合感染の場合、2本のバンドが検出された)。
検出されたCVA6のVP1領域の系統樹解析の結果、増本らが報告2)した2011-Japan-B のクラスターに属する遺伝子が4検体から検出されたが、残り10検体から検出されたCVA6遺伝子は、清田ら3)が報告した2013-Kumamotoと同一クラスターに分類された。また、2名のヘルパンギーナ患者検体から検出されたCVA6の遺伝子もこのクラスターに分類された(図)。
2011年に国内でCVA6による手足口病が流行した際、仙台市内で検出されたCVA6は、遺伝子解析の結果、5検体すべて2011-Japan-A のクラスターに属していた。新しいクラスターに属するCVA6は、2012年8月にヘルパンギーナと診断された検体から検出されたのが最初で、2012年12月~2013年1月の非流行期の手足口病の検体から検出された遺伝子もこのクラスターに属していた。また、清田ら3)が報告した2013-Kumamotoと同一クラスターに分類されたことから、今シーズンのCVA6は新しいタイプが流行したものと思われる。さらに、2013年7月以降に搬入された多くの検体でRD-A細胞においてCPEが認められ、ウイルス分離が可能であったことから、2011年に流行したCVA6と大きな違いがみられた。今後は、非流行期も含め、手足口病から検出される病原体の動向に注意する必要があると考える。
参考文献
1) Allan W, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006
2) IASR 33: 60-61, 2012
3) IASR 34: 233, 2013
仙台市衛生研究所
千田恭子 菅原瑶子 関根雅夫 中田 歩 勝見正道 小林正裕
長谷川小児科医院 長谷川純男
かやば小児科医院 萱場 潤