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2019年に手足口病等から検出されたコクサッキーウイルスA6について―仙台市

(IASR Vol. 40 p221-222:2019年12月号)

2019年の仙台市における手足口病の定点当たりの患者報告数は, 第25週から増加し始め, 第31週でピークに達した後減少に転じた。ピーク時の患者報告数は36.37人/定点で, 過去10年間で最も大きな流行となった (図1)。

エンテロウイルスの検出は, 病原体定点小児科で診断された発症者, あるいは定点小児科を訪れた発症者の咽頭ぬぐい液から市販のキットを用いてRNAを抽出し, CODEHOP PCR法1)によりVP1領域の遺伝子を増幅して行った。増幅産物を精製後, ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し, Enterovirus Genotyping Tool(https://www.rivm.nl/mpf/typingtool/enterovirus/)により血清型の同定を行った。

手足口病等の発症者の検体(咽頭ぬぐい液)の搬入は, 7月から始まり, 10月までに18検体搬入された。18検体中17検体でエンテロウイルスの増幅産物が確認され, 遺伝子解析の結果, CA6の遺伝子が15検体, CA16の遺伝子が1検体検出された。1検体は型別不明であった。また, CA6が検出された15検体については, 国立感染症研究所病原体検出マニュアルに準じたRT-PCR法によりVP4-VP2領域の遺伝子を増幅したところ, 11検体で増幅産物が確認され, 遺伝子解析の結果VP4-VP2領域もCA6の遺伝子であることが確認された。

2019年に検出されたCA6のVP1領域の系統樹解析の結果, 2011年と2013年に手足口病が流行した際とは別の, 2つの新しいクラスターに分類された(図2)。2011年に国内でCA6による手足口病が流行した際, 仙台市内で検出されたCA6は2011 Japan Aのクラスター, 2013年に流行したCA6は3検体が増本らが報告2)した2011 Japan B, 15検体が清田ら3)が報告した2013-Kumamotoのクラスターに属していた4)

2019年に検出されたCA6のVP1領域は, 2011年および2013年検出株と各々5.1~8.4%の塩基配列の違いを有する株で, 今シーズンの2つのクラスターの間にも7.6%の遺伝子に違いが認められた。

VP4-VP2領域の系統樹解析の結果もVP1領域の系統樹解析の結果同様, 2つのクラスターに分類され(図3), 6.7%の遺伝子に違いが認められた。

よって, 今シーズンの手足口病の流行の拡大は, 2つの遺伝子性状の異なるCA6によるものと考えられる。今後は, 非流行期も含め, 手足口病から検出される病原体の動向に注意する必要があると考える。

 

参考文献
 
 
仙台市衛生研究所
 田村志帆 川村健太郎 成田美奈子 菅野敦子 松原弘明
 勝見正道 相原健二
長谷川小児科医院 長谷川純男
かやば小児科医院 萱場 潤

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