国立感染症研究所

logo40

スポーツ合同合宿における腸管出血性大腸菌O157集団感染事例について

(IASR Vol. 35 p. 121-123: 2014年5月号)

 

2013年8月27~29日に、兵庫県T市の小学校体育館および公民館を利用して、小学生3チーム(兵庫県、福井県、愛知県)が合同のスポーツ合宿を行った。合宿に参加した41名中19名が腹痛、下痢等の症状を呈し、保菌者7名を含む18名(兵庫県6名、福井県6名、愛知県6名)からVero毒素(VT)1&2陽性の腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7を検出した。そこで、この集団発生の概要を述べるとともに、検出された病原体の検査結果について報告する。

発生の概要
2013年9月4日、愛知県からの情報により探知し、食中毒と感染症の両面から調査を開始した。合宿に参加した小学生女児24名とその保護者・監督等大人17名について、患者等の発生状況を表1に示した。有症者19名中18名は小学生で、発症日は8月29~30日に集中し(図1)、発症時間が確認できたもののうち、7名が29日午後、5名が30日午前であった。EHEC O157が検出された患児は10名、29日午後に発症した福井県チームの女児1名は抗菌薬投与により、検便ではEHEC陰性であったが、その後、溶血性尿毒症症候群を発症し、抗VT抗体が検出された。大人の合宿参加者のうち、唯一発症したのは兵庫県チームの患児の父であり、8月28日から軟便症状を呈していたが、9月7日の検便ではEHEC陰性、9月10日から水様便となり、9月11日の検便でEHEC陽性となったことから、娘からの二次感染が疑われた。無症状保菌者と診断されたのは、小学生4名と兵庫県チームの監督および愛知県チームの保護者2名であった。

合宿参加者以外の家族等接触者について調査を行った結果、兵庫県チームの患児の同居祖母1名が保菌者であることが判明した。福井県、愛知県チームの接触者からEHECの検出は報告されていない。

感染源および感染の広がり
有症者が小学生に集中し、合宿3日目の午後~翌日午前にかけて発症のピークがみられたことから、合宿の当初に何らかの曝露を受けたと推測された。施設Aで小学生と大人が別メニューで喫食した合宿1日目の夕食による食中毒が疑われたが、当該施設に残っていた保存食12検体からO157が検出されなかったこと、当日調理に従事した6名からO157が検出されなかったこと、さらに他の利用者から同様の苦情がないことから、当該施設が原因の食中毒とは考えにくい。その他の食事についても、調理者からO157が検出されなかったこと、喫食せずにO157が検出された者がいること、他の利用者から同様の苦情がないことから、共通の食材を原因とする食中毒事件とは断定できなかった。

感染を広めた要因としては、宿泊した公民館のトイレで共用タオルが使われていたこと、小学生が練習場所等で飲料のコップを共用する状況があったこと、合宿2日目の夜にかき氷を自分で作って食べた小学生がいることなどが考えられる。

合宿3日目のみに合流した他のチームや、合宿後に兵庫県チームが練習や大会で接触した他のチームから、有症者は出ていない。しかし、兵庫県チームが8月31日に参加したT市スポーツセンターでの大会の観客1名が9月4日に発症し、菌株の一致がみられた。この患者は70歳女性で、大会会場での食事やトイレの利用はなく、施設Aで昼食をとっているが、4日前に小学生が食べた夕食メニューとの一致はなく、他の利用者から同様の苦情はない。接点は非常に少ないが、階段の手すりや玄関のドアノブを介した偶発的な移染があったかもしれない。なお、このスポーツ大会の主催者を通じて健康調査を行った結果、他に症状のあったものは確認されず、これ以上の感染の広がりはなかったと判断した。

検出されたEHEC O157菌株の解析
兵庫県内では、合宿不参加の2名を含む計8名からO157:H7(VT1&2)が分離された。これらのIS printingパターンおよびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンは、すべて一致した。IS printingパターンは、福井県・愛知県の分離菌株とも一致することが判明し、さらに精査を行うために、3県で分離された計20菌株が国立感染症研究所(感染研)に集められた。20菌株のPFGEパターンは、感染研Type No. h310が18菌株、h310と1バンド違いが2菌株であり、20菌株すべてが同一由来株であると推定された(図2)。これらのパターンについては、感染研に収集された2013年の国内分離菌株において、本事例関連菌株以外のなかで同一パターンは検出されなかった。

まとめ
3県のスポーツチームの共通点が合宿のみで、参加した小学生の発症率が高いことから、合宿中にかなりの菌量の曝露を受けたことが予想された。食中毒として初動調査を開始したが、調理者の便・保存食から菌が検出されず、食中毒事件とは断定されなかった。感染原因として否定されなかったものもあるが、いずれも菌の侵入経路が不明で、感染源の特定には至らなかった

 

兵庫県立健康生活科学研究所 秋山由美 押部智宏 二井洋子 三村昌司 
兵庫県龍野健康福祉事務所 長尾尚子 八木千鶴子 清瀬紀子 広瀬 薫 田村静雄 大橋秀隆    
兵庫県健康福祉部健康局疾病対策課 小谷幸代 西下重樹 味木和喜子    
福井県衛生環境研究センター 檀野由季子    
福井県健康福祉部健康増進課 向出宏二    
愛知県衛生研究所 松本昌門 鈴木匡弘    
愛知県健康福祉部健康担当局健康対策課 関 昌代 今井勇治 近藤良伸    
岡崎市保健所 中根邦彦 日名地洋介 板倉裕子 土屋啓三 深瀬文昭 片岡 泉 大嶌雄二 片岡博喜
国立感染症研究所 石原朋子 伊豫田 淳 泉谷秀昌 大西 真

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version