国立感染症研究所

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過去4シーズンに宮城県内で検出されたノロウイルス遺伝子の分子疫学

(IASR Vol. 35 p. 167-168: 2014年7月号)

2010/11~2013/14シーズンに宮城県感染症対策事業で収集された感染性胃腸炎集団発生事例の患者検体を用い、N/S領域の遺伝子配列をもとにノロウイルス(NoV)流行株の分子疫学調査を行った。宮城県内(仙台市を除く)ではこの4シーズンにNoVを原因とした感染性胃腸炎の集団発生が計128件届けられた(表1)。施設別の発生割合は幼稚園・保育所が最も高く58.6%で、以下小学校、老人保健施設、中学校・高校の順であった。幼稚園・保育所での発生はシーズンに関係なく最も多く、乳幼児におけるNoVの感染予防の難しさが確認された。

遺伝子群別では128事例中GI群が8事例(6.3%)であったのに対し,GII群が120事例(93.7%)と圧倒的に多かった。検出されたNoVの遺伝子型を表2に示す。遺伝子型の決定にはNorovirus Genotyping Tool Version 1.01)を用いた。すべてのシーズンで検出されたのはGII.4(GII/4)型とGII.6(GII/6)型で、特にGII.4(GII/4)型は遺伝子型を決定できた事例の約4割を占めていた。検出されたNoV遺伝子型のシーズンごとの特徴をみてみると、GII.2(GII/2)型やGII.3 (GII/3)型は年の経過とともに検出数が減少したのに対し、 GII.6(GII/6)型は2013/14に11事例(36.7%)で検出され急増した。これらの傾向は全国の調査結果2)と一致しており、急増したGII.6(GII/6)型については今後注視する必要があると思われる。一方、全国ではすべての年でGII.4(GII/4)型が最も多かったのに対し、本県では2010/11シーズンにはGII.2(GII/2)型やGII.3(GII/3)型の方が多かった。

GII.4(GII/4)型の亜株の検出状況(図1)をみると、2012年以前はDen Haag 2006b亜株が7事例と最も多かった。しかし、同年9月に関東圏から修学旅行に来た高校生からSydney 2012亜株が県内で初めて検出され、その後次第に増加し、2013/14シーズンはSydney 2012亜株のみが検出された。

さらに、発生施設別のGII.4(GII/4)型の検出状況について調べた結果(表1)、保育園・幼稚園、小学校、中学校および高校で発生した事例ではGII.4(GII/4)型の検出割合が24.2%(95件中23件)であったのに対し、老人保健施設では13件中12件がGII.4(GII/4)型によるものであった。これは年齢層により流行しやすい遺伝子型が異なり、特に乳幼児や小児は様々な遺伝子型による流行が発生しやすいことを示唆している。

県内では2014年4~5月に、過去4シーズンの同時期の約2倍の11事例の感染性胃腸炎の集団発生があり、うち10事例からNoV遺伝子が検出されている。東日本大震災の多くの被災者は仮設住宅での生活が続いており、NoVをはじめ感染症が流行しやすい環境にある。今後とも継続した注意喚起が必要である。

 

参考文献
  1. Kroneman A, et al., J Clin Virol 51: 121-125, 2011
  2. 国立感染症研究所感染症疫学センター,“シーズン別ウイルス検出状況、由来ヒト:胃腸炎ウイルス”, 2003/04~2013/14,
    (https://nesid4g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data96j.pdf),(参照2014.5.31)
宮城県保健環境センター微生物部 植木 洋 木村俊介 鈴木優子 阿部美和 菅原直子 渡邉 節
国立感染症研究所感染症疫学センター 木村博一
同 ウイルス第二部 片山和彦

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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