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大阪市における手足口病の流行状況(2017年)

(IASR Vol. 38 p.196-197: 2017年10月号)

近年, 日本国内では1981年の調査開始以来最大規模の手足口病流行が隔年で発生している。大阪市における2011年, 2013年, 2015年の手足口病患者の報告数は, それぞれ4,210人, 4,211人, 6,386人と全国での発生動向と同様に隔年での大きな流行が確認された。各流行年に報告された患者からは, 主にコクサッキーウイルスA6(CV-A6)が検出された1)。大阪市における2016年の手足口病患者報告数は767人と大きな流行が認められなかったが, 2017年は第31週現在4,878人と大きな流行が確認されている。本稿では, 2017年の大阪市における手足口病患者からのウイルス検出状況について報告する。

方法:2017年1月~7月24日までに手足口病と診断され, 大阪市立環境科学研究所(2017年4月以降:大阪健康安全基盤研究所天王寺センター)に搬入された23症例を解析対象とした。Real-time RT-PCR法2)でエンテロウイルス(EV)が陽性となった検体について, CODEHOP PCR法3)およびCV-A6のviral protein 1(VP1)領域全長を増幅するRT-semi-nested PCR法1)にてVP1領域を増幅し, ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定した。

結果:23症例中19症例(82.6%)でEVが検出された。検出されたEVの型は, CV-A6(73.7%, 14/19), EV-A71(21.1%, 4/19), エコーウイルス(Echo)type 7(5.3%, 1/19)であった。CV-A6が検出された症例の検体採取月は, 1月:2症例, 3月:1症例, 5月:1症例, 6月: 5症例, 7月:5症例であり, EV-A71が検出された検体採取月は, 6月:2症例, 7月:2症例であった()。

考察:2017年の大阪市における手足口病の主要な原因ウイルスは, 2011年, 2013年, 2015年と同様にCV-A6であり, 近年の手足口病流行とCV-A6の活動性が密接に関連していることが改めて示された。また, 2017年は通常非流行期である1月からCV-A6に関連した手足口病症例が報告されるなど流行の兆しが確認された。第24週以降は, EV-A71が検出される症例も散見されている。EV-A71による手足口病流行時には, 無菌性髄膜炎や脳炎等, 中枢神経合併症の頻度が高くなることが報告されていることから4), 今後の発生動向に注意する必要があると考えられる。

 

参考文献
  1. Kanbayashi D, et al., J Med Virol, 2017 Aug 3, doi:10.1002/jmv.24905 (Epub ahead of print)
  2. Kaida A, et al., Jpn J Infect Dis 67: 469-475, 2014
  3. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 46: 2519-2524, 2008
  4. 多屋馨子ら, IASR 25: 226-227, 2004

 

地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所
 上林大起 改田 厚 平井有紀 山元誠司 久保英幸 入谷展弘 小笠原 準
大阪市健康局大阪市保健所感染症対策課
 伯井紀隆 藤森良子 藤原遥香 木村禎彦 寺澤昭二

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