国立感染症研究所

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高知県感染症発生動向調査における無菌性髄膜炎の検出病原体について(2013~2017年)

(IASR Vol. 39 p96-97: 2018年6月号)

高知県衛生研究所では, 感染症発生動向調査において, 県内基幹病原体定点から無菌性髄膜炎およびその疑いの検体(髄液, 咽頭ぬぐい液, 便, その他)を年間20~30件受け入れている。

今回, 2013~2017年における無菌性髄膜炎またはその疑いで当所に搬入された検体の検査結果について検討したので報告する。

無菌性髄膜炎およびその疑いで搬入された検体(脳脊髄液, 咽頭ぬぐい液, 便, その他)は, 病原体検査マニュアルや既報のPCR検査手技に従い, エンテロウイルス属, パレコウイルス, ヘルペスウイルス属, ムンプスウイルスを中心にその遺伝子の有無と塩基配列解析による型別検査を実施している。

2013~2017年の間, 基幹病原体定点から無菌性髄膜炎およびその疑いで搬入された検体数は139検体(患者年齢0~37歳)あり, そのうち61検体(同0~18歳)からウイルス遺伝子を検出した。ウイルス別では, 41検体(67.2%)がエンテロウイルス属, 14検体(23.0%)がヘルペスウイルス属, その他ライノウイルス, パレコウイルスなど6検体(9.8%)であった()。

搬入される検体は, 疑い症例も含めているため1人の患者から髄液, 咽頭ぬぐい液, 便が同時に提出されることもある。検査検体の髄液と咽頭等のぬぐい液の2種からウイルスは概ね検出可能と思われるが(), 2014年各地で報告があったパレコウイルス3型は便からの検出が多かった事例もあり, 無菌性髄膜炎の原因ウイルスをより正確に把握するために, 検体受け入れについて病院側との調整を含め再検討する必要がある。

各年, 無菌性髄膜炎症状を呈する患者の検体から検出されたウイルスについて, 小児科病原体定点からの検体から臨床診断名を検索すると, コクサッキーウイルス B群が検出された感染性胃腸炎やヒトヘルペスウイルス6, 同7型, ライノウイルス, エコーウイルス, サイトメガロウイルスが検出された不明発疹症, ヘルパンギーナ, 手足口病などが多くあげられた。

エンテロウイルス属を原因とする感染性胃腸炎, 不明発疹症, ヘルパンギーナ, 手足口病が流行している年には, 無菌性髄膜炎もあわせて感染予防の啓発が必要である。

 
 
高知県衛生研究所 戸梶彰彦

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