国立感染症研究所

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山梨県峡東保健所管内で発生した百日咳集団発生事例, 2017年

(IASR Vol. 40 p9-10: 2019年1月号)

百日咳はこれまで感染症法5類感染症の小児科定点把握疾患であったが, 国内サーベイランスの精度向上のため, 2018年1月より全数把握対象疾患に変更されるとともに届出基準に検査診断が加わった。施行規則変更直前の2017年12月, 山梨県峡東保健所管内で小中学生を中心とした百日咳アウトブレイクが発生した。そこで, 現地医療機関の協力のもと, 峡東保健所ならびに国立感染症研究所 (感染研) が現地調査にて患者情報および診断根拠に関する情報収集を行った。また, 百日咳疑い患者の後鼻腔スワブ検体が得られた症例に関しては, 感染研にて病原体検索を行った。施行規則の大幅な変更により, 医師の届出に混乱が生じることが事前に予想されたため, 本調査で得られた情報をもとに新しいサーベイランスの導入に向けて注意すべき点を検討した。

山梨県峡東保健所管内では, 2017年7月10日に症状を発現した初発例を発端に同年12月末までに合計95例の百日咳患者が診断されていた。年齢中央値は13歳 (範囲:1-58歳), 男性が45人 (47%), ワクチン接種歴が明らかな人が58人 (61%) であった。年齢分布としては5歳ごろから患者数が増えはじめ, 9歳, 13歳にピークが認められた ()。診断根拠について調査をしたところ, 70/95 (74%) が単一血清高値 (抗PT-IgGもしくは抗FHA-IgG抗体価) によって診断されていた。ただし, 百日咳の血清診断基準として国際的に認知されている 「抗PT-IgG抗体が100 EU/mL以上」 を満たす診断例は25/70 (36%) であった。また, LAMP法は主に発症後2週間以内, 血清診断法は発症後2週間以上経過した症例について実施されていた。現在, 健康保険が適用可能な百日咳の検査診断法をに示す。今回の百日咳アウトブレイクでは, 臨床診断をした中には基準値を上回っていない症例も陽性と判断されていた。

なお, 百日咳疑い患者14名 (9〜29歳) を対象に病原体検索を実施し, 遺伝子検査陽性者1名 (9歳, 男児) から百日咳菌が分離された。分離菌をMLVA遺伝子型解析に供したところMT27fであることが判明した。本菌は主要な百日咳菌抗原 (Prn, 線毛3) を産生し, マクロライド系抗菌薬に対して感受性を示した。

本調査結果より, 百日咳検査診断の届出基準に関してはより明確に示す必要があると判断され, 感染研では 「感染症法に基づく医師届出ガイドライン (初版)」1)を発出した。近年, 国内の百日咳アウトブレイクでは, 今回の事例のように学童が罹患し, 家族や学校で感染を拡大させたと推定される報告が多い2)。有効な介入策 (DTPワクチンの追加接種など) の検討を行うためにも, 正確なサーベイランスによる国内百日咳患者の把握が必要である。今後, 百日咳の適切な検査診断法および診断基準値について認知を広める必要があると考察された。

 

参考文献
  1. 感染症法に基づく医師届出ガイドライン (初版), 平成30年4月25日
    https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/pertussis/pertussis_guideline_180425.pdf
  2. IASR 38: 23-24, 2017

 

山梨県峡東保健所 藤井 充 斎藤由美子 佐野純子
山梨厚生病院小児科 池田久剛
池田医院 池田康子
国立感染症研究所
 感染症疫学センター 神谷 元
 細菌第二部 大塚菜緒

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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