国立感染症研究所

2010~2011年の手足口病流行の疫学的・ウイルス学的解析―大阪府

(IASR Vol. 33 p. 57-58: 2012年3月号)
2010年および2011年シーズンはそれぞれ手足口病の流行の規模が大きく、特徴的な流行パターンを示した。

そこで、大阪府において2010年および2011年シーズンに採取された手足口病疑い患者検体からのウイルス検出状況および疫学情報の集約、また、分離したウイルスの分子疫学的解析を実施したので報告する。

2010年1月~2011年12月の期間に、大阪府立公衆衛生研究所に搬入された手足口病疑い患者のウイルス検出状況および患者性別および年齢情報を表1に示す。2010年では主原因ウイルスがエンテロウイルス71型(EV71)であり、2011年ではコクサッキーウイルスA6型(CA6)であることがわかる。

次に、この2シーズンに多く検出されたEV71、CA6、コクサッキーウイルスA16型(CA16)の月別検出数を図1に示す。検出法はVP4-2領域のseminested RT-PCR(石古ら, 臨床とウイルス)、細胞培養(Vero細胞、RD-18S細胞)または哺乳マウス接種を実施し、いずれかの方法で陽性となった数を計上している。EV71は2010年7月に検出数がピークとなり、2010年12月以降、検出されなくなった。一方、CA6は2011年7月にピークとなり、2011年9月以降は検出されていない。また、CA6の検出数が減少し始めた2011年8月以降、入れ替わるようにCA16が検出され始め、2011年12月まで検出数が増加した。EV71、CA6の検出状況は全国とほぼ同様の傾向であったが、全国的には2011年8月にピークがあったCA16では異なる傾向を示した。

さらに、ウイルス分離ができたEV71; 10株、CA6; 13株、CA16; 7株についてRT-PCRでVP1領域を増幅し(Oberste MS et al ., J Virol)、ダイレクトシークエンス法で決定した塩基配列について系統樹解析(EV71;615bp、CA6、CA16;356bp)を実施した(図2図3)。

2010年に検出されたEV71は、同年に検出されている大阪市、広島県の株と同じクラスターで、すべてサブジェノグループC2に分類された。また、CA6はこの期間に検出されたすべての株が同じクラスターに分類された。

2010年1月~2011年12月、大阪府では手足口病疑い患者から検出された主なウイルスはダイナミックに入れ替わり、2011年夏期では、通常手足口病の主原因とはなりにくいCA6による大きな流行となった。このように、これまで手足口病の主原因と考えられてきたEV71やCA16と異なったエンテロウイルスが流行に関与した場合、患者数の増加や病態の変化がおこることが考えられるので、今後もウイルス型別を含めたサーベイランスが必要である。

大阪府立公衆衛生研究所
中田恵子 左近(田中)直美 山崎謙治 加瀬哲男

 

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