国立感染症研究所

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世界の麻疹対策における進捗状況、2000~2010年

(IASR Vol. 33 p. 73: 2012年3月号)

2010年の世界保健総会において、加盟国は最終的な麻疹の根絶に向け、2015年までの指標を以下のようにすることが承認された。

(1)定期の麻疹含有ワクチン1回(MCV1)接種率を国全体で90%以上、それぞれの地域で80%以上に向上させる。
(2)年間の麻疹罹患率を人口100万対5未満に減少させ、かつ維持する。
(3)麻疹による死亡を2000年と比較して95%以上減少させる。

予防接種活動:WHOとユニセフの推計によると、世界全体での1歳児におけるMCV1の接種率は、2000年の72%から2010年は85%へ増加した。アメリカ地域、欧州地域、西太平洋地域は90%以上であった。2010年、世界全体でおよそ1,910万人いると推計されるMCV1未接種の小児の主な国別内訳は、インド670万人、ナイジェリア170万人、コンゴ民主共和国80万人、ウガンダ60万人、パキスタン60万人である。

2010年までに麻疹含有ワクチン2回(MCV2)が定期接種として行われている加盟国は139カ国(72%)あり、そのうち2010年の接種率が報告されたのは102カ国(73%)で、90%以上の接種率だったのは67カ国(66%)であった。2000~2010年に、補足的ワクチン接種活動(SIAs)を通して10億人以上の小児がワクチン接種を受けた。

サーベイランス活動:2000~2010年に、世界の麻疹患者報告数は853,480人から339,845人へ60%減少し、罹患率では人口100万対146から50へ66%減少した。2008年には最大で277,968人まで減少したが、2009年に横ばいだった後、2010年は増加した。2009~2010年では、西太平洋地域、東地中海地域、東南アジア地域で減少したものの、アフリカ地域と欧州地域で増加した。罹患率が人口100万対5未満を達成した加盟国は、2000年64カ国(38%)から2008年122カ国(67%)と増加したが、2010年は115カ国(60%)と減少した。

2009~2010年に、多くの国で大規模なアウトブレイクが発生した(患者数の多い順に:マラウイ118,712人、ブルキナファソ54,118人、イラク30,328人、ブルガリア22,004人、南アフリカ共和国18,356人等)。主にMCV1接種率の低さが理由であるが、一部の国ではSIAsの遅れや不十分さも原因とされた。ワクチン接種率の高い地域で起きたアウトブレイクは、青壮年層においてワクチン未接種である感受性者が数年にわたり蓄積したためであることが、調査により判明した。

まとめ:2010年は、麻疹患者数の約90%がアフリカ地域、欧州地域、東南アジア地域からの報告であった。世界全体で40%の加盟国が、目標とする人口 100万対5未満の罹患率を達成していなかった。

近年みられた患者数の増加を反転させ、2015年の目標に向けてさらなる前進を図るため、鍵とされる課題は次の3つが挙げられる。

(1)麻疹コントロールに対する政策的および経済的関与が減少していること。
(2)定期接種またはSIAsを通じて、MCV2の接種率を一様に高められていないこと。
(3)地域におけるMCV1とMCV2接種率のモニタリングが不十分であること。

(WHO, WER, 87, No.5, 45-52, 2012)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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