国立感染症研究所

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麻疹に対する世界的な制御と地域の排除計画、2000~2012年

(IASR Vol. 35 p. 116: 2014年4月号)

2010年、世界保健総会は、世界規模の麻疹根絶に向け、2015年までに達成すべき3つの重要な目標を設定した。1)1回目の麻疹含有ワクチン(MCV)の定期接種率を上昇させ、1歳時の接種率を国レベルで90%以上、すべての市レベルで80%以上を達成する。2)国の麻疹の年間罹患率を持続的に減少させ、人口100万対5未満とする。3)世界の麻疹死亡を減少させ、2000年の推定死亡者数に対し95%減を達成する。WHOの南東アジア地域事務局が2020年までに麻疹を排除するという目標を採択したことを受け、WHOの全6地域で麻疹排除の目標が掲げられたことになった。そのうち、4地域では、世界ワクチン行動計画(GVAP)にて2015年が排除目標年となっている。本報告は、前回の2000~2011年報告の更新情報をレポートするものである。

2012年、定期接種率および補足的ワクチン接種(SIAs)にて1億4,500万人の小児にMCVが接種され、2000年比で、年間罹患率は人口100万対146から33へ77%減少、年間死亡者数は562,400人から122,000人へ78%減少となった。2012年は、これらの指標がかつてなかったレベルまで低下したことになる。仮にMCV接種が行われなかったと想定した場合に比較し、2000~2012年の間に、推定1,380万人の死亡が予防された。

南北アメリカ地域で麻疹排除状態が維持され、西太平洋地域で麻疹排除に近づきつつある一方、現在のトレンドや排除活動状況から、WHOの戦略的諮問専門家会議(SAGE)は、欧州地域、東地中海地域、アフリカ地域では2015年目標と地域排除目標は予定通りには達成できないだろうと結論した。2015年までの目標を達成し麻疹を排除するためには、各国およびパートナーが麻疹の排除を可視化することを推進し、保健システムの強化に多くの持続可能な追加的投資が必要となる。 

(WHO, WER 89:45-52, 2014)

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