IASR-logo
 

自校調理施設を有する中学校でのサポウイルス食中毒事例―島根県

(IASR Vol. 40 p90-91:2019年5月号)

2018年11月島根県松江市のA中学校において, サポウイルス(SaV)を原因とした集団食中毒が発生したので, その概要と解析結果について報告する。

2018年11月29日にA中学校にて胃腸炎により欠席する生徒が多くみられると松江保健所に連絡があり調査を行った。主な症状は腹痛, 発熱, 嘔気であった()。患者の発生状況は図1のとおりであり, 患者の発生は28~30日(ピークは29日)に集中しており, 単一曝露であることが強く疑われた。患者数は全数175名(生徒155名, 教職員20名)中, 56名(生徒52名, 教職員4名)であった。

病原体探索のため, 患者便8検体(うち教員2検体)が島根県保健環境科学研究所に搬入され, ノロウイルスの検査を行った結果, 8検体すべて陰性であった。同じ検体について, SaVリアルタイムPCR1)を実施したところ8検体すべてSaV陽性であった。自校調理の給食が食中毒の原因と考えられたため, 調理員7名についても同様の検査を実施したところ, うち2名の検体がSaV陽性であった。なお, 調理従事者に体調不良を訴える者はなかった。

次に遺伝子型別を行うために, SaV陽性であった検体10件について, F13/F14/R14およびF22-R2プライマーを用いるnested RT-PCR2)を実施し, カプシド領域を増幅した。増幅したSaV遺伝子についてダイレクトシークエンスを実施した結果, 7株が解析可能となり, これらの遺伝子配列は完全に一致し, GV.1に分類された (図2)。患者および調理員から検出されたSaVの遺伝子配列は完全に一致したが, 調理員が患者と同一の給食を喫食していたことから感染経路の特定はできなかった。

SaVによる集団食中毒の報告は近年増加している。本事例は報告数の少ないGV.1株によるものであった。本事例の発生と同時期には病原微生物検出情報において他県でもSaVの検出が増加していた。島根県内の感染症発生サーベイランスにおいてもSaVが検出されており, そのうちGV.1の検出も認められたことからSaVの流行状況について注視していく必要があると考えられた。

 

参考文献
  1. Oka T, et al., J Med Virol 91(3): 370-377, 2019
  2. Okada M, et al., Arch Virol 151: 2503-2509, 2006

 

島根県保健環境科学研究所
 辰己智香 三田哲朗 山田直子 藤澤直輝 熱田純子 柳 俊徳

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan